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【銀行デジタル革命】26投機対象としては魅力的

仮想通貨のボラティリティーの高さは、決済通貨としての普及を阻む

大きな原因となっていますが、それが反対に、投機対象としての魅力を高めているのです。

そのため現在は取引の大半を投資目的が占めています。

 仮想通貨を、株式等と同じように投機対象の資産、あるいは金融商品と考えた場合、

その最大の特徴はボラティリティーの高さにあります(図表2-2)。

これも第6章に詳述しますが、株式や貴金属、不動産等投機対象となる資産の多くは、

世界的にボラティリティーが低下する傾向にあります。 

その中で、仮想通貨のボラティリティーの高さは際立っています。

ボラティリティーが高いことが、投資リスクの高さを示す一方で、

キャピタルゲイン(売却益)を短期的に稼げる可能性があることを意味しています。

それが、ハイリスクハイリターンの投資スタイルを好む投資家にとっては、

大きな魅力となっているのです。

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【銀行デジタル革命】25激しい価格変動に小売業者は困惑

ビットコインの激しい価格変動も、決済手段としてのビットコインの

利用拡大の大きな障害となっています。

ボラティリティー(価格変動率)が高い理由については第6章に詳述しますが、

仮想通貨の価値が明確でないことが底流にあると思われますビットコインは、

商店等での取引が完結するまでに時間がかかることに加え、

ビットコインを取引所で円などの法定通貨に交換するのにも時間を要します。

そのため小売などの事業者がビットコインを代金として受け取ると、

法定通貨に交換するまでの間にビットコインの価格が下落して、

損害を被る危険があるのです。

代金をビットコインで受け取ることに慎重な事業者が少なくないようです。

法定通貨の高い信頼性も仮想通貨決済が普及しない遠因となっています。

円やドルなど長い歴史を持つ法定通貨は既に利用されており、

多くの人々はその安全性に疑いを持っていません。

加えて中央銀行が、すでに信頼が確立している現金の発行流通を

いっそう拡大させる際には追加的なコストはほとんど不要です。

これに対し、生まれて間もない仮想通貨が信頼を勝ち得て、

その利用を拡大させていくためには、かなりのコストを要します。

一般に信頼性の低い仮想通貨が、仮想決済手段として信頼性の高い法定通貨に

とって変わるには、利便性の面で相当大きな利点があることなどが必須ですが、

前述の通り、決済手段としてのビットコインの利便性は高いとは言えません。

さらに、人々はすでに幅広く流通している法定通貨を使うことに、

これといった不便は感じていません。

そうした状況が続く限り、仮想通貨の決済手段として法定通貨に容易に代替される事は

ないと予想されます。

仮想通貨が決済手段として普及する可能性があるのは、

例えば自国通貨への信任が極めて低い国です。

インフレ率が非常に高く、自国通貨の価値が急速に目減りする危険性が

あるような国では、自国通貨よりも外貨であるドルの信認が高く、

ドルが広く流通している発展途上国は少なくありません。

特に物価変動が激しい国においては将来、仮想通貨による決済が

全体の8割以上となる可能性を指摘する専門家もいます。

ドルなどの外貨と異なり、仮想通貨であればスマートフォン決済が利用できるなど、

よりメリットがあるからです。

しかしそれは例外であり、多くの国では仮想通貨が決済手段として普及する可能性は、

将来にわたっても小さいと思われます。

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【銀行デジタル革命】24仮想通貨決済は普及しない、10分の壁—遅い処理スピード

