エアシーバトル戦略の合理的なコンセプトとは、「空軍と海軍と空軍とが、
これまでよりもずっと緊密に強調し、一体化する」と言うことである。
「何を今更」と思う読者がいても不思議はないが、陸軍・海軍・空軍・海兵隊の間の
伝統的な勢力争いは、少なくとも第二次大戦以来アメリカ軍の風土病であり、
それがこのような一体化を常に妨げていたことをわかってもらいたい。
協調と一体化の具体例について、クレピネヴィッチは次のように述べている。
空軍は対宇宙兵器作戦を行って、人工衛星を利用した中国の海洋監視システムを
無力化し、空母などの海軍の高価値艦艇がターゲットにされないようにする。
その返礼として、海軍イージス艦を使って、日本のアメリカ海軍基地を
中国のミサイル攻撃から守る手助けをする。
エアシーバトル戦略の、論理的であると同時に物議をかもしそうなコンセプトとは、
「中国本土からアメリカの軍艦や基地へのいかなる非核攻撃に対しても、
通常兵器でダイレクトに反映する」と言うことである。
具体的に言えば、エアシーバトルは、「中国が第一撃を発射し次第、
1連の反撃を開始する」ことを求めているのである。
エアシーバトル反対派の急先鋒アミタイ・エツォーニ教授はエアシーバトルの論理は
致命的大惨事を招くとして次のように述べている。
最初の「目潰し作戦」で、アメリカは中国の偵察・指揮統制ネットワークを攻撃し、
中国の目標捕捉能力を叩く。
次に、アメリカは戦闘を中国本土に持ち込み、長距離対艦ミサイル発射装置を攻撃する。
そこに対艦ミサイルが配備されていることを考えれば、
アメリカが地上ミサイル発射装置をターゲットとする事は当然である。
そして、そうするためには当然のことながら防空システムや指揮統制センターや
その他の接近阻止兵器を破壊する必要がある。
要するに、エアシーバトルは中国との全面戦争を必要とするのである。
中国本土への精密攻撃がエアシーバトルに直接含まれるのかどうかについて
混乱が生じないよう、クレピネヴィッチはペンタゴンの報告書に想定される
目標の多くを掲載した地図を添付している。
想定目標は、北京宇宙指揮管制センター、新疆ウィグル自治区の
大型フェーズドアレイ・レーダーと対衛星兵器施設、合肥と綿陽の対衛星兵器施設、
海南島、酒泉、太原、西安、西昌にある衛星発射・監視施設も全て、
など中国全土にわたって分布している。これは「旧約聖書の」流の戦略、
つまり「目には目を、攻撃には反撃を」である。
そして、少なくとも純粋に軍事的な観点から言えば、中国本土に対するこのような反撃は
非常に理にかなっている。
こうした反撃がなければ、中国は攻撃される心配の聖域からアメリカの
軍艦や基地めがけてやすやすとミサイルを打ち込んでくるだろう。
少なくともエアシーバトル派にとっては、このような聖域の存在は、
「アメリカがアジアで自国の利益を守る事は事実上不可能だ」と言うことを意味する。
この厄介な問題についてプリンストン大学のアーロン・フリードマン教授は
こう述べている。
アメリカには、こちらから中国に攻撃を仕掛けて戦争始めるつもりはない。
だが、中国がアメリカ軍やアメリカ軍基地やアメリカが守る義務がある同盟国に
攻撃を仕掛けて戦争開始するなら、安全に攻撃を続けられる聖域は彼らに
与えてやるわけにいかないし、そんな聖域があると彼らに思わせるわけにもいかない。
そんな聖域を設けてやれば中国が攻撃を仕掛けてくる可能性を増大させることにもなり、
アメリカがそのための「フリーパス」を提供しているんだから、
とフリードバーグは言う。
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