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【米中もし戦わば】018-01、第10章国際世論の操作問題

21世紀において中国がその領土的野望を前進させるのにより効果的だったものを選べ。

 ①駆逐艦、戦闘機、弾道ミサイルなどの「殺傷兵器」

②心理戦、メディア戦、法律戦といった「非殺傷兵器」

「ペンは剣よりも強し」と言うが、文字通り「3種類の戦い方」を意味する

中国の「三戦」も、弾道・巡航ミサイルや空母艦隊などのどんな兵器よりも、

中国の領土的野望の実現にずっと効果的だと判明するかもしれない。

「三戦」は実際に非常に効果的だし、しかも今後エスカレートしていく可能性が

非常に高いため、これについてもっと深く理解しておく事は我々の推理作業にとって

重要である。

「三戦」が重要な戦闘能力として初めて公式に認められたのは、

中国中央軍事委員会と中国共産党が正式にこの戦略を承認した2003年のことである。

ケンブリッジ大学教授で以前ホワイトハウスの顧問を務めていた

ステファン・ハルパーの「中国-三戦」は三戦に関する最も信頼のおける論文で

ペンタゴンへの報告書の中で、ハルパーは三戦を、「別の手段で戦争を構成する動的・

3次元的戦闘プロセス」と呼んでいる。

領土問題解決のためにキネティックな軍事力を使用することが

ますます困難になっている現代において、三戦はノンキネティックな攻撃形態として

極めて効果的とハルパーは言う。

(「キネティック」が本来「運動の、動的な」を意味する語だが、軍事用語として

「殺傷能力がある」と言う意味で使われる。

例えば「キネティックアクション」とは「殺す」の婉曲語)。

ロシアのウクライナへの軍事介入で明らかになったように、違法な軍事力の展開は、

直ちに国際社会からの非難とともに貿易相手国からの経済制裁その他の制裁を

招くことになる。 

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【米中もし戦わば】017-05サイバー戦争はもう始まっている

もちろん、中国政府は、いかなる種類の組織的サイバー攻撃にも関わっていないと

強硬に主張している。

だが、かつて鄧小平が掲げたスローガン「実事求是」に倣い、

事実に即して真相を探求すれば、真実はその正反対であることが明らかになる。

これはもう、従来とは全く違う種類の新しい戦争が米中間で既に始まっているのだといえよう。

 アメリカンエンタープライズ研究所のマイケル・オースリンは、

この不愉快で嘆かわしい問題についてこう断言している。

アメリカはサイバーセキュリティーを真剣に考えていない。

防衛機密を真剣に考えていない。

 クリントン政権下の1990年代、中国はアメリカのミサイルに関する膨大な量のデータを盗んだ。

 気がつくと突然、中国は事実上アメリカまで到達可能な大陸間弾道ミサイルを有していた。

 ブッシュ政権時代、中国はF-35などの情報を盗んだ。

 オバマ政権時代には、ドローンの情報を盗んだ。

 アメリカは、アメリカは大国で、文化的にも技術的にも進んでいるから、

アメリカが作るものは何であれ全て相手よりも勝っていると考えているいる。

それをいいことに中国は、何十年にもわたってアメリカからこっそり盗んできた。

何十年にもわたって何十億ドルの研究開発費をアメリカの納税者からこっそり盗んできたのだ。 

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【米中もし戦わば】017-04米国の防衛システムから発見された「洗脳チップ」

