日韓の大卒就職事情
「韓国経済新聞」(2015年4月16日付)は、次のように伝えた。
「韓国統計庁が4月15日発表した「2015年3月期3雇用動向」によれば、
3月の大卒失業者が50万1千(失業率4.3%)と調査された。
先月よりも2万人、前年同月と比較すると39,000人増となった。
大卒失業者が50万人を超えたのは1999年6月に関連統計調査を始めて以来初めてだ」
韓国には、学歴別の雇用統計がある。
日本ではこうした学歴区分のこの統計は存在しない。
儒教社会の学歴尊重と言うムードを反映したものだろう。
2015年3月に卒業した大卒失業者が50万1千人もいる。
学舎を出たらすぐに失業者の群れに入る。
一見、失業者が露頭に迷っているイメージだが、必ずしもそういった暗いものではなさそうである。
前述したように「仮就職」して、再度の大企業の入社を目指す「就職浪人」のようである。
「3月の15から29歳の青年失業者が45万5千人で、昨年3月よりも4万3千人増加した。
失業率は10.7%で直前の2月(11.0%)と比較すると多少減ったが、
2000年に新たな失業率指標が導入されて以降3月基準では最高値を記録した。
四半期別でみると20代大卒者の求職難はさらに明確だ。
今年1から3月期の20代大卒者失業率は9.5%で前年同期比1ポイント上昇した。
2000年1から3月期の9.4%を15年ぶりに更新した数字だ」
2015年3月の15から29歳の青年失業者が455,000人に上がっている。
失業率は10.7%にもなっている。
大学卒業時は大企業を目指して「就職浪人」をきめこんでも、
日々の生活を考えればいつまでも「理想の企業」ばかりにこだわってもいられない。
適当に妥協して就職していることを窺わせている。
それが、青年失業者数を大卒時期よりも減らしているのであろう。
それにしても、青年層の失業率は10.7%にも達している。
「理想の企業」を目指した就活が活発であることを示唆している。
就職しながら、失業者に戻って求職票を出す。
そういう「ダブルスタンダード」の人々紛れ込んでいるに違いない。
韓国ではこれほどまでに「大企業願望」が蔓延してるのだ。
「朝鮮日報」(2015年4月17日付)は社説で、 「予算をつぎ込んでも成果が出ない若者の失業問題」を
次のように論じている。
「韓国の大卒失業者数が3月、初めて500,000人を超えた。
3月の大卒出演者数は2012年が378,000人、13年が421,000人、14年が462,000人、
今年が前述の通り500,1000人と急増を続けている。
若者の失業問題が次第に深刻化していることがわかる。
実際に20代大卒者の失業率は1から3月期が9.5%で前年同期比1ポイント悪化し、
これまでで最も高くなった」韓国では、大学での就職指導がないがしろにされていないだろうか。
日本の大学ではきめ細かい「就職指導」が行われている。
どこの大学にも「就職部」が設けられているはずだ。
1980年前後と記憶するが、上智大学の学生を一流企業に絞って就職させる「戦術」を採用したことがある。
これで一躍上智大学の評判を高めて入試の偏差値を早稲田、慶応なみに押し上げた事情がある。
このように、就職問題は大学のレーゾンデートル(存在理由)と深く関わっている。
上智大学の例は特殊だ。
一流企業への就職よりも、本人の適性に合わせた就職指導こそ本当である。
韓国は日本の大学の就職教育を参考にすべきである。
このほか、韓国では儒教の悪弊が今なお残っている。
商工業を軽視すると言う風潮があるのだ。
職人的な仕事を軽蔑するなどである。
これは、朝鮮李朝の科挙試験(公務員試験)において、受験者を両班出身者に限定したと言う差別があった。
これから、高学歴者は大企業に勤めるのが「ノーマル」と言う間違った認識がが今なお残っている。
大学の就職浪人を生み出している背景はこれだろう。
「この10年間、政府は20以上の若者の失業対策を打ち出した。