ビットコインなどの仮想通貨は、本来は代金の支払い、送金などの決済手段として

使う目的で生み出されたものです。 

仮想通貨に限らず、通貨供給量が増えればその価値は相対的に下がり、

需要に対し供給が不足すれば価値があります。

そのため、通貨の発行者が恣意的に供給量を調整することがあれば、

その価値が不安定となり信頼が薄れます。 

ビットコインの供給量は2100万枚と定められており、

2140年ごろにその上限に達するとみられています。

そのことが信頼の基礎になっているといえます。

しかし、ビットコインの決済手段としての利用は、仮想通貨取引全体の

1割にも満たないとみられます。

後述しますが、大半は投資目的、投機目的で取引されているのが仮想通貨の実態です。

 決済手段としての仮想通貨が普及しない一因は、処理スピードが遅いことにあります。

ビットコインは、“通貨“としての安全性を担保し信頼性を高めるために、

ブロックブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術(DLT)を 採用しています。

多くの取引記録は10分ごとに1つのブロックとして認証され、

パッケージ化されて公開される仕組みで、ビットコインの利用者であれば、

過去の取引履歴の情報として共有することができます。

逆に言うと、取引はパッケージ化されて公開されることで成立します。

そのため、利用者が支払いや送金にビットコインを用いる際には、

取引成立まで10分間待たなければなりません。

よほど心に余裕のある人でなければ10分は待てないでしょう。

これがいわゆる「10分の壁」です。

DLTは安全性の確保のためには優れた仕組みですが、

「10分の壁」が決済手段としては決定的な欠点となってしまっています。

このことが、ビットコインが決済手段としてなかなか普及しない要因の1つです。

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【銀行デジタル革命】23早かった関連法整備

日本でビットコインの取引量が急速に拡大した背景には、日本政府による迅速な法整備と

中国当局による仮想通貨取引所の閉鎖があります。

2017年4月に資金決済法が改正されました。

法改正は、世界に先駆けて仮想通貨を「インターネット上で取引される財産的価値」と

定義し、税制、会計上は資産とした上で、仮想通貨と円とドルなどの法定通貨の

交換を行う取引所に登録制済を導入しました。

仮想通貨には法的地位が、取引所には当局の“お墨付き“が与えられたわけです。

さらに、取引所を運営する法人に、法人の口座と顧客の口座を明確に分ける

分別管理を義務づけ、顧客資産を取引所の破綻などから守る措置を講じました。

利用者保護のための迅速な法整備だったと評価できます。

また本人確認を求めることで、マネーロンダリング対策も講じられました。

こうした法整備により仮想通貨の取引の信頼性が高まったことが、

日本での取引量が拡大した要因の1つです。

一方、2017年9月に中国政府が中国国内の仮想通貨取引所を閉鎖したことも、

日本での取引量拡大の要因となりました。

中国では閉鎖前から規制強化が進められていたとみられ、

2016年代には世界シェアの多くを占めていた中国人民元建ての取引は、

2017年初頭から既に急減し始めていました。

取引所の閉鎖がこれに追い打ちをかけ、中国から日本の仮想通貨取引所に

資金が流入し、取引量を拡大させました。

一般に欧米追従型の政策が多くを占める日本で、政府が世界に先駆けて

仮想通貨に関する法整備を進めた背景には、2014年のマウントゴックス事件がありました。

ビットコインの取引所マウントゴックスを運営するMT.GOX社が経営破綻し、

顧客からの預かり金を保管する預金口座の残高が最大28億円不足すると言う

事態に陥った事件です。

当時の時価に換算してビットコイン470億円分が消失していたと言われています。

被害を受けた顧客も多く、政府は仮想通貨取引の信頼を回復するために

法整備を急いだのではないかと思われます。

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【銀行デジタル革命】22第二章仮想通貨は決済手段となれるか、日本は取引所は世界トップに、世界で流通する仮想通貨は1600種類