次に、全面戦争時にハッキングによって何が起きるかを考えてみよう。

 アメリカの兵器、兵站システムのコンピューターおよび電子回路に、

中国が「トロイの木馬」やその他のマルウェアを埋め込んでいる恐れがある。

その究極の目的は、紛争時もしくは戦時にこのマルウェアを使ってアメリカの戦力を

破壊もしくは使用不能にしたり、誤作動を起こさせたり、

その他の方法で無力化することである。

 考えられる危険のうちのほんの1つだけでも理解するために、

映画「影なき狙撃者」(洗脳の恐怖を描いた1960年のサスペンス映画。

2004年に「クライシスオブアメリカ」と言うタイトルでリメイクされている)風の

シナリオを考えてみよう。

成都の企業の中国人エンジニアが、複雑なカスタムコンピュータチップ内に埋め込む

「キルスイッチ」を設計する。

中国は「キルスイッチ」がうまく埋め込まれた「洗脳チップ」を

アメリカへ輸出し、それらはアメリカの防衛システム内に組み込まれるまで

往年の名画「鍵なき狙撃者」の筋書きと同じように、洗脳されたコンピュータチップは

中国人ハッカーの指令をそこでじっと待っているのだ。

想像してみて欲しい。

中国の攻撃を受けた台湾或いは日本を支援するためにスクランブル発進した

空母艦載機F-15戦闘機のエンジンが飛行中に停止し、電子システムが麻痺する事態を。

実際、事実上世界の工場となって以来、このような「洗脳チップ」を仕込む事は

中国にとってはいともたやすいことである。

ソフトウェアプログラムにはウィルスやトロイの木馬を仕込めるコードが

何百万行までもあるし、コンピュータやスマートフォンのマイクロチップには、

悪意を持ったデジタルペイロードを隠せるように論理ゲートが何万個もある。

こうした予測が被害妄想に過ぎなければ良いのだが、このようなチップは

アメリカの防衛システムから既に発見されている。

例えば、ケンブリッジ大学のある研究者が、アメリカが保有する兵器の中で

最も「侵入が難しい」と考えられている軍事企画のチップにバックドアを発見している。

 問題のチップ(一般にPA3と呼ばれている)は兵器だけではなく、

原子力発電所や公共交通機関などの民生用にも使用されている。

「アビエーションウィーク」誌はこう述べている。

「中国製の特集マイクロチップがアメリカのコンピュータやネットワークに

入り込む可能性、それどころか西側の通常型兵器システムの中に入る可能性は

単なる恐ろしい予想ではない。

それはぞっとするような現実なのだ」

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【米中もし戦わば】017-03米国の最重要防衛機密がシステムシステマチックに抜き去られている

中国人ハッカーたちがこうした産業戦線で盗もうとしているのは、

大小の外国企業の設計図や研究、開発の成果、特許製法といった

お決まりのものだけではない。

彼らは電子メールから契約リスト、検査結果、価格設定情報、組合規約に至るまで

ありとあらゆるものを傍受している。

APT 1のような集団によるこうした経済ハッキングは、中国の国営企業と

人民解放軍とのユニークな協力関係をも浮き彫りにしている。

多くの場合、ハッキングの重要な目的は外国のライバル企業に対して

中国企業の立場を有利にすることである。

中国のサイバー戦争の第二戦線は、アメリカ兵器システムの大規模な窃盗である。

この問題については第5世代戦闘機F-22やF-35といったエリート兵器のデータを

盗み出されていることに関連して既に述べたが、サイバー攻撃被害のリストはさらに

「アメリカのミサイル防衛にとって極めて重要な20以上もの重要な兵器システム及び

戦闘機と戦闘艦」も含まれている。

ワシントン・ポスト紙によれば、このリストの目玉は

「最先端のパトリオット・ミサイルシステムPAC-3、陸軍の弾道迎撃ミサイルシステム

THHAD(終末高高度地域防衛)、海軍のイージス弾道ミサイル防衛システムである。

 加えて、F/A-18戦闘機やV-22オスプレイ、ブラックホークヘリコプターや、

海軍の沿海域の哨戒を目的とする新型沿海域戦闘艦など、非常に重要な戦闘機や

戦闘艦もリストに含まれている」アメリカの最重要防衛機密がこのように

システマティックに抜き取られているのは、防衛アナリストのリチャードフィッシャーが

言う通り「ほんとにぞっとする事態」である。

サイバー戦争にはさらに第3の戦線もある。

配電網、浄水場、航空管制、地下鉄システム、電気通信など、敵国の重要な

インフラへの攻撃である。

これには、民衆を混乱させるとともに経済を壊滅させると言う2つの目的がある。

例えば、中国がテルベント社のハッキングに成功した例について考えてみよう。

テルベント社は、「南北アメリカの50%を超える石油及び天然ガスパイプラインの

詳細な設計図を保有し、それのシステムにアクセスするとができる」

ソフトウェア企業である。

あるアナリストが中国のハッキングの途方もない影響力についてこう述べている。

もし誰かが私を雇い、できるだけ多くの重要なシステムを破壊する攻撃力が

欲しいのだがと、言ってきたなら、私なら、中国がテルベント社にやったのと同じことをやる。

 あれはまさに聖杯だ。

 自民解放軍の2人の大佐が1999年に発表した「超限戦(無制限の戦争)」と言う作品で

書いているのは、まさにそのようなーサイバー攻撃である。

この作品は、「中国人の書いた戦略論を注意深く読む事は、

中国の真の軍事的意図を暴く上で効果的だ」と言う典型例である。

知らなかったでは済まされないのである。

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【米中もし戦わば】017-02、中国ではハッキングは違法ではない

