第二章で述べた通り、今後も世界的な低金利と低ボラティリティーの市場環境が続くと
予想される中で、仮想通貨は世界の機関投資家にとって依然として魅力ある投資対象です。
しかし、魅力がある事は投資リスクが高いことの裏返しでもあります。
仮想通貨投資にはどのようなリスクがあるのか。
それを考える参考とするため、まず、仮想通貨以外の金融商品の投資リスクについて
整理しておこうと思います。
行動経済学の研究で2017年のノーベル経済学賞受賞したシカゴ大学の
リチャード、セイラー教授は、ロイター通信のインタビューで金融商品の
ボラティリティーが低水準にとどまっている理由を聞かれ、「私には謎です。
世界的に大きな不確実性が存在する局面でボラティリティーが信じられないほど
低いのは、不思議に思います」と語りました。
この発言は、世界のエコノミストたちが金融市場の低いボラティリティーの
要因について、改めて考え直すきっかけとなりました。
IMF (国際通貨基金) 2017年10月に公表した「グローバル金融安定化報告」で、
金融市場でリスクプレミアムの低下と並行して強まっている低いボラティリティーに
焦点を当て、その要因を分析しています。
2017年に入ってからの米国のVIX(恐怖指数)をの下振れのうち、
「経済環境の改善=経済ファンダメンタルズ」「企業収益の改善=企業パフォーマンス」
「中央銀行の緩和、金融政策=資金調達、流動性環境」の三要素で説明できるのは、
半分程度にとどまるといいます。
さらにIMFが、低いボラティリティーは金融システムをより高い市場リスクにさらすと
指摘しています。
金融資産のボラティリティーが低下すると潜在的な損失の大きさを示すリスク量が
低下するため、投資家のリスク容認量は大きくなります。
つまり、リスク量の大きい金融資産をより多く保有する余力が生まれます。
それが借り入れの増加を伴う投資の増加を促し、結果、投資家を、
ひいては金融システムそのものを、より大きな価格変動リスクにさらしてしまう危険性があります。
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