21世紀の戦争においても、やはり最大の問題は「核戦略」です。
核兵器をどうするかが、安全保障と軍事戦略の根幹になります。
2009年4月、オバマ前大統領が、チェコの首都プラハで、
ノーベル平和賞受賞の決め手となった、有名な「核廃絶演説」を行いました。
「核兵器のない世界」を訴えたのです。
ウィリアム・ペリー元国務長官、、ジョージシュルツ元国務長官、などが
共同執筆した論文「核なき世界」が下敷きになっています。
この論文は「各報復の脅しによる抑止戦略はもはや時代遅れ効率的になっているので、
核兵器のない世界を目指すべきである」と提言していました。
「核兵器のない世界」といっても、核をすぐにでも廃棄するというのではありません。
どうやら、日本ではこの辺のところが誤解されているようです。
その真意は「核兵器のない世界」は目指すべき目標として具体的措置をとりながら、
それまでの間、「核兵器のある世界」の確実な抑止力を維持していこうと言うことです。
オバマ前大統領「(「核兵器のない世界」は)私の生きてる間は実現されないだろう」と
述べたことに混迷する世界の現実が反映されているのです。
オバマ前大統領の「核兵器のない世界」政策は、2010年2月発表の「Q DR」や
「弾道ミサイル防衛の見直し」(BMDR)、同年4月発表の「各体制の見直し」(NPR)に
反映されました。
このうち特に「NTR」では、
①各拡散・各テロの防止、
②アメリカにおける核兵器の役割の提言
③核戦力レベルの低減と戦略的抑止・安定の維持 (配備核弾頭と運搬手段の削減、
IC BM・SLBM・長距離爆撃機と言う「核の三本柱」の規模縮小、
ICBNの単弾頭化、核搭載海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」の退役等)、
④地域的抑止の強化と同盟国・パートナー国に対する安心供与、
⑤安全・確実で効果的な核兵器の維持という五つの柱が挙げられました。
しかし、これらはいずれも進展しませんでした。
実際のところオバマ政権下で削減された核兵器の数は、冷戦後の歴代政権のなかで
最も少なかったのです。
ブッシュ政権下では約5300発の核兵器が削減されたのに対し、
オバマ政権下削減された核兵器は700発にすぎませんでした。
「核兵器のない世界」と言うのはいつのま一視の欺瞞なのです。
アメリカが一方的に核を削減したら、自国の安全保障や同盟国等に対する
「拡大抑止」(核の傘)ほころびが生じ、同時に超大国の地位を失うのは自明だからです。
トランプ大統領は現実的で、大統領就任前のTwitterで、
「世界の核に関する良識が戻るまで、アメリカは各能力を大いに強化・拡大する必要が
ある」と訴えました。
さらに、就任後には2017年2月のロイターとのインタビューで
「アメリカは核能力で他国に遅れを取り始めた」として“世界最強の核兵器大国“になると
宣言しました。
記者から「それでは核軍拡競争になるのではないか」と問われると、
「核軍拡競争でも良いではないか。
アメリカはその競争の全てで他の諸国を圧倒する」と答えたのです。
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