この脅威を正しく理解してもらうため、まず、中国でハッキングは決して違法ではない

と言う憂慮すべき事実を紹介しておこう。

 違法どころか、ハッキングは、愛国教育とインターネットで育った若い世代にとって

非常に魅力的な出世コースになっている。

 この出世コースに乗るためには、中国全土にある技術系の私立学校に通う

と言う方法がある。

 これら比較的低水準の「ハッカー専門学校」は中国の一大産業である。

 政府の許可を受けて堂々と営業し、年に何千万ドルと言う収益を上げている。

 ハッカー志願者の中には、ハルビン工業大学といった国内の一流大学に入り、

サイバースパイ活動に必要な工学や数学の高等教育を受ける道を選ぶ若者もいる。

 だが、多くのエリートハッカー志望者にとってさらに魅力的な進路は、外国の、

できればアメリカの大学に進むことである。

 その理由は、外国の大学の方が教育水準の高い場合が多いからだけではなく、

将来ターゲットとするときのためのホスト国とそのインフラを

じっくり研究できるからでもある。

政府によって直接行われるハッキングについて言えば、人民解放軍の

完全な管轄下にあるサイバー部隊が存在する。

 10万人以上ものサイバー戦士が所属し、「12の部局と3つの研究所」で

構成されている。

 中国の最も悪名高いサイバー部隊はおそらく、上海浦東地区にある12階建ての

ビルを拠点とするAPT1部隊だろう。

 APTとはアドバンスド・パーシーステント・スレット(高度で執拗な脅威)の略語で、コ

ンピューターネットワークを長期間攻撃することを意味する。

コンサルタント会社マンディアント社の画期的なレポートによれば、

この上海のエリートハッカー部隊だけでも「主要産業20分に渡る」外国人を

140社以上のセキュリティーシステムに不正アクセスしていると言う。 

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【米中もし戦わば】017-01、第17章サイバー戦争

問題

ハッキングによって行われる恐れのあるものを選べ。

 ①民間企業から知的財産を盗んで自国の経済と軍事力を強化し、

競合国の経済と軍事力を弱体化させる

②航空管制ネットワーク、配電網、銀行、金融システム、地下鉄といった

敵国の重要なインフラを破壊、あるいは使用不能にする

③競合国と同等の軍備を保つため、平時に防衛機密を盗み出す

④戦時に敵国の航空機、ミサイル、船舶、戦車を破壊したり、使用不能にしたり、

行き先を勝手に変えたりする

⑤目くらましと誤誘導によって、戦場において戦略的戦術的に優位に立つ

⑥軍事通信を傍受または妨害する

⑦1 ~6のすべて

これには「1 ~6の全て」と答える人が多いのではないかと思う。

 1990年代のインターネット黎明期を思い返してみると、インターネットは

歴史上最大の悪魔的取引だったと言えるかもしれない。

GPS、iTunes、オンライン教育、ビデオ会議などなど、インターネットがもたらす

恩恵の数々と引き換えに、われわれは、新たなる兵器の出現に直面することになった。

静かだが威力は絶大なその兵器は、選択的破壊兵器にも大量破壊兵器にもなり得る。

平和にとっては不都合なことに、中国ほどアグレッシブにサイバー戦争能力の

増強を図ってきた国はない。

また、平和で貿易の盛んな時代にあって、中国と積極的にサイバー戦争能力

(の少なくとも1部)を展開した国も他にない。

サイバー空間における中国の攻撃性は、9.11以来アメリカのサイバースパイ活動が

急速に増加したことによってさらに高まっている。

アメリカが国家安全保障上やむを得ないとしてその行動を正当化しようとしてきたのに対して、

国際世論はこの「アメリカ例外主義」的論拠を受け入れていないようである。

アメリカのモラルに対する国際社会の評価が下がった分、その不幸な副作用として

中国のサイバースパイ活動に対する国際社会の非難は、

それが当然受けるべきレベルよりもずっと生ぬるいものになってしまった。 

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【米中もし戦わば】016-05、米国の衛星ネットワークは無力化されるのか?

