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【米中もし戦わば】033-03、核保有国を完全に打ちまかす事は不可能

ここで、こう問いかける事は有益かもしれない。

 オフショア・コントロールは経済的絞殺以外に何を戦略的目標としているのだろうか。

 つまり、何が「勝利のセオリー」なのだろうか。

 ハメスにとって、目標は中国政府ではない。

 現代では核保有国を完全に打ちまかす事は不可能であるだけでなく、核攻撃の応酬の中で

双方が壊滅的打撃を被ると言う不毛な結果を招くだけだ、と彼は言う。

 そのような事態を避けるためには、台湾の政府であれ、尖閣諸島への侵略であれ、

フィリピンやベトナムからの石油・天然ガス採掘権や漁業権の強奪であれ、

電撃戦によるインドからのアルナーチャル・プラデーシュのダッシュであれ

アメリカに対する上空通過の自由の拒否であれ、

戦争のきっかけとなった行為を中国にまずはやめさせ、しかる後、元の状態に

戻させることができればそれを「勝利」と考えるべきだ、と彼は主張する。

 勝利のセオリーの第二点としてハメスは、世界の成長と繁栄を続けるなら、

世界経済は中国の14億の消費者と膨大な製造能力を必要とするだろう、とも考えている。

 エアシーバトルが想定してるような中国本土への攻撃は一切行わないため、

オフショアコントロールは中国のインフラにはダメージを与えない。

 だから、オフショアコントロールはより優れたアプローチなのだ、と彼は言う。

 「中国のインフラを破壊しないことで、戦後の国際貿易の回復が容易になる」

ハメスの3番目の論拠は、「激情、偶然、理性」と言うクラウゼヴィッツの有名な

「戦争の三位一体を踏まえている。

このクラウゼヴィッツ流の観点から言えば、エアシーバトルは中国本土を直接攻撃する

ことによって中国国民の激情を煽り、解決の見通しの立たないまま戦争を長引かせる

と言う致命的な誤りを犯す事になる。

 「屈辱の100年間」を背景にしたこの問題について、ハメスはこう述べている。

オフショアコントロールはより優れたアプローチのだ、と彼は言う。

 「中国のインフラを破壊しないことで、戦後の国際貿易の会社が要因になる」の

3番目の論拠は、「劇場、偶然、理性」と言うクラウゼヴィッツの有名な

「戦争の三位一体」を踏まえている。

 このクラウゼヴィッツ流の観点から言えば、エアシーバトルは中国本土を

直接攻撃することによって中国国民の激情を煽り、解決の見通しの立たないまま

戦争を長引かせると言う致命的な誤りを犯す事になる。

 「屈辱の100年間」を背景にしたこの問題について、述べている。

 中国本土を攻撃すれば、中国は理性を超えて激情的になり、平和的解決のための

交渉に応じようとしなくなるだろう。

本土攻撃を行えば、戦争前の状態に戻す事ははるかに困難になるだろう。

アメリカの国防大学のマーク・モリス大佐、オフショア・コントロールを

好意的に評価して次のように述べている。

中国本土を直接攻撃すれば、中国共産党が祖国防衛の英雄になってしまう。

 最後に、オフショアコントロールには次のような利点もある。

 様々な方法で、圧力を徐々に、段階的に高められると言う利点である。

 ガラガラヘビのように一気におそいかかるのに対して、オフショアコントロールは

ニシキヘビのようにじわじわと締めあげるのである。

クラインとヒューズは次のように述べている。

第一列島線以東への侵入を拒否して遠隔封鎖を実行することができれば、

アメリカは、中国本土への攻撃と言うエスカレーションの危険性のあるステップに

踏み出す前に、段階的な行動をとることができる。

ハメス及びクラインとヒューズは、このようなニシキヘビ・アプローチによって、

実際にミサイルが飛び交い始める前に紛争当事国同士が交渉を始めるための

十分な時間と空間を確保できると主張している。

だから、オフショア・コントロールはエスカレーションの危険が小さいのだ、と。

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【米中もし戦わば】033-02、中国経済はあまりにも海運に依存している

