すでに述べましたが、2016年7月、南シナ海仲裁裁判所は、
フィリピンによる南シナ海での中国の行動に対する提訴の裁定を下しました。
この裁定は、一言で言うと中国はこれまで主張してきたことをことごとく否定したものです。
大まかにまとめると、次のようになります。
(1)南シナ海の海洋資源に対する中国の「歴史的権利」の主張は、
国連海洋法条約の規定の限度を超える部分については無効である。
(2)中国は南シナ海や海洋資源を歴史的に排他的に管轄してきた証拠はなく、
「9段線」内の海域における「歴史的権利」の主張はいかなる法的根拠もない。
(3)南沙諸島には「島」は無い。
(21)に見るように、中国が人口島に作り替えた7カ所のうち5カ所は「岩」であるから、
12海里の領海のみ有する。
残るスービ礁とミスチーフ礁は「低潮高地」だから、領有の対象にはならない。
また、中沙諸島で中国が支配するスカボロー礁も「岩」であり、12海里了解のみ有する。
この裁定は、明らかに中国にとって大きなダメージでした。
はっきり言って「全面敗訴」に近いからです。
何しろ、中国が南シナ海内海化の最大のよりどころとする9段戦そのものが
否定されたのです。
さらに、5箇所の人工島の原初形状が岩ですから、その周りのたった12海里でしか
領海が得られなかったのです。
もちろん、中国は、この裁定を認めませんでした。
何の罰則もないのですから、認めて従うわけがありません。
外務次官は、「仲裁裁判所の判決は中国の南シナ海での主権に影響しない」と述べ、
さらに「我々の安全が脅かされれば、われわれは当然、(防空識別圏を)
設定する権利がある」とまで言い出したのです。
結局、南シナ海仲裁裁判所の裁定は、中国に対して逆効果にしかなりませんでした。
なぜなら、その後、中国は南シナ海の力による支配をより一層強めているからです。
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