ここで再び、(12)の地図を見てください。
ここに示された中国の防衛戦略「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)は、
実は中国ではなく、アメリカが名付けたものです。
2009年、国防相が議会に提出した年次報告書「中国の軍事力・ 2009」において
提唱された名称です。
以後、この言葉は世界中で広く使われてきましたが、
2016年10月20米海軍作戦本部は「定義が曖昧なため実際の作戦で
問題が生じる恐れがある」として、この言い方を使わないように呼びかけました。
しかし、ここでは、いくら曖昧といっても中国の防衛構想がよくわかるので、
以下、この言葉に沿って説明します。
まず、「領域拒否) (AD)です。
これは、第一列島線内には、いかなる国の軍隊も入れさせないと言うことです。
もちろん米軍が主な標的です。
さらに具体的に言うと第一列島線内に米軍が部隊を送り込んでくる事態を防ぐため、
努めて遠方で米軍の部隊を撃破してしまうと言うものです。
例えば、台湾有事が起これば、沖縄の嘉手納基地に配備された米軍の戦闘機が出動します。
これを防止するには、主として地上基地を基盤とする兵力を対象とした
攻撃を行うことになりますそのため、ここで使われるのは対地・対艦用弾道ミサイル、
攻撃、水上戦闘機、潜水艦、機雷などです。
続いて「接近阻止」(A2)です。
これは、第二列島線以内の海域において、米軍が自由に作戦を、展開することを
阻止すると言うものです。
したがって、攻撃対象は主として海軍力を基盤とする勢力となります。
具体的に言えば、遠方から接近する米海軍の空母打撃群を撃破することを
意図したものです。
そのため、索敵のために偵察衛星やOTHレーダーが配備されています。
こうして発見したときは、「空母キラー」と呼ばれるDF-20・ DF-26などの
対艦弾道ミサイルを始め、「HK-6」爆撃機などの対艦ミサイル、
「63M」潜水艦などの水中発射対艦ミサイルなどで攻撃します。
すでに中国も空母を持ったのでこれを出動させることになるでしょう。
この「A2/AD」戦略は、中国から見ればアメリカに対する防衛戦略と言いますが、
周辺国、すなわち、日本、台湾、フィリピンなどから見たらどうでしょうか?
はっきり言ってこれらの国を無視したと言うより、攻撃すると言っているのに
等しいものです。
特に、台湾にとっては、実行されれば国土が戦場となってしまいます。
すでに中国は、世界はアメリカと2分割する「米中太平洋分割管理構想」を掲げています。
今のところその実態はありませんが、中国は本気です。
太平洋分割管理構想は、2007年5月、ティモシー・キーティング米太平洋軍司令官が
初めて訪中した際、中国海軍高官から持ちかけられたと言います。
「最初は冗談かと思っていたが、本気だったので驚いた」と、その後、
キーティング司令官が議会で証言しています。
そして、2013年6月、米中首脳会談で習近平主席がオバマ大統領に正式に提案しています。
太平洋分割管理構想が意味するところは、太平洋のど真ん中にある日付変更線あたりに
線を引き、そこから西を中国の勢力圏、東をアメリカの勢力圏とするものにすると
言うことです。
となると、ハワイの西に中国の「第3列島線」が引かれると言うことになります。
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