「中央日報」(2015年3月18日付)はコラム「道に迷った韓国経済」を掲載した。
筆者は、キムジョンス論説員である。
「最近、サイギョンカン経済副首相は再び地図のない道に出た。
その副首相は経済団体長を呼んで賃金引き上げを要請し、
中小企業の賃金引き上げ余力を高めるために納品単価も上げるよう求めた。
ここで党、政府、青瓦台(青瓦台、大統領府)は最低賃金引き上げが必要と言うことに合意したと言う。
大企業が自らの従業員の賃金も上げ、下請け企業が最低賃金を上げられるよう納品単価も上げると言う話だ。
内需拡大のためには家計消費が増えなければならず、消費を増やすには
家計が使うお金がなければならないが、これが不如意のため、ひとまず無理にでも
賃金を上げ消費を促進してみようと言うことだ。いわゆる「所得主導成長論」だ」
韓国政府は「アベノミクス」の成功を見て企業に賃上げを迫っている。
確かに、賃上げは家計所得を増やすが、その裏には生産性上昇が条件になる。
その生産性問題を抜きにして、ただ賃上げを迫る構図は間違いである。
中国は、所得再分配政策が既得権益層の反対で不可能な結果、賃金引き上げだけを行い失敗した。
この中国の失敗と同じ轍を踏んでいる。
日本は、法人税引き下げ財源の一環として外形課税を引き上げる。
その際、賃上げを図る企業には外形課税の引き上げを免除すると言う「特典」を与えた。
「アメ」を用意したのだ。
さらに重要なのは、株式市場の「活性化」を行う。
「コーポレートガバナンス」(企業統治)強化であり、株主利益を保護する形で株価の上昇を狙っている。
これは一見、資産家擁護に映るがそうでは無い。
日本の家計が預貯金主体から分散して、株式での運用へと1部転換させる目的である。
同時に、年金財源の株式の比率の引き上げは、年金財政自体の好転に寄与する。
国民の貴重な年金財源を国際的な運用水準へ引き上げることで、積極的な運用を鮮明にしている。
日本国民がこの広く認識すれば、株式市場への「親近感」が少しは出てくるであろう。
韓国が、本当に「アベノミクス」を参考にする意思であれば、
日本のような総合的な対策をとらなければならない。
韓国経済が、小手先の対策で立ち直る期待は持てないのだ。
いずれ、日本と同様な経済環境(人口動態の悪化)に落ち込むことが不可避である以上、
日本と政治的な対立をする無益を知るべきである。
「反日」をやっても経済的な利益にならないのだ。
「この理論(所得主導性長論)は、論理的にその因果関係が明確に立証されておらず、
果たして日米の処方が韓国の現実にも通じるかは疑問だ。
所得主導成長論は内的整合性と外的整合性とも不十分な主張に過ぎない。
まず、すでに高賃金を受けている大企業従業員の賃金を生産性と関係なく引き上げるのは
正しくないだけでなく、少数の大企業従事者に対する賃金引き上げが消費促進に
どれだけ寄与できるか疑わしい」
「最低賃金の引き上げも必ずしも消費増大にはつながらないと言う研究結果が多い。
無理に最低賃金を引き上げる場合、限界企業が雇用する低賃金労働者の雇用を減らすだけの
可能性が大きいためだ。
万一最低賃金引き上げに伴う雇用減少効果が総所得を増やせない場合、
全体の消費支出余力が返って減る公算が大きい。
最低賃金労働者を雇用する零細企業が、大企業と取引をする下請け企業である可能性がほとんどない。
こう言う点を考慮すれば、納品単価引き上げが最低賃金引き上げ余力を増やすだろうと
言う主張もとても単純に見える」韓国経済の実態が、財閥企業=大企業の寡占体制にある事は疑いない。
大企業と零細企業の格差は「天と地」ほどの差がある。
大企業の労組は強い賃金交渉力で、生産性以上の賃上げを獲得してきた。
前述の通り、2010年以降、韓国企業の格付けが低下している背景には、
こうした過大賃上げが企業収益力を奪っている面もあろう。
中小零細企業での賃上げが、支払い能力(生産性向上)を上回れば、
企業倒産を招く「負の連鎖」が起こり得る。
日本では、街工場でも優れた技術を持っており、大企業との取引でも珍しくない。
トヨタ自動車が、2015年は下請けの部品単価引き下げ要求を自粛しており、
賃金引き上げに回すように配慮している。
韓国で、このようなケースがあるのか。
この記事では、「最低賃金労働者を雇用する零細企業が、
大企業と取引する下請け企業である可能性がほとんどない」としている。
韓国経済は、大企業と中小企業は、別々の経済圏を形成して「断裂」状態にある。
それを改めて、この記事から強く認識させられるのだ。
「根本的には家計所得の増大は内需活性化をつうじた成長の結果であり、
成長を導く起爆剤にはなれないと言う事実だ。
これはまるで馬車の馬の前に結び馬車に馬を引っ張れと言うのと変わらない。
無理な賃金引き上げは中長期的に企業の競争力を落とし、
むしろ雇用減少と家計所得減少を呼び起こすだけだ。
大企業はお金が多いだろうからそのお金を家計に分けてくれ。
そうすれば消費が増えるだろう。
こういう単純な論理で経済回復を期待するならば、あまりにも純真な発想だ」
ここでの指摘は、完全に正しいと思う。
ただ、賃上げを計ればそれで内需が活性化すると言う図式は成立しない。
その裏には、生産性の向上が必要である。
先に私が指摘したのに、中国経済が強引な賃上げで企業の活力を失っている現実を知らなければならない。
韓国は、中国と同じ間違った道を道を選ぼうとしている。
生産性向上は銀行がリスクを取って融資することに尽きる。
単なる利ざや確保の消極的な貸付政策を脱することである。
その点で、韓国金融業界は沈滞の極みにある。
家計の融資を増やすのでなく、中小零細企業への融資を増やして、経営相談にも応じると言う
「前垂れ商法」が必要なのだ。
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