しかし結局のところ、今後数十年のスパンで見て最も危険なのは、

中国が人工衛星兵器を開発することでは無いかもしれない。

さしあたってはそれよりも、中国はアメリカの衛星ネットワークの無力化を

計画していることの方が危険かもしれない。

 衛星ネットワークは今や、アメリカの軍事戦略の鍵となる要素であるだけでなくて

ますます情報化されるアメリカ経済の生命線でもある。

 アメリカの衛星ネットワークを、中国はどのような方法で無力化しようとしているのだろうか。

 ポール・サイモンのヒット曲「恋人と別れる50の方法」も真っ青と言う位、

実に様々なプランがあるようだが、大まかに言えば中国の対衛星兵器は

「ハードキル(直接攻撃)」と「ソフトキル(誘導撹乱)」の2つのカテゴリーに分類できる。

 「ハードキル」の典型例は、2007年の対衛星兵器のテストを見ることができる。

 2007年1月11日、中国は直接上昇式人工衛星ミサイルを多段式ロケットに乗せて

西昌衛星発射センターから打ち上げた。

目標は、上空800キロ以上の極軌道を周回してる中国の老朽化した気象衛星だった。

 結果命中。

 テストは大成功だった。

 こうした「キネティックハードキル」のほかに、「ソフトキル」テクニックがある。

「ソフトキル」の方法は、衛星通信の妨害や、高エネルギーレーザーを使って

一時的に衛星の「目をくらませる」など多岐に渡っている。

 中国は、すでに2006年にアメリカの人工衛星に対してこのような

「目くらまし」テクニックをテストしている。

 ますます進化する中国の人口衛星攻撃兵器は、アメリカの宇宙支配と経済だけでなく、

核抑止力の重要な柱おも脅かしている。

中国がハードキルによってにせよソフトキルによってせよ、アメリカの軍事衛星を

無力化した瞬間、アメリカは安全保障上、中国が核による第一撃を仕掛けてくると

考えざるをえなくなるだろう。

 攻撃が準備されているかどうか、衛星の目で監視するかすることがもはやできない以上、

そう考えるしかない。

 その時、アメリカ大統領は先制核攻撃以外の選択肢は無いと考えるかもしれない。

 そうなれば、中国との戦争によって世界の終末がもたらされることになるかもしれない。 

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【米中もし戦わば】016-04、「人工衛星からミサイルを発射」

中国の野心的な宇宙計画の目標については、2つの別個の軍事的次元で考えることができる。

第一に、中国は、陸上海上問わず、あらゆる戦場の状況認識を可能にする

アメリカ流の情報ネットワークの構築を望んでいる。

第二に、中国は、威圧、抑止用及び実験用兵器として、通常兵器と核兵器の両方を

宇宙空間に配備しようとしている。

第一の目標を達成するため、中国は現在、複雑な偵察・監視・気象観測衛星ネットワークを

構築中である。

このネットワークの要が、北斗七星にちなんで名付けられた北斗衛星測位システムである。

 完成時には、30基の静止衛星及び非静止衛星で全世界をカバーする予定であり、

誤差50センチ以内と言うGPS並みの精度を目指している。

兵器配備に関して中国の秘密主義がますますエスカレートしている。

問題なのは、中国がロケットに何を積んで宇宙へ飛ばしているか、つまり、

最終的に中国の宇宙ステーションにどんな兵器が配備されることになるのかが

全くわからないと言うことである。

 この不透明性から、どうしても様々な疑念が生じてくる。

 例えば、「中国は、人工衛星ネットワークに核弾頭を配備する準備をしているのだろうか。

いざ戦争になったらそれを本当に落とすつもりなのだろうか」と言う、

被害妄想的とも思える記念がそれである。

 この疑念が本当に被害妄想かと思えば、そんなことはない。

 少なくとも、中国人によって書かれた戦略論を額面通り受け取れば、

杞憂とは言い切れなくなる。

 (実際、こうした戦略論の至るところで敵(多くの場合、明らかにアメリカのことを

指している)を打倒するための最先端宇宙兵器の使用が詳細に検討されている。

 その典型例が、李大光大佐の「宇宙戦争」である。

李は、「中国上空の宇宙空間を飛行するあらゆる飛翔体を破壊または一時的に

無力化する」こともことを支持するとともに、「敵に壊滅的打撃を与えるために」

「地上発射の対衛星兵器」及び「対衛星衛星」を使用することが必要だと述べている。

「敵」が間違いなくアメリカを指していることをはっきりさせるため、

中国共産党中央委員会の機関紙「求是」掲載の論文を見てみよう。

 中国は可及的速やかに宇宙兵器開発の努力をすべきである。

 これが、アメリカを攻撃する最も効果的な軍事的手段だからである。

中国はいずれ人工衛星からミサイルを発射できるようになれば、

アメリカはどこにも隠れられないと悟るだろう。

つまりアメリカは中国の兵器の攻撃範囲に国土全体が完全にさらされていることに

気づくだろう。 

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【米中もし戦わば】016-02米中の「宇宙戦争」が始まっている

