日本は今、アメリカと中国の狭間で揺れ動いています。
特に頭を悩ませているのが、中国の「非合理の合理性」と言うやり方です。
「非合理の合理性」とは、故意に、相手に「何をするかわからない」と
思わせることによって、恐れさせ、躊躇させることを言いますが、
北朝鮮にも同じような傾向があります。
こうした価値観や対外政策の違いは、アメリカが中国を警戒する理由の
1つにもなっています。
仮に通常戦力で中国本土を攻撃すればでも、向こうの理屈で核ミサイルが
飛んでくるかもしれない。
そして核戦争へとエスカレートすればアメリカ本土にも甚大な被害が生じる可能性がある。
そうした考えもあり、アメリカは対中戦略においてそれほど積極的な動きを
見せなかったのです。
一方、中国は平時から戦争に至る以前の勝利を追求しており、
中でも有名なのが輿論線・心理戦・法律戦からなる「三戦」と言われるものです。
世論先では有利な情報を積極的に発信し、逆に不利な情報は抑えます。
いわゆる情報管理で、例えば尖閣諸島における問題では、中国が魚釣島沖を航行する
巡視船の写真と記事を英文記事で全世界に発信し、
あたかも中国は尖閣諸島の持ち主であるかのように主張しています。
心理戦は威圧することで相手を躊躇させ、相手の行動力を低下させる戦略です。
南シナ海問題では、フィリピンの実行支配下だったスカーボロ礁に進出し
軍事力をちらつかせてフィリピンの海軍を撤退させました。
その後、南シナ海仲裁裁判の結果、フィリピンのものと裁定されました。
が、中国は依然として居座ったままです。
そして法律戦は、国際法や国内法によって中国に対する国際世論の反発に対処する戦略です。
2010年に施行した海島保護法は、その代表例といえます。
この法律には、中国の島嶼部や周辺海域の生態系を保護し、自然資源を開発・利用して
中国の海洋権益を守ることが定められています中国はこの法律を利用して、
南シナ海の南沙諸島に港湾や滑走路を整備するなどの「開発・利用」を行ったわけです。
海島保護法の範囲は尖閣諸島にも及んでいると考えられているので、
同じやり方で中国が尖閣諸島を武力で奪取する可能性が大いにあり得るのです。
中国はすでに「三戦」に加えて歴史戦や地図戦を日本や周辺諸国に仕掛けていますが、
さらにサイバー戦や電子戦で“攻撃“し、有事の前に決着を付けてしまう可能性すらあります。
それから戦争と言えば、ノルマンディー上陸作戦のような大規模かつ組織的な戦いを
思い浮かべがちですが、もはやそういった作戦は時代遅れです。
ミサイルによる遠距離飽和攻撃、海上民兵による短期・高烈度決戦など、
中国の近代化された人海戦術に対処していかなければなりません。
遠くからの精密誘導ミサイルを艦艇や航空機に集中的に指向する遠距離飽和攻撃
(イメージは(26)に示します)は、旧ソ連の時代から存在した戦略です。
そして長期戦や長距離作戦により時間的・空間的な“隙間“ができますが、
そこに精鋭な地上軍を乗せた海上民兵による舟艇や揚陸艦で攻撃が行われる可能性が
高いと考えられます。
その辺も、われわれは念頭に入れておく必要があるのです。
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