大局的見地からこの三戦と言う問題を見てみよう。
ステファン・ハルパーやディーン・チェンなど専門家の意見が正しいとすれば、
中国が現在行っている法律戦、メディア戦、心理戦は、「領土拡大・現状変更」を
目標とする中国の新たな攻撃形態である。
この観点から見ると、現代における三戦の利点は、以前ならキネティックな
手段によってしか実現できなかった目標を達成するための、
新しい手段を提供していると言う点である。
さらに、三戦は互いに結びついて非常に高い相乗効果を生み出す。
例えば、中国が東シナ海・南シナ海で近隣諸国との間に多くの領土問題を抱えているが、
その多くの事例において、中国はまず、曖昧な歴史に基づいて不当に領有権を主張する。
これが法律戦である。
次に、問題の海域に民間船を大量に送り込んだり経済的にボイコットするなど、
あらゆる形態のノンキネティックな戦略を展開する。
これが心理戦である。
そして最後に、「中国は、屈辱の100年間に列強の帝国主義踏みにじられた。
平和を愛する中国は、歴史的な不正行為を正そうとしているだけなのだ」と言う
ストーリーを広め、
国際世論をコントロールすることによって、メディア戦を制しようとする。
このレンズを通すと、三戦の実績がありありと見えてくる。
中国の競合国はまだそれと気づいていないが、これは新しいタイプの戦争なのである。
以前なら軍事力の行使によってしか達成できなかった、領土拡大・現状変更と言う
目標の達成を、三戦は明らかに目指している。
中国の行動をこのように解釈することが本当に正しいとすれば、
我々が取り組んでいる「米中戦争が起きるか」と言う問題にある意味
はっきりとした答えが出たことになる。
つまり、中国はアメリカとその同盟国相手に、ノンキネティックな
新しい戦場で既に戦っている。
中国のサイバー選手たちが宣戦布告なしの戦争をサイバー空間で遂行しているのと
全く同じように。
この現実を考えれば、ペンタゴンやアジア各国の防衛省はその任務範囲を拡大し、
三戦に直接対抗する戦略を取るべきだろうが今からでは遅すぎるかもしれない。
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