中国の社会不安を煽っている問題は、農民や労働者の経済的欲求のほかにもたくさんある。
中国では毎日500件以上もの抗議行動や暴動やデモが起きている。
こうした騒動を引き起こしている問題は、深刻な大気汚染や水質汚濁、
農民の強制移住、有害食品スキャンダル、時限爆弾的な人口問題など多岐にわたっている。
例えば大気汚染問題について言えば、世界で最も大気汚染が深刻な20都市のうち16が中国にある。
また、河川も湖も水も海もありとあらゆる有害物質に溢れ、
「13億の人口ののうち9億8000万人が何らかの物質で汚染された水を飲んで生活している」。
時限爆弾的な人口問題について言えば、中国は経済成長を上回る速度で
高齢化しているとこれまで何度も指摘されてきた。
中国の年齢中央値は、1980年には、若い発展途上国の古典的定義とされる22歳だった。
ところが2050年までには、年齢中央値は悪評高い「一人っ子政策」のおかげで
その2倍以上になると言う(この政策は、最近になって緩和された)。
人口問題の時限爆弾が生み出している社会的混乱について言えば、若い現役世代は、
高齢者の健康保険や年金を負担したくない、あるいは負担しきれないと考えている。
ヨーロッパや日本やアメリカも同様の問題に直面しているが、
中国の問題の方がはるかに社会不安に直結しやすい性格をはらんでいる。
国内問題が激化している原因として、反体制派の数自体が、収容人数が多いことで
知られる中国の刑務所がお手上げになりそうなほど増加していることも挙げられる。
反体制派に含まれるのは、民主化を求める政治的グループ、信仰の自由を求める
宗教的グループ、一人っ子政策に強く反発する妊娠中絶反対派、人権活動家などである。
これらに加えて、中国政府からありとあらゆる虐待を受け、
文化的ジェノサイドの犠牲になっているチベット人やウイグル族の民族問題もある。
中国政府は、中国の御用メディアが「またしても中国に屈辱を与えようとしている
大悪党」に仕立て上げてきた多くの国々のどこかとの陽動作戦をでっち上げ、
こうした問題から国民の目をそらさせようとするかもしれない。
だが、ナショナリズムの高まりには次のような問題がある。
一旦国民のナショナリズムに火をつけてしまうと、領海や国境線といった問題で
仮想敵国と妥協することがそれだけ困難になるのである。
少しでも妥協すれば、外交として今度は国民からの非難にさらされることになる。
だから戦争でっち上げる作戦が本物の戦争につながる危険は決して小さくは無い。
アメリカを含めた関係諸国のほうもそれぞれの国内事情を抱えていることを考えれば、
陽動戦争を始めるのが必ずしも中国とは限らない位である。
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