現在、遼寧はベトナムにとっては恐怖の源でもある。
ヘリテージ財団のディーン・チェンはこう述べている。
南シナ海を見て、それから各国の空軍基地と飛行場がどこにあるかを見るれば
すぐにわかることだが、南シナ海はその大部分が陸地から非常に遠い。
だから、たとえ小さくても空母を一隻そこに配置すれば、
いわゆる防空6カプセルのようなものができることになる。
砂漠の盾作戦、砂漠の嵐作戦、ユーゴスラビア紛争、アフガニスタン戦争と、
過去20年間の戦争から中国は、現代戦に勝利するには制空権を握ることが
必要不可欠だということを学んだ。
制空権があっても勝てるとは限らないがい、なければ確実に負ける。
だから、空母を配備できる能力は、たとえそれによってほんの2、3機の航空機を
飛ばすことしかできないとしても、近隣諸国がそこに航空機を
持続的に飛ばしておくことができない場合には大きな利点になる。
より一般的な遼寧の戦略的価値について言えば、確かに遼寧はアメリカ空母のような
高度な航空電子機器や航空管制ソフトウェアはない。
それに、遼寧はアメリカの空母に比べてフットボール場1つ分ほど短いため、
フル装備した航空機は遼寧の甲板から離陸することはできない。
とは言え、覇権を確立するするために中国は息の長い戦いを続けようとしている。
だから、遼寧は訓練艦として、「2050年まで海軍力を世界に投射する」と言う
劉華清提督のビジョンにかなり良く合っている。
少なくとも、中国の造船所がフル稼働している現状から考えれば、
中国が何隻もの空母を出動させる日は近いものと思われる。
空母だけでなく、あらゆる外的脅威から空母を守る巡洋艦や駆逐艦といった、
空母戦闘群に不可欠な「護衛艦」も出動させることになるだろう。
「護衛艦」の概念と役割を理解するため、典型的なアメリカ空母戦闘群について
考えてみよう。
空母戦闘群には、中心となる空母のほか、対潜水艦戦にも耐水上艦戦にも
対空戦にも対応できる多目的タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦が含まれている。
この様々な目的を補助するため、空母戦闘群には、巡洋艦よりも少し小さい
アーレイ・バーク級駆逐艦に二隻及びイージス戦闘システム
(常時、何百もの空中目標を同時追跡するように設計された海軍の統合兵器システム)も
含まれている。
さて、海軍力の世界的投射を中国が意図していないとすれば、空母戦闘群の構成する
非常に高価な主力艦を有する必要は無いはずである。
現在、中国沿海部の至る所でこうした主力艦が恐るべきペースで建造されていることを
考えれば、中国にはその意図が大いにあると言わざるを得ない。
もちろん、中国が空母戦闘群を出動させることができるようになれば、
米中間に紛争が起きる可能性はおそらく飛躍的に増大するだろう。
中国がその向上した海軍力を背景にして(すでに現在、東シナ海や南シナ海で
着々と行っているように)海軍力で劣る近隣諸国に自分の意思を押し付けようとすれば、
その可能性は特に高まるだろう。
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