チョークポイントがこれだけあるとなると、アメリカとの同盟諸国に海上封鎖された

場合、中国艦船が太平洋やインド洋に出て行く事は非常に困難になる。

 海上封鎖には、潜水艦や潜水艦や、空母戦闘群だけでなく、機雷も使用されるだろう。

 中国が機雷先戦を重視していることを考えると、もしも実行されればこれは

「やられたらやり返せ」作戦と言うことになる。

 中国の「経済の格差」、つまり経済的要因について言えば、その原因は、

中国経済がエネルギーの輸入と製品の輸出にあまりも大きく依存していることにある。

 さらに、「世界の工場」として中国は銅、鉄鉱石、ニッケル、錫、木材など

あらゆるものを大量に必要としている。

これが「過酷さ」に拍車をかけている。

 大まかに言えば、輸出に過度に依存する中国経済は、そのGDPの伸びの半分以上を

貿易に依存している。

 一方、とうもろこしや大豆など農産物や食料の輸入依存率は次第に増加している。

 こうした経済的・地理的過酷さを考えると、中国は確かに封鎖に対して脆弱なのだといえよう。

 この強固な前提に基づいて、アメリカの国防総合大学のT・X・ハメス大佐や

アメリカ海軍大学校のウェイン・ヒューズ大佐とジェフリー・クライン大佐が

提唱しているのがオフショア・コントロール戦略である。

 この戦略の「目的、方法、手段」について、クラインとヒューズは次のように述べている。

 ウォーアットシー戦略(オフショア・コントロール戦力)とは、中国の領土・領海拡張の

試みを阻止することであり、それに失敗した場合には、有事の際に中国に対して

「第一列島線」伊東の海の使用を拒否することである。

これを実行する方法は、中国の海上交通を遠隔地点から妨害する、

第一列島線伊東の広範囲の水域で潜水艦による攻撃及び機雷の敷設を行う。

 小型ミサイル艇を使って東シナ海、南シナ海で攻撃を行い、船舶のチョークポイント通過

を阻止する、危険にさらされている南シナ海の島々を確保するために

海兵遠征軍を配置する、と言うものであり、中国本土への陸上部隊派遣は想定されていない。

これを実行する手段は、空軍、空母戦闘群、潜水艦、およびアメリカ軍、同盟軍の

小規模部隊の前方展開船団を組み合わせた兵力構成である。

ハメス大佐の(傍点は著者による)冷酷な言い回しを借りれば、これはまさに

「経済的絞殺の戦い」に他ならない。

ハメスにとって、この戦略のエレガントさは、「アメリカの強みを最大限にし、

中国の強みを最小限にする方法で戦うことを余儀なくさせる」点にある。

 クラインとヒューズも、これを「アメリカが長年培ってきた制海力を、

海に依存する中国に用いる」戦略と呼んでいる。 

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【米中もし戦わば】033-01、海上封鎖の実行問題

中国を封鎖戦略に対して脆弱にしている要因を選べ。

 ①経済的要因

②地理的要因

③ 1と2の両方中国の「地理の過酷さ」についてはすでに第3章で詳しく述べた。

 だが、オフショア・コントロール戦略を検討するにあたって、ここで簡単におさらいしておこう。

 地理的に見て、中国大陸は第一列島線によってほぼ完全にアメリカの同盟諸国に

取り囲まれ、封じ込められている。

 中国の独裁的指導者らが胸騒ぎを覚えながら大陸の海岸から毎日眺めているに違いない

この「逆長城」は、日本本土から琉球諸島を経て台湾で中間点に達し、

そこからフィリピン、インドネシアを通って、最後に究極の

海上封鎖ポイントと言うべきマラッカ海峡へと至る。

 だが、中国が封鎖を恐れなければならないチョークポイントはマラッカ海峡だけではない。

 例えば、第一列島線の北側には、北海道の北側とサハリンの南端に挟まれた宗谷海峡がある。

日本海から太平洋に抜けるこの通路は、この宗谷海峡とあと1カ所しかない。

 さらに、中国にとって琉球諸島は、西太平洋に到達する際の最大の障害である。

 沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡(幅およそ300キロ)は、もう一つの重要なチョークポイントである。