成長過程にある中国の宇宙軍事力、および拡大するその影響について述べる前に、

まず、「戦略的高地」についてざっと考えてみよう。

その意識が常に「高所に布陣するように」と助言してるように、

「戦略的高地」は紀元前の昔から重要視されていた。

 プロイセンの優れた戦術家クラウゼヴィッツも、「高台は見晴らしに優れ」、「

(高台にすれば)命中する確率も高まる」と述べている。

 「戦略的高地」は、石器時代の単なる高い木の枝から、やがて進化して

第一次大戦時の偵察用気球になり、第二次大戦時には偵察機になり、

1960年代には高々度偵察機になり、現在ではついに、

地球を何重にも取り巻いている複雑な人工衛星ネットワークになった。

 現在アメリカは非常に効果的に宇宙を軍事利用しているが、

平和と言う目的のためには不都合なことに、これが冷戦たけなわの時代よりも

さらに不安定な事態を引き起こすことになるかもしれない。

 冷戦時代、アメリカもソ連も、お互いの衛星システムには手出ししないと言う

暗黙の取り決めを固く守っていた。 

衛星による偵察や監視が核抑止力に決定的な役割を果たしていることを、

両者とも明確に理解していたからである。

 実際、向こうから第一撃のミサイルを打ってくる心配は無いかと

両者はともに確信できるのは、相手が大陸間弾道ミサイルをどうしようとしているか

双方が常時監視しあいるからこそだった。

 だが、現在、中国はアメリカとのそうした暗黙の了解に全く興味を示していない。

それどころか、中国は宇宙を平和の聖域とか地球外共有地としてではなく、

単に「情報化戦争」の戦場として考えている。

冷戦終結後の戦争の進化を考えれば、中国が宇宙を平気化しようと考えるのも

不合理な態度ではない。

 ここに、非常に明確な問題点がある。

 中国はこれまで、潜在的敵国アメリカがアフガニスタンやセルビアといった国々で

行ってきた戦争を最前列の席でつぶさに観察してきた。

いずれの戦争でも、アメリカは宇宙と言う戦略的高地から、多くの場合「体制変革」と

言う目標に沿って、常に勝利を収めたわけではないにせよかなり効果的に戦ってきた。

 つまり、冷戦時代に宇宙が第一に平和と抑止の道具だったの対して、

今では宇宙は非常に効果的な最終兵器へと変貌を遂げているのだ。

そして、いざ実戦となった場合には、この戦略的高地を確保した側が

まず確実に表示する、と米中双方が明確に理解している。

こうして、戦略的高地をめぐって皮肉にも、世界の二大経済大国であり

重要な貿易相手国である二国間で競争が始まり、中国は、攻撃、防衛両面の

宇宙軍事力を開発すべく極めてアグレッシブな戦いに乗り出すことになった。

中国は、一方の手で、アメリカと同じような、効果的な軍事行動を可能にする

宇宙ネットワークを握ろうとしている。

 そしてもう一方の手で、宇宙におけるアメリカの優位を無力化あるいは

破壊するための「暗殺者の棍棒」を開発しようとしている。 

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【米中もし戦わば】016-01、第16章宇宙戦争

問題

宇宙軍事力におけるアメリカの優位を、中国がどう見ているかを選べ。

 ①アメリカ最大の軍事的強み

②アメリカの最も明白な軍事的弱点

③ 1と2の両方

制空権、制海権獲得の必要性に目覚めるきっかけを中国に与える与えたのは

第三次台湾海峡危機だったが、人工衛星兵器の威力を見せたのは

1991年の第一次湾岸戦争における「衝撃と畏怖」作戦だった。

宇宙と言う究極の高みから戦場をみはらす能力と「情報優位」こそが、

第一次湾岸戦争においてアメリカがほとんど戦死者を出すことなく

迅速な勝利を収めることができた鍵だった。

アメリカ側の戦死者が300人未満だったのに対して、イラク側の死傷者は

10万人を上回った。

1991年の第一次湾岸戦争は、中国にとって間違いなく宇宙時代の始まりだった。

それ以来、中国は宇宙軍事力の開発をアグレッシブ的に模索してきた。

さらに敵の人工衛星を攻撃するための「暗殺者の棍棒」(中国側の呼称。

 西側では「魔法の弾丸」と呼ばれる)の開発にも励んできた。

 ペンタゴンの説明によれば、「暗殺者の棍棒」の目的は、宇宙空間にある

アメリカの目と耳を「拒絶し、退化させ、欺き、妨害し、破壊する」ことである。

人工衛星の軍事利用によってアメリカ軍は世界最強にして最も効果的な軍隊になったが、

その一方で、戦場での状況認識を人工衛星ネットワークに

過度に依存することによる弱点も生まれている。

その弱点を突いて、宇宙と言う究極の高地に陣取っているアメリカを

そこから追い落とそうというのが中国軍の戦略である。 

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