しかし、中国の抱える海上交通路のジレンマは、交通量が多く、
しかも容易に封鎖され得るマラッカ海峡だけではなく、
世界一の原料消費国である中国は、石油の他にも、アフリカや南米など遠方の大陸から
アルミナ、セメント、土、木材、ニッケル、鉄鉱石など膨大な量の資源を輸入している。
中国がチリから輸入する年間何百万トンもの銅を例に考えてみよう。
中国は、世界の年間生産量のほぼ半分にあたる銅を消費している。
この重要な工業用金属を15,000海里(約28,000キロ)を66日間かけて航海する間に、
まず南米のホーン岬を回り、それからアフリカの喜望峰を通過してインド洋に入り、
最後にインドネシアの南岸を回らなければならない。
もちろん、輸出に大きく依存した経済を成長させるためには、
中国は年間2兆ドル以上の製品をヨーロッパやアメリカ等の大市場や、
ラテンアメリカ、アジア諸国など比較的小規模な市場へ輸出しなければならない
(中国のGDPの50%以上を貿易関連が占めている)。
こうした「メイドインチャイナ」製品の80%以上が海上輸送されている。
輸出品を積んだコンテナ船は、マラッカ海峡ジブラルタル海峡といった
チョークポイントを通過しなければならない。
貿易の途絶による深刻なダメージへの懸念から、「敵対的な外国に封鎖され、経済的、
政治的、軍事的な圧力をかけられるのでは」と言う根深い恐怖心が生まれる。
そうした海上封鎖を行う恐れがあるとして中国が懸念している外国とは、
世界規模の軍事能力を持つ国、つまりアメリカ合衆国ただ1つである。
次章で、中国のこの深い根深い恐怖心が正当なものなのか、
あるいは独裁国家が被害妄想に過ぎないのかを検証する。
これはわれわれ推理作業にとって重大な問題である。
なぜなら、「中国に対して封鎖戦略を取る意思とその能力を持った国が存在する」と
中国共産党指導部が本当に信じているとすれば、彼らがそのような封鎖を、
ひいてはアメリカ海軍そのものを打ち破るだけの軍事力を構築しようとするのも、
(少なくとも彼の側から見れば)至極もっともだと言うことになるからである。
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