 現在、この宮古海峡は、中国海軍(特に潜水艦)が東シナ海から西太平洋へ出る際の

お決まりのルートである。

 だが、中国が激しく抗議する中、日本は宮古島に、既に設置済みの高性能レーダーに

加えて88式対艦ミサイルを配備した。

 このミサイルは、中国艦船が宮古海峡のどこを通過してもたやすく射程内に収めることができる。

そこからさらに南下すると、台湾とフィリピンの間に幅250キロのルソン海峡がある。

ルソン海峡は、1941年に日本がフィリピンを占領したときには日本軍の進入路として、

その後、アメリカが海と空から日本を封鎖したときには決定的なチョークポイントとして

重要な役割を果たした。

 中国の商船や軍用船が南シナ海からインド洋に出ようとする場合も、

もちろんチョークポイントを通過しなければならない。

 インド洋への出口としては、マラッカ海峡以外に、これと同程度に危険な

スンダ海峡とロンボク海峡(いずれもインドネシア)がある。 

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【米中もし戦わば】032-05、中国が核兵器で反撃する可能性はあるか?

もちろん、エアシーバトルの問題点は、軍用地図の上で合理的でシンプルで

論理的に見える戦略が、もう少し深く考えるとずっと複雑になってくることである。

何より重要な問題は、中国が核兵器によって反撃に出る可能性である。

エアシーバトル反対派によればその可能性は非常に高いと言う。

これは、エアシーバトル実行を命令するにあたって、アメリカ大統領が

クリアしなければならない最も高いハードルである。

もちろん、一度中国がアメリカ本土に核爆弾を投下したり、アジアのアメリカ軍基地や

空母に戦術核兵器を打ち込んだりすれば、アメリカも核兵器で

反撃せざるをえなくなるだろう。

中国では通常兵器と核兵器が統合的に管理されている事態が、ことをさらに複雑にしている。

 通常兵器も核兵器も、第二砲兵部隊によって運用されている。

 そして、第二砲兵部隊がミサイルの保管場所を通常核弾頭型か高核弾頭型で

区別している証拠はほとんどない。

これがなぜ問題なのだろうか。

それは中国の通常弾頭発射能力を破壊すると言う限定的な目的でアメリカが中国本土を

通常兵器で攻撃した場合でも、中国の核攻撃能力の1部あるいは全てを図らずも

破壊してしまう結果になるかもしれないからである。

だから、エアシーバトルの可能性に直面した場合、中国は当然核報復能力の喪失を恐れるう。

これがエスカレーションの難しいところである。

核による平和を保障するとされている「相互確証破壊」原則が成立するためには、

先制核攻撃を受けた場合に核兵器で報復する能力を核保有国が有していることが前提となる。

だから、中国がエアシーバトルによって核報復能力を失うことがわかれば、

あるいは失うのではと危惧するだけで、先制核攻撃の誘惑にかられるかもしれない。

したがって、少なくとも、エアシーバトル反対派によれば、エアシーバトルの計画だけで

もエスカレーションを招く危険性が高く、実際エアシーバトルを開始したりすれば

それこそ疑心暗鬼になった中国は核兵器で反撃してくるだろうと言うことになる。 

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【米中もし戦わば】032-04、中国本土の攻撃目標はどこか?