日本では現金がいまだに大きな存在感を失っていませんが、

世界では、現金を使わないスマートフォン決済の普及が勢いを増しています。

メガバンクのデジタル通貨発行の準備も、その流れにあります。

日本ではビットコインに代表される仮想通貨は、

スマートフォン決済で使われる通貨の一翼を担っていますが、

決済終了までに時間がかかることや価値が安定しないことなど、

決済手段に用いる通貨としては欠点もあります。

 また、仮想通貨の流出消失事件を機に、その安全性に対する人々の不安も大きくなっています。

 本章では、新しい通貨として注目される仮想通貨について、

日本での動向と決済通貨としての課題を中心に検討します。

まず仮想通貨の取引量を見ると、世界中で拡大が加速しています。

一般社団法人の日本仮想通貨交換業協会が2018年4月に公表したレポートによれば、

現在、世界で流通している仮想通貨は1596種類に及び、

同年3月末現在の時価総額は27兆円を上回りました。

中でも取引量が突出しているのは、消失事件で有名になったビットコインです。

時価ベースでは全体の45.2%を占め、その取引価格とその取引量拡大のスピードは瞠目に値します。

 図表2-1にビットコイン(BTC) イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、

ビットコインキャッシュ(BCH)ライトコイン(LTC)の主要五通貨の1日あたりの

取引量の推移を示しました。

ビットコインの取引量は2015年3月末ではまだ27億円ですが、

その後拡大のペースを早めて2018年1月には3兆円に迫る状況にまで膨れ上がりました。

ビットコイン取引の中心にいるのが日本です。

日本仮想通貨交換業協会によると、取引に使われる法定通貨で円は57.1%のシェアを

占めています。

ビットコイン取引の6割が日本の取引所で行われ、

日本の投資家がビットコインの取引量を押し上げる牽引役をしていると言うことです。

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【銀行デジタル革命】21銀行フィンテックの課題

海外と比較して、日本の金融機関のフィンテック対応がどの程度の水準にあるかは、

IT投資の分野や規模から類推することができます。

海外の主要銀行と比較したメガバンクのIT投資の特徴は、

これまで「規模が小さい」「外部委託比率が高い」「規制対応、維持、報酬等、

固定費の支出割合が高い」ことなどを指摘されてきました。

そうした状況に現在も大きな変化がない事は、日本銀行による市場「銀行の情報システム

の将来像—フィンテックが示唆する未来」が示しています。

それによれば、米国の銀行の2014年のIT投資は、メンテナンスなどを中心とする

「守り投資」の比率が42%であるのに対して、

顧客向けサービスの高度化、利便性向上のための「攻めの投資」の比率は58%を占めています。

他方、邦銀の2014年のシステム関連経費の目的別内訳は、

維持、運用が70%、安全対策が9%で「攻めの投資」である新規開発は

わずか21%にとどまっています。

近年、銀行の収益環境と先行きの見通しが一段と厳しくなっていることや、

既存の投資の更新費用がかさむことから、新規のIT投資の抑制傾向は一段と強まっています。

業務を効率化し顧客利便性を高めるような、フィンテック関連を含む

「攻めの投資」に割く費用はさらに削減されているはずです。

後に詳述しますが、日本の銀行はリストのためのIT投資には積極的ですが、

あらたなイノベーションを取り込むためのフィンテック関連投資については、

全体として海外使用銀行に遅れをとっています。

例えば、米国のゴールドマン、サックスは、AIやビックデータに強みを持つ

フィンテック企業に積極的に出資し、出資先企業と共同で株式市場分析支援ツールを

開発しています。

HSBC (香港上海銀行)はフィンテック企業に出資し、AIを活用した

顧客管理システムを利用しています。

顧客を評価した独自のスコアリングモデルに基づき、銀行内の顧客データと

外部データ(SNSやニュース等)などの情報を総合的に分析して、

担当者に顧客との対応を助言するといいます。

RBS (ロイヤルバンクオブスコットランド)はデジタル化で対面型顧客サービスを

縮小し、2010年に2200店舗だった国内支店を半減させました。

デジタル化の理由は、顧客のデジタルサービス志向への対応だったと説明しています。

こうした海外の銀行の先進的な取り組みに水をあけられているのが、

日本の銀行のフィンテック対応の実情です。

そのため、経営効率の内外格差は一段と拡大していく可能性があります。

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【銀行デジタル革命】20銀行デジタル通貨の限界

第3章で詳述しますが、世界はキャッシュレス化に進みつつあります。

 メガバンクが創設を準備しているデジタル通貨も、その方向に向かっているように見えます。

しかし、日本に本格的なキャッシュレス社会が到来するかどうか、

デジタル通貨が全ての人々に完全に行き渡る社会インフラになるかどうかと言う視点で

見たとき、銀行にそれを推進する強い意志と覚悟があるかどうかは疑問です。

それは今述べたようなジレンマに銀行が直面しているからでもありますし、

また、一度社会インフラの構築を推進する立場になると、

ときには採算を度外視してもやらざるをえなくなると言う懸念もあるからでしょう。

デジタル通貨の普及により、銀行の収益がどのくらい失われるかを大胆に試算してみましょう。

 例えば、三菱東京UFJ銀行(当時、現三菱UFJ銀行) 2017年3月期の

