アメリカが台湾を放棄したりすれば他の同盟国がどう思うか、と言う
非常に現実的な問題もある。
この点について、ヘリテージ財団のディーン・チェンはこう述べている。
40年間守ってきた約束を破棄しようなどとはアメリカが考えれば、
(アジアだけでなく世界中の)アメリカの同盟国はアメリカの誠意に対して
深い疑念を抱くだろう。
そうなれば、アジアにおけるアメリカの地位だけでなくヨーロッパにおける地位にまで
悪影響が及ぶことになる。
ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロンは、同盟の不安定化と言う問題を
さらに掘り下げ、次のように述べている。
アメリカは、主に道義的理由から台湾に対して義務を負っているため、
居心地の悪い立場に置かれている。
「道義的義務のために、このような状況でアメリカ人の命を危険にさらす覚悟が
本当にできているのか」と言う問題に直面しているのだ。
だが、アメリカに台湾を見捨てる覚悟ができたとしても、世界中の国々や台湾以外の
アジアの同盟諸国はどうするだろう。
彼らはどんな結論に立つだろう。
どれだけの国々が核兵器を保有しようとするだろうか。
台湾自身、核兵器製造と言う誘惑に駆られるだろう。
台湾が核兵器を保有しようとすれば戦争になる、と中国は最初から言明しているのだが。
だから、台湾を見捨てることによって危険を避けようとすれば、
危険をかえって増大することになるのだ。
ジョン・ミアシャイマー教授は、大取引がありえない理由を、
中国のナショナリズムの高まりと中国政府の自信の両面から次のように説明している。
中国は、アメリカやその同盟国に譲歩しようとはしないだろう。
台湾と引き替えに尖閣諸島に対する領土要求を放棄したりはしないだろう。
南シナ海の問題でも譲歩しようとはしないだろう。
それには2つの理由がある。
1つは、昔ながらのナショナリズムだ。
そこは自分たちの土地だと信じているから、妥協するつもりはないのだ。
さらに、彼らは時間が自分たちに味方すると信じている。
ゆくゆくは、どんなことでも自分の思い通りに解決できるほど強大な国になる。
と信じているのだ。
最も哲学的な批判は、おそらく長年ペンタゴンで顧問を務めたマイケル・ピルズベリーの
それだろう。
彼は、中国との大取引と言う考えは「非常にアメリカ的なアプローチ」だと言う。
これは、一般的な言い回しを使えば、「ではこうしましょう、取引しませんか」と
言うことだ。
このアプローチは、過去何度も困難な問題に対して試みられ、
不幸にも戦争と言う結果に終わってきた。
第一次大戦及び第二次大戦の発端は、これと非常によく似ている。
「協力しあいませんか」と提案した善意の人々がいた。
その提案は相手方に誤解され、悲劇的な結果に終わった。
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