エアシーバトル戦略の合理的なコンセプトとは、「空軍と海軍と空軍とが、

これまでよりもずっと緊密に強調し、一体化する」と言うことである。

「何を今更」と思う読者がいても不思議はないが、陸軍・海軍・空軍・海兵隊の間の

伝統的な勢力争いは、少なくとも第二次大戦以来アメリカ軍の風土病であり、

それがこのような一体化を常に妨げていたことをわかってもらいたい。

協調と一体化の具体例について、クレピネヴィッチは次のように述べている。

空軍は対宇宙兵器作戦を行って、人工衛星を利用した中国の海洋監視システムを

無力化し、空母などの海軍の高価値艦艇がターゲットにされないようにする。

その返礼として、海軍イージス艦を使って、日本のアメリカ海軍基地を

中国のミサイル攻撃から守る手助けをする。

エアシーバトル戦略の、論理的であると同時に物議をかもしそうなコンセプトとは、

「中国本土からアメリカの軍艦や基地へのいかなる非核攻撃に対しても、

通常兵器でダイレクトに反映する」と言うことである。

具体的に言えば、エアシーバトルは、「中国が第一撃を発射し次第、

1連の反撃を開始する」ことを求めているのである。

エアシーバトル反対派の急先鋒アミタイ・エツォーニ教授はエアシーバトルの論理は

致命的大惨事を招くとして次のように述べている。

最初の「目潰し作戦」で、アメリカは中国の偵察・指揮統制ネットワークを攻撃し、

中国の目標捕捉能力を叩く。

次に、アメリカは戦闘を中国本土に持ち込み、長距離対艦ミサイル発射装置を攻撃する。

そこに対艦ミサイルが配備されていることを考えれば、

アメリカが地上ミサイル発射装置をターゲットとする事は当然である。

そして、そうするためには当然のことながら防空システムや指揮統制センターや

その他の接近阻止兵器を破壊する必要がある。

要するに、エアシーバトルは中国との全面戦争を必要とするのである。

中国本土への精密攻撃がエアシーバトルに直接含まれるのかどうかについて

混乱が生じないよう、クレピネヴィッチはペンタゴンの報告書に想定される

目標の多くを掲載した地図を添付している。

想定目標は、北京宇宙指揮管制センター、新疆ウィグル自治区の

大型フェーズドアレイ・レーダーと対衛星兵器施設、合肥と綿陽の対衛星兵器施設、

海南島、酒泉、太原、西安、西昌にある衛星発射・監視施設も全て、

など中国全土にわたって分布している。これは「旧約聖書の」流の戦略、

つまり「目には目を、攻撃には反撃を」である。

そして、少なくとも純粋に軍事的な観点から言えば、中国本土に対するこのような反撃は

非常に理にかなっている。

こうした反撃がなければ、中国は攻撃される心配の聖域からアメリカの

軍艦や基地めがけてやすやすとミサイルを打ち込んでくるだろう。

少なくともエアシーバトル派にとっては、このような聖域の存在は、

「アメリカがアジアで自国の利益を守る事は事実上不可能だ」と言うことを意味する。

この厄介な問題についてプリンストン大学のアーロン・フリードマン教授は

こう述べている。

アメリカには、こちらから中国に攻撃を仕掛けて戦争始めるつもりはない。

だが、中国がアメリカ軍やアメリカ軍基地やアメリカが守る義務がある同盟国に

攻撃を仕掛けて戦争開始するなら、安全に攻撃を続けられる聖域は彼らに

与えてやるわけにいかないし、そんな聖域があると彼らに思わせるわけにもいかない。

そんな聖域を設けてやれば中国が攻撃を仕掛けてくる可能性を増大させることにもなり、

アメリカがそのための「フリーパス」を提供しているんだから、

とフリードバーグは言う。

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【米中もし戦わば】032-03 「中国が軍備を拡張するのは、西太平洋地域のアメリカの接近を拒否するため」