有価証券報告書をもとに試算すると、年間779億円の利益が失われる計算となります。

報告書にある決算関連手数料は1558億円です。

決算関連の減価償却費は約376億円と計算できるので、決算関連の収支、

つまり手数料収支は1182億円ほどだと予想できます。

決済のうち、これまでATMなどを利用していた送金の半分が、

デジタル通貨を利用したスマートフォン決済に代替されると仮定すると、

手数料収入は779億円に半減します。

一方、利用者が減っても減価償却費は減少しませんからそのままです。

収支は現在の約3分の1の403億円となり、779億円の減少です。

この減少分は三菱UFJ銀行の2017年3月期の純利益4815億円の16.2%にも相当します。

前述の全銀システムは、全国の振り込み依頼を振込先口座リアルタイムで送信し、

銀行間の決済も当日完了する、世界に類例の少ない決済サービスです。

そのコストは膨大です。

キャッシュレス化が進むと、システム、店舗、ATMなどの既存のインフラは

無用の長物となります。

キャッシュレス化は銀行にもメリットがあるとの主張もありますが、

デメリットをうわまわるかどうかは疑問です。

例えば、キャッシュレス化によってATMは必要なくなりますが、

それは銀行の収益を悪化させる可能性があります。

地銀は純利益の13%、セブン銀行は93%をATM手数料から得ているのが実情だからです。

 ここは日本のキャッシュレス化を考えるときの重要なポイントでもあります。

 銀行自身がデジタル通貨を発行することにそのようなジレンマがある事は、

銀行と競合するフィンテック企業がスマートフォン決済を担っている海外とは、

事情が全く異なります。

そうしたジレンマを考慮すると、銀行がデジタル通貨の発行を顧客向けサービスの

一環と言う範疇を超えて、キャッシュレス社会構築の一翼を担うインフラに

発展させることまでを意図しているとは思えません。

もしそのような考えを持っているのであれば、最後の1人までもが

それを使いこなすことを支援し続けなくてはならない義務を負うことになります。

例えばスマートフォン決済の通貨を利用すると言う方式の人々が移行するのを

助けるための費用や、利用の相談、教育のための人件費が考えられます。

場合によってはスマートフォン購入の支援などのコスト、

高齢者や外国人を含む全ての人々が不便なく利用できるはず環境整備などを求められるでしょう。

それには単にデジタル通貨を発行することとは比較にならないような

巨額の投資とその維持費が必要です。

第5章で詳しく見ることになりますが、銀行は歴史的に見ても

極めて厳しい収益環境に直面しており、その中でメガバンクは経営の

行動改革に着手したばかりです。

そうした銀行に、キャッシュレス社会のインフラ構築に投資する余裕はないと思われます。

できればやりたくはないけれど、やらざるを得ない—

これが、日本のメガバンクのフィンテック対応の本音ではないでしょうか。 

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【銀行デジタル革命】19銀行が直面するジレンマ

銀行は、フィンテック企業が始めた新しい金融サービスを黙って見ているだけでは

「土管化」してしまうだけです。 

そうしたサービスに何らかの格好で参入しないわけにはいきません。

 銀行がフィンテック企業と連携するだけではなく、フィンテック企業を買収したり

自ら新会社を立ち上げたりする志向を強めているのは、そうした理由があるからです。

デジタル通貨の創設も、そうした流れの中にあると言えるでしょう。

しかし、参入すればジレンマにも遭遇します。

1つは、今まで言っていた手数料を失い失いかねないことです。

銀行がデジタル通貨を発行すれば、顧客利便性が高まったり、ATMを削減できたりして

経費削減にもつながるでしょう。

一方そのデジタル通貨がクレジットカードに変わって利用されるようになれば、

銀行預金を使った決済の1部を代替していくことになります。

その場合には、銀行は預金決済で得られるはずの手数料を失うことになるのです。

もう一つは、特定の業務分野に強いフィンテック企業との競争に身を投じることが、

銀行自身の収益基盤を揺るがし、自分で自分に構造改革を迫る羽目になってしまうことです。

 銀行の経営モデルはフルライン型と呼ばれます。

 多くの店舗とATM、巨大なシステムと大量の人と言うインフラを持ち、

個人から企業、公的機関まであらゆる顧客に対して融資を始めとする各種取引を行って

収益を上げてきました。

それに対してフィンテック企業がコストがかかるインフラを持たず、

銀行のシステムを1部利用しながら収益性の高いサービスに絞って提供する、

モノライン型のビジネスモデルです。

銀行も同様のサービスをする事は可能ですが、ビジネスモデル全体として

簡単にフルライン型を止めることができません。

多くの利用者がいるサービスを突然やめたり、取引先や支店や従業員を

急激に削減することができません。

銀行は自ら新規参入したサービスがたとえ既存の事業と競合しても、

これまでのフルライン型のやり方を急には代えられず、

得られた既存の収益基盤を自分で侵食していくことを

甘受しなければならない状況に置かれているのです。

それでも、従来の業務体系を変えないわけにもいきません。

新たな土俵での競争に力を注ぐほど、取引先や従業員といった

ヒト、店舗やATMやシステムといったものの構造改革を

大胆に行わなければならなくなると予想されます。

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【銀行デジタル革命】18金融のアンバンドリングで「土管化」する銀行

