それでは、三戦、つまり3つの戦い方とは一体何だろうか。
1つ目は「心理戦」であり、その目的は、相手国とその一般国民を脅したり
混乱させたり、あるいはその他の方法でショックを与え、
反撃の意思をくじくことである。
ハルパーは中国の心理戦の方法について、「外交圧力、風評、嘘、嫌がらせを使って
不快感を表明し、覇権を主張し、威嚇する」と述べている。
さらに、「中国は経済を効果的に利用する」とも述べている。
例えば、中国は、日本のレアアースの輸出を規制したり、日本への観光旅行禁止したり
することによって、景気低迷に苦しむ日本を威圧し、尖閣諸島に対する領土要求を
認めさせようとしている。
同様に、スカーボロ礁やセカンド・トーマス礁といった紛争地域を取り込むように
大量の民間船を送り込んでいるのは、威圧的な数を頼んでフィリピンを恫喝し、
フィリピン軍に退却を余儀なくさせるためである。
このようなやり方が「キャベツ戦略」と呼ばれる。
三戦の2つ目は「メディア戦」である。
その目的は、国内外の世論を誘導し、騙されやすいメディア視聴者に
中国側のストーリーを形成させることである。
「現代の戦争を制するのは最高の兵器ではなく、最高のストーリーなのだ」と
述べているのは、中国のメディア戦はまさにこの格言に従っている。
ヘリテージ財団のディーン・チェンはこのようなメディア戦を、
「感じ方と考え方に長期的影響与えることも目的とした、持続的に進行する活動」と表している。
ハルパーが述べているように、その目的は「味方の士気を維持し、
国内外の世論の支持をとりつけ、敵の戦意をくじき、敵の況判断を変更させること」
である。
中国は書籍、映画、雑誌、インターネットなど様々な媒体を通じてメディア戦を行っている。
中でもテレビに力を入れ、大金を投じて中国中央電子台(CC TV)国際的宣伝部隊に作り替えた。
中国の政治と軍事の指導者たちが三戦を初めて正式に承認した2003年、CCTVは、
国際世論の支持をBBCやCNNと直接張り合う、24時間インチキニュースチャンネルの
放送を開始した。
2011年、中国はメディア戦への出資金を大幅にアップしCC TVはワシントンDCに
立派なスタジオを開設した。
このスタジオには、「白い顔」や「黒い顔」のアメリカ人アンカーやリポーターが
うようよしている。
こうした偽CNNニュースを流す利点は、本物のニュースにプロパガンダを混ぜ込み、
4000万人以上ものアメリカ人視聴者や世界中の何千万人、何億人と言う視聴者に
送り届けられることである。
南沙諸島やセカンド・トーマス礁を巡ってさらに問題が起きれば、
CC TVがすぐに現れ、たいていは西側メディアがそのニュースを知る前に
中国側のストーリーを広める。
同様に、尖閣諸島めぐって緊張が高まれば、CC TVはどんな衝突やエスカレーションも
「日本の右翼」のせいにして激しく非難する。
「三戦」の最後は「法律戦」である。
法律戦における中国の戦略は、現行の法的枠組みの中で国際秩序のルールを
中国の都合の良いように曲げる。
あるいは書き換えることである。
例えば、「国際海洋法条約に明示されているように、中国は200海里の
排他的経済水域内の航行の自由を制限することができる」と言う中国側の主張に
ついて考えてみよう。
実は、現行の海洋法条約にそんなこと一言も書かれていない。
この点について、条約はかなり明確に規定している。
だが中国は根拠ある」と言う嘘を繰り返し主張してきた。
まさに、「嘘も繰り返せば真実になる」の精神である。
攻撃的「法律戦」には、インチキ地図を使って領有権を正当化すると言う方法もある。
あるコメンテーターは、この戦術に「地図戦」と言うあだ名をつけた。
例えば、2012年、中国は南シナ海の紛争地域の多くを中国固有の領土として
書いてある地図をパスポートの内側に掲載し、近隣アジア諸国の怒りを買った。
中国は地図をこのように巧みに使い、領有権の主張を強化しようとしたのである。
そして、三戦は続行される。
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