 エアシーバトル戦略の論理的根拠は、3つの基本的前提に基づいている。

 エアシーバトル戦略の立案者である、アンドリュー・クレピネヴィッチが、

1つ目の前提を次のように述べている。

この論争の始まりとなった、ペンタゴンへの報告書に彼とその共著者はこう書いている。

 半世紀以上にわたって、アメリカは世界的な利益を守る世界的な大国だった。

 世界的な利益とは、民主主義を擁護し世界に広めること、重要な貿易相手国及び資源への

アクセスを維持すること、アメリカと共通の利益を守ることに協力する

同盟国及びパートナー国の安全を保障することなどである。

そのためには、大規模な軍事力の投射・維持能力が不可欠である。

 もちろん、アメリカが「世界の警察官」として、民主主義も自由貿易も同盟国も、

何もかもを守り続ける必要があるかどうかについては反対意見もある。

 新孤立主義的な立場からの反応については、平和への道筋を探る第五部以降で

改めて検討することにする。

だが今は、「アメリカは世界の警察官の役割を果たすべきだ」と言う

クレピネヴィッチの主張が正しいものと仮定して議論を進めよう。

 その場合、第二の前提になるものは何だろうか。

彼とその共著者はこう述べている。

 重大な利益に関わる地域、つまり西太平洋地域においてアメリカ軍が作戦行動を行う能力が

現在、次第に脅かされつつある。

第二列島線(つまり、グアムやニューギニアにまで及ぶ範囲)以西を「立ち入り禁止区域」

にしようとする試みを中国が変更する兆しは、現在ほとんど見られない。

 中国が現在の行動方針を変えない限り、アメリカ軍が西太平洋で作戦行動を行うための

コストが急激に(大方の人間が考えているよりもずっと急激に、

そしておそらくは容認できない程度にまで)上昇するものと思われる。

このシナリオの中で、クレピネヴィッチは中国が西太平洋からアメリカ軍を追い出す

準備をしていると仮定している。

実際、この前提についてはほとんどの議論の余地は無い。

すでに述べたように、中国軍はミサイル、潜水艦、機雷からサイバー兵器、宇宙兵器に

至るまで、あらゆる種類の接近阻止・領域拒否兵器の保有を明らかに拡充しつつある。

 さらに、中国の指導者たち自身が、劉華清提督の昔から、「中国は軍備を拡張するのは、

西太平洋地域のアメリカの接近を拒否するため、あるいは少なくともでアメリカ軍が

その地域で自由に作戦行動するコストとリスクを劇的に高めるためだ」と公言している。

そうなると当然、第一及び第二の前提でからクレピネヴィッチの第3の前提が導き出される。

 クレピネヴィッチと共著者はたちは、アメリカの戦略と言う選択肢は、アメリカの

安全保障及び、その国を守ることが条約や法律によってアメリカに義務付けられている。

 重要な同盟国の安全保障にとって不可欠な地域の軍事アクセスを失うリスクを冒すか

その地域に空前の平和と繁栄をもたらした軍事バランスを安定的に維持するための方策を

探るかのどちらかと主張する。

 少なくともクレピネヴィッチにとっては、エアシーバトルはペンタゴンの取り得る

ベストな選択である。

 エアシーバトルには、2つの全く異なるコンセプトが含まれている。

 エアシーバトルは、極めて合理的なコンセプトと、論理的であると同時に

物議をかもしそうなコンセプトから成り立っている。 

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【米中もし戦わば】032-02「エアシーバトル」戦略は得策か?