しかし、台頭するフィンテック企業への初期対応の段階から、

自身が具体的なビジネス展開を加速する時期に入った今、銀行、

とりわけメガバンクは深刻なジレンマを抱え込んでいるように見えます。

そうしたジレンマを引き起こした大きな原因は、金融庁が競争促進へと方針転換したことで、

それによる金融業務のアンバンドリングが否応なく進展すると予想されるのです。

5%ルールを緩和した2016年の銀行法改正には、金融の安定のために

金融機関とフィンテック企業の協調や融和を促す意図があったようですが、

2017年の銀行法改正は、サービスの供給側である金融機関やフィンテック企業よりも、

需要サイドである利用者の利便性に重きを置くものでした。

金融法体系を業態別から業務別への規制へと変えていく事は、

それぞれの業務への新規参入を容易にし競争を促進しますが、

同時に業務のアンバンドリングに拍車をかけるでしょう。

アンバンドリングが進むと、銀行に何が起こるのでしょうか。

結論を先に言うと銀行は「土管化」する恐れがあるのです。

フィンテック企業は銀行システムを利用して利便性の高いサービスを顧客に提供しています。

 もちろん、タダ乗りではありません。

 フィンテック企業が顧客の送金や決済を代行しても手数料は銀行に支払われますから、

銀行の利益にもなります。

しかし、それでは顧客との接点(インターフェース)はフィンテック企業に奪われてしまいます。

日々の取引を通して蓄積される膨大な顧客情報や取引履歴などのビックデータは、

フィンテック企業に集中していきます。

銀行にとっては顧客の預金口座からお金が出たりまたそこに入ったりするだけで、

銀行自体には手数料の外は何も蓄積しないことになります。

銀行はそのシステムを顧客に利用されているにもかかわらず、

将来のビジネス展開の種となる情報は得られず、顧客からは忘れられた存在になっていきます。

それが「銀行の土管化」です。

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【銀行デジタル革命】17揺れるメガバンク—やりたくないけどやらざるを得ない、顧客の支持を得たフィンテック企業

序章で触れた通り、欧米、ことにアメリカにおけるフィンテックは、

反銀行的な世論の後押しも受けて、強く銀行と敵対する形、

いわば破壊者として成長してきました。

一方、日本には反銀行の機運はなく、また、フィンテック企業が立ち上がってきた時期と、

金融機関がフィンテックを積極的に取り入れ始めた時期が近かったこともあり、

メガバンクのフィンテックへの初期の対応は、融和的であったといえます。

邦銀にとってのフィンテックのイメージは、革新的なサービスで既存の金融機関の

業務領域を侵食するライバルと言うよりも、

業務を効率化したりコストを削減したりする新しい技術と言うものだったと思われます。

フィンテック企業によって実現されたサービスのほとんどは「利用者目線」に立ち、

使いやすいと評価されています。

一方、法規制に縛られる反面、厳しい競争を強いられることもなく、

顧客ニーズに鈍感になっていた銀行は、それらのサービスに利用者の支持が

集まっていることを銀行の既存のサービスへの不満の表れと受け止めたのでしょう。

フィンテック企業の台頭に対する銀行の最初の反応の1つが、

フィンテックで可能になった新サービスの提供ではなく、

既存の全銀システムの稼働時間拡大であった事は、それを端的に示しています。

2016年の銀行法改正で5%ルールが緩和されたことも、

邦銀とフィンテック企業が融和的であったと言う文脈で理解することができます。

5%ルールの緩和は、フィンテック企業が金融業務へ参入しやすくなる

と言うものではなく、金融機関のフィンテック企業への出資を促すものでした。

金融機関は出資によってフィンテック企業のサービスをグループ内に

取り組むことができるようになります。

フィンテック企業の側にも、銀行の出資を受け入れたり買収されたりすることを、

エグジット(投資した資金を回収する手段)として歓迎する傾向があったのです。

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