しかし、こうした様々なハードパワー・ソフトパワーの各要素がどのように
相乗効果をもたらすのか、これら全てがどのように総合国力に寄与するのかを考える際、
常に念頭に置いておかなければならないことがある。
それは、一要素に過ぎないかもしれないが、狼やドラゴンが戸口まで迫ってきたときには、
軍事力は常に最も重要な要素だ、と言うことである。
この心理を数学的に表現すると総合国力を構成する軍事力以外の要素が
全ての人の国力を作り上げるための必要条件であるのに対して、
その十分条件はどうなるとそれは結局のところ軍事力だ、と言うことになる。
クラウゼヴィッツ流の用語を使って簡単に言えば、強い経済、優れた教育制度、
安定した政治体制、豊富な天然資源、優秀な労働力を持っていても
軍事力を持たない国は、悪意を持った軍隊国に対して完全に無防備だし、
したがってたやすくその餌食になる、と言うことである。
これは、紀元前にローマがギリシャに対して、その数百年後にゲルマン人が
ローマに対して、力ずくで教えた真実だった。
これは、中央アジアの草原から襲来したモンゴル軍を迎え撃った宋が、
大きな代償を払って学んだ教訓でもあった。
したがって、「米中戦争が起きるか」と言う問題に対する最終解とは、
アメリカとのアジア同盟諸国がとるべき様々な方策を検討し、
総合国力と言う強力な抑止力を基礎とする力の連合によって平和を構築できるかどうかを
見極めた上でなければ出すことができない。
この第6部では、アメリカン・エンタープライズ研究所のダン・ブルーメンタールと
新アメリカ安全保障センターのパトリック・クローニンの次のような意見を
参考にしながらこの問題を考えることにする。
ブルーメンタールは言う。
思うに、これまでアメリカが戦争に巻き込まれたのは、他国に着決断力と意思を
疑問視された時だった。
この図式は、アメリカが行った多くの戦争に当てはまると思う。
だから、戦争を回避する最良の方法は、非常に強力な軍隊を持ち、
非常に強力な同盟関係を構築することによって、潜在敵国に、「論争の原因が
何であれ、アメリカは本気だ。 最後の手段として実際に武力を用いるだろう」と
信じさせることだと思う。
クローニンはこう述べている。
アメリカにはルールを守らせる能力がない、とアジア諸国は感じている。
これが現代の世界なのだ。
それは、明確でない世界だ。
そして、誰がルールを決めるのか分からなくなった時、何が起きるだろう。
誰もが勝手にルールを作るだろう。
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