1つの戦略(選択肢1)は「怪しいバトル」戦略と呼ばれている。

 ペンタゴンの総合評価局が唱えるこの戦略は、アメリカの海軍艦船と前進基地への

通常兵器による攻撃に対して中国本土へ反撃することを視野に入れている。

こうした戦略に対して、ジョージ・ワシントン大学教授アミタイ・エツォオーニのような

エアシーバトル反対派は、「このような反撃は直ちに米中間の核戦争につながる」として

即座に拒否反応を示した。

2つ目の戦略(選択肢2)は、「オフショア・コントロール」戦略と言う

マイルドな印象の名前で呼ばれることもあれば、それよりはるかに刺激的な

「ウォーアットシー」戦略と言う名前で呼ばれることもある。

アメリカ国防総合大学のT・X・ハメス大佐や海軍大学院のジェフリー・クライン大佐と

ウェイン・ヒューズ大佐などによって提唱されたこの戦略は、

第一列島線以東を中国の商船と軍用戦の「立ち入り禁止区域」とするとともに

(アメリカ版の領域拒否)、さらに広範囲の海上封鎖によって中国の世界通商路を断つ

と言うものである。

この戦略(単純化するため、これからは「オフショア・コントロール」戦略と

呼ぶことにする)の中心的前提は、経済封鎖するぞと脅かすだけで中国は

攻撃を思いとどまるかもしれないし、中国は攻撃を仕掛けてきた場合でも

実際に経済封鎖を行えば、中国は最初の攻撃で領土を獲得しても

それは明け渡すしかなくなるだろう、と言うものである。

エアシーバトル戦略と同じように、オフショア・コントロール戦略にももちろん様々な

批判の声がある。

「封鎖はうまくいかない」と主張し、中国による現状変更の既成事実化を警告する反

対派は、オフショア・コントロールを実効性のない弱い戦略だと非難する。

 直接反撃される心配がないとなれば、中国はアメリカの軍事資産に

ミサイルをどんどん打ち込んでくるだろう、と。

3番目の「ハイブリッド」戦略(選択肢3)は、エアシーバトル戦略と

オフショア・コントロール戦略を組み合わせたものである。

これには、両戦略の最良の部分を組み合わせたものなのか、

それとも最悪の部分の組み合わせなのかと言う問題がある。

この機能は本書のテーマ「米中戦争は起きるか」の中核をなす問題だから、

それぞれの戦略の長所と短所をシステムシステマチックに精査する必要がある。

本章ではこれから、エアシーバトル戦略の論理的根拠と実行方法、

潜在的問題に焦点を当てて論ずることにする。

次章では、オフショアコントロール戦略について同様に論じるとともに、

この2つのどちらかが別のアプローチだとすればそれはどちらか、

さらに、両戦略の特徴を組み合わせたハイブリット戦略の方がより現実的ないし

望ましいかどうかについて結論を述べてみようと思う。 

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【米中もし戦わば】032-01、第32章中国本土への攻撃

問題仮に人民解放軍が中国本土から、海上の艦船、あるいはグアムや日本等の

アメリカ軍基地へミサイルを発射したら、アメリカはどう対処すべきかを選べ。

①中国本土へ反撃を開始し、戦闘ネットワークを麻痺させ、長距離攻撃システムを

無力化し、情報・監視・偵察能力を破壊する。

②中国の軍用船及び商船の通行を封鎖し、エネルギー輸入ルートと製品輸入路を

断ち切ることによって中国経済の息の根を止める

③1と2の両方「中国がいつかアメリカの軍艦や基地を攻撃してきたら」と言う、

この問題の前提は確かに穏やかではない。

だが、本書のこれまでの記述を全て読んだ人なら、「そういう時代は起こり得る。

 米中の経済的相互依存度が高いからといって安心はできない」と言う

結論に至ったのではないだろうか。

 (これは実際に起こる可能性が高いと主張する人もいるが、

そうとまでは言わないにしても)起こりえるシナリオである以上、

ペンタゴンはこの問題を真剣に考えてきた。

その過程で、アジアにあるアメリカの軍事施設が中国の攻撃を受けた場合に

どのような戦略を取るべきかについて、ペンタゴンの戦略家たちの意見は

概ね2つに分かれた。 

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【米中もし戦わば】031-09、米軍基地への反対意見は根強い