朴槿恵政権に入ってからも、「若者一人一人に合った雇用対策」「若者海外就職促進策」
「能力中心の社会づくり」などを次々と発表した。
数々の対策を打ち出し予算をつぎ込んでも、成果は出ていない。
若者が就職できないのは、高い大学進学率により若者の理想が高くなっているのに対し、
それに見合った良質の雇用が少ないことが原因だ。
加えて、通常賃金の範囲拡大や定年延長等で企業の負担が大きく増え、
大企業までもが新規採用を減らしている」
「若者が就職できないのは、高い大学進学率により若者理想が高くなっている」と言う指摘は正しいだろうか。
人間、理想の霞を食って生きていけるものではない。
何らかの「定職」を得なければならない。
その際、職業を通して社会に貢献すると言う理想は無いのだろうか。
プロテスタンティズムでは、真面目にビジネスをすることが神の奉仕とされている。
ビジネスでの謹厳実直さが、天国へ行けるかどうか、神によって判断されると言うのだ。
職業には貴賎がない。
キリスト教信者が韓国の29%も占めている。
キリスト教本来の姿に戻るべきだろう。
韓国はあまりにも儒教的な職業観に支配されすぎている。
韓国は、儒教的なキリスト教徒であろう。
定年延長は、韓国のような労働力人口減少の社会で不可避である。
労働力人口減少は、一国経済の衰退原因であって、移民問題が議論されるほどの緊急性を持って語られる時代になっている。
それにもかかわらず、定年延長を忌避するような動きは間違っている。
後は、仕事のポストと給与体系をどうするかにかかっている。
韓国でも、定年延長による労働力確保と新たなビジネスを作る努力が並行して求められている。
高学歴=デスクワークと言う誤解錯覚を打破することだ。
就職浪人を作る社会は、勤労観において間違っている。
その誤った認識は、大学における職業教育によって矯正すべきものであろう。
「若者の失業問題を解決するには、結局は企業の投資による活性化が必要だ。
教育は医療、観光など、雇用創出効果が高く良質な雇用を生み出せるサービス産業を育成することが、
何よりも重要である。
これに向け政府はサービス産業発展基本法や観光振興法等を成立させるため、
より積極的に正解の説得に当たらないばならない。
合わせて、労働市場の改革により企業の採用環境も改善する必要がある」
観光経済の発展性において製造業中心の産業構造では、限界がある。
もっとも、製造業が「イノベーション」に満ちていれば、自然とその中から新たなサービス業が発展するはずである。
韓国製造業は発展性が乏しいのだ。
基幹技術は全て「日本発」である。
日本技術を韓国へ移植しただけである。
独創技術がほとんど存在しない。
これに加えて、儒教独特の労働観が災いしている。
汗水垂らして働く労働を蔑視するのだ。
真面目に働かないと言えば、驚くべきことに、今時「売春」の合法性を韓国憲法裁判所に提訴しているのだ。
売春婦が自分の意思で売春する。
売春が、売春婦の人権に基づく問題であるとの論法である。
こうした時代錯誤の国民性が韓国の歪んだ労働観の象徴と言える
「売春」は悪である。
人間としての尊厳を損ねると言う基本認識は存在しない社会である。
韓国では、プロスタンティズムのような、近代的な勤労観を期待しても無理かもしれない。
こうした精神的な風土において、慰安婦問題で日本を追求している。
その矛盾に気がつかない気づかないだろうか。
話が逸れたが、この記事では「教育や医療、観光など、雇用創出効果が高く良質な雇用を
生み出せるサービス産業を育成することが、何よりも重要である」としている。
教育でも「就職浪人」を出すような教育が素晴らしいものとは思えない。
医療では美容整形を受けた患者に深刻な後遺症を与えて問題になっている。
中国からの美容整形希望女性に対して、医師免許を持たない「偽医師」による被害が激増しているのだ。
観光はどうか。
中国から訪韓旅行者が増えている。
一方、「リピーター」への可能性は極めて低い。
そういう調査結果が出てきた。