1952年に日米が防衛条約を初めて結んだ時、これは双方にとって好都合な条約だと
思われた。
アメリカ側から見ればこれによって、アジアにおける自国の利益を守るための基地を
日本領内に維持できることになり、日本が国土防衛だけを目的とした
小規模な軍隊を持つと約束したことで、アメリカ国民は真珠湾攻撃の再来を
心配する必要がなくなった。
日本側から見ても、これは悪くない取引だった。
防衛費はアメリカの納税者に事実上肩代わりさせた結果、日本はその経済的資源を
平和的発展と貿易に振り向けることができた。
60年以上の間、日米安全保障条約が現代史上最長の防衛条約として存続してきたが
日本もアメリカも、この条約は日本の領土への攻撃と言う理由で
実行される日が来るとは考えてもみなかった。
外交問題評議会回上級フェローのシーラ・スミスは次のように述べている。
締結当初、日米同盟は第一に、当該地域へのアメリカ軍の前方展開を可能にして
冷戦に対処するための条約だった。
日本領内で紛争が起きる事は想定されていなかった。
アジア地域の紛争として想定されていたのは、朝鮮半島問題や台湾海峡の
偶発事件だった。
だが現在、日米両方とも、(理論的にはその可能性は低いとは思われるものの)
日中の直接的軍事衝突や、中国が戦争時に核攻撃や、核攻撃の威嚇に出る可能性について
懸念せざるをえなくなった。
このような核攻撃シナリオを考えているうちに、日本は当然のことながら
アメリカの真意を疑わざるをえなくなる。
中国の核能力はロサンゼルスやニューヨークへの報復攻撃も可能な水準に
達している現在、アメリカは日本防衛のために本当に自国の核兵器を提供するだろうか、と。
簡単に言えば、これが日本の抱える「アメリカは、ロサンゼルスと引き換えに
東京を救う用意があるだろうか」と言うジレンマである。
実のところ、主要都市を核攻撃の危険にさらしてくれと同盟国に頼むのは
確かに大きなお願いである。
東京もワシントンも、日米安保条約の根底にあるこの隠れた条文を
意識せざるをえなくなってきている。
ハザードいわゆるモラルハザードと言う付随的問題も生じるだけに、
ワシントンにとってはこれはいっそう悩ましい問題である。
つまり、日本を確実に守ると言うアメリカの約束によって、
それがない場合に比べて日本の行動はより大胆に(おそらくは、より無謀に)
なるかもしれない、とワシントンとしては懸念せざるをえないのだ。
もちろん、ここに問題の核心がある。
「アメリカが約束通り核の傘を提供するかどうか疑わしい」と判断すべいなや
日本は「ぶれない同盟国」シナリオに変わる少なくとも2つの選択肢を
検討するに違いないからである。
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