「強化」「分散」「再編」の3つの戦略の実現可能性について言えば、

基地分散化戦略は基地受け入れ国の草の根レベルの政治的反対に会うことが予想される。

日本や韓国では既存のアメリカ軍基地への反対意見がもともと根強いし、

1992年にアメリカ軍がフィリピンが撤退した時も、その中心には草の根の

反対運動があった。

 その中心にさらに、どんな再編にも必ず伴う軍内部の混乱にも配慮しなければ

ならないだろう。

 アメリカ軍は、陸軍・空軍・海兵隊の間の勢力争いだけではなく、

例えば海軍の「キャリア組」と「叩き上げ」間など、各軍内の揉め事も激しいことで

有名である。

 敵に勝つ(できれば、戦わずして)という本来の目標自体が、

こうした揉め事の中で見失われることも少なくない。

こうした厄介な政治的問題について、フリードマン教授はこう述べている。

現在、中国によって突き付けられている軍事的課題の解決には、

アメリカ各軍がこれまで優先してきたものとは違う軍事システム能力の開発が必要になる。

 海軍は空母が好きだが、空母は脆弱性が次第に目立ってきたため潜水艦を増やす必要が

あるだろう。

 空軍は比較的短距離の戦闘機が好きだが、これは、飛行距離が極端に長く基地への

アクセスが限られているアジアの全域には不向きである。

 空軍は無人航空機やB-2に代わる新型ステルス爆撃機を増やす必要があるだろう。

 (だが、)これは空軍がこれまで好んで購入してきたシステムではない。

 「戦わずして勝つ」ことがアジアにおけるアメリカ軍の目標だとすれば

これまで述べてきた「強化、分散、再編」と言う3つの戦略を推し進めることが

賢明だと思われる。

だが、これまで述べたような理由によりこれらの戦略は結局先送りされてしまうだろう。

 その間、アジアのアメリカ軍基地と空母戦闘群は、

中国本土からの組織的ミサイル攻撃に無防備のまま取り残されることになる。

これから二章にわたって、「そのような攻撃を受けた場合にアメリカは

どう対処すべきか」に関する2つの主要な意見を詳しく見てみよう。

この「エアシーバトル派」対「オフショア・コントロール派」の論争は、

我々の推理作業に深く関わる重要な問題である。 

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【米中もし戦わば】031-08、中国の攻撃で空母を失えば、米国の攻撃はエスカレートする

潜水艦を重視することの利点とともに、ハルパーは空母を失うことによる損失も訴える。

 中国の攻撃で空母を失うことの「政治的影響」により、

「アメリカは選択の幅を狭め狭められ、中国本土の軍事施設に対する非常に強力な

攻撃に出ざるをえなくなるだろう。

だから、空母や主力艦船を撃沈される事は、エスカレーションと言う観点から

非常に危険だ」。

 潜水艦のプレゼンスを強化して非対称戦を中国にやり返す方法についてヨシハラは、

攻撃型潜水艦に期待される役割は、第一列島線に沿って点在するチョークポイント付近で

監視の任に当たり、そこを通過しようとする中国の商船や軍用艦を

撃沈できるようにしておくことだ、と述べている。

そうすれば、アメリカは現在中国が「空母キラー」兵器を使って

アメリカの水上艦に及ぼそうとしているのと全く同じ種類の圧力を中国に対して

及ぼせるようになるだろう。

もちろん、潜水艦戦略シフトすることの主な短所は、アメリカの戦略投射を

広く世界に知らしめると言う、空母戦闘面の重要な象徴的価値を失うことである。

 ヨシハラ自身、この短所を率先して認めている。

潜水艦は優れた接近阻止兵器ではあるが、潜水艦では武力の誇示によって

アメリカの決意を明示することはできない。

それができるのは空母だけだ。

 ある国の沖合や領土問題が起きている島の近くに空母が姿を見せるだけで、

「アメリカは本気だ」と言うことを示すことができる。

 実際、空母のまさにこうした役割を強く求める声が同盟諸国から上がっている。

 だから、妥協点を非常に慎重に探す必要がある。

 空母にできて潜水艦にはできないこともあれば、その逆もあるからだ。

 軍備再編は簡単には進まないだろう。

同盟諸国が空母を、アメリカが彼らの安全保障を真剣に考えているしるしと

みなすだろうからだ。 

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