さて、ここからがグレーダーの考える大取引の最重要の前提である。
台湾が中国にとってそれほど最重要事項(中国の外交上の決まり文句では「革新的利益」)
であるなら、中国は取引に応じるはずだ。
東シナ海で日本との間に、南シナ海でフィリピン及びベトナムとの間に
中国が考えている領土問題は革新的利益と言うほどのものでは無いから、
中国はそのために戦争しようとはしないだろう。
こうした前提を踏まえれば、「中国は、台湾と言う究極の戦利品と引き換えに、
東シナ海及び南シナ海におけるその他の領土要求を進んで放棄するはずだ」と
言うことになる。
さらに、アメリカ海軍はこれまで地域を安定化させる役割を果たし、
それによって貿易と経済成長を促進してきたのだから、ただでたとえそれだけの理由にせよ、
中国はアメリカ軍がアジアに永続的に駐留することを進んで認めるはずだ。
アメリカとしても、恒久平和の為なら喜んで台湾を犠牲にするだろう、
とグレーザーは推論する。
グレーザーは、大取引が将来実際に行われた場合、米中双方の指導者は大きな、
そしておそらくは手痛い代償を支払うことになるだろうと認めている。
中国政府側の敗北ではないことを国民に納得させなければならなくなるだろう。
中国政府自身が民族主義をこれまで煽ってきただけに、このような取引は
「屈辱」の再来と受け取られかねない。
アメリカ大統領と議会は、台湾に対する「道義的」責任を放棄せざるをえなくなるだろう。
このような冷血で計算高い大取引は、他の(アジア諸国だけではなく、
ヨーロッパ諸国との同盟も含めた」)防衛同盟に深刻なダメージを及ぼすだろう。
台湾を見捨てることによって、アメリカはこうしたダメージにも直面しなければならない。
しかし結局グレーダーは次のように大取引を肯定する。
大取引を成立させることができれば、それは不幸な取引であるが
非常に有益な取引になると思う。
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