「朝鮮日報」(2015年7月10日付)は、社説で「中国発ショック、韓国政府は緊急対策を」と
主張している。
「中国経済は過剰投資と負債の問題なので、昨年から明らかに鈍化傾向示している。
一方、政府の株価上昇政策を追い風に株価指数は昨年6月からの1年間で150%も上昇した。
その過程で数千万人の個人投資家が新たに株式市場に参加し、
金融業者から資金を借り入れてまで投資を行う加熱状況を示した。
その後遺症が今現れている。
最大の問題は政府がどんな措置を講じても投資心理が回復していないことだ。
政策に対する強い不信感が根底にある。
このため、株価暴落とその余震が長期化する可能性が高い。
株価下落が続けば、中国経済の後退速度が加速することになる。
韓国、日本など中国の主な貿易相手国と現在の輸出国が打撃を受け、世界経済も揺らぐ。
ギリシャの問題よりもはるかに深刻化し得る中国発の経済不安が目の前の現実として迫っている」
冒頭に取り上げた、関志雄氏の楽観的な中国経済論とは異なった分析が出ている。
中国最大の問題は、「中国政府がどんな措置を講じても投資心理が回復しないことだ」としている。
この背後の事情には触れていないが、過剰債務=過剰設備という大きな重責が阻んでいる。
これぞ、不動産バブル崩壊の典型的な現象である。
不思議なことに、世間では「バブル」と言う言葉を定義づけもしないで
簡単に使う代わりに、ここぞという時に「バブル」概念を経済現象に当てはめて議論することもない。
一過性のうわすべりの話だから、経済現象の奥に潜んでいる「根因」を見過ごし見過ごすのだ。
この記事でもそれがあてはまる。
政府がどんな措置を講じても、投資心理が回復しない理由は、
「過剰債務=過剰設備」にへ行き着くはずであろう。
それが見過ごされているから、経済議論が深まらないのだ。
中国経済の問題もここにある。
正確に「不動産バブルが崩壊した」との認識に立てば、対策もおのずと定まるに違いない。
それを欠いているから、右往左往して時間を空費している。
「不動産バブル」が原因である以上、不良債権処理を真っ先に行う必要がある。
現在の中国政府にその兆候は見られない。
むしろ、株価を煽って
株式市場から資金調達する「迂回作戦」に出ているのだ。
「誤審」も甚だしい。
記事では、「政策に対する強い不信感が根底にある。
そこのため、株価暴落とその余震が長期化する可能性が高い」としている。
ここは、私の解釈に従えば、「不動産バブル」崩壊に加えて「株式バブル崩壊」が重なったのだ。
今後の中国経済の回復について「平成バブル」崩壊後の日本経済の過程を思い起こせば、
おおよその見当がつく。
つまり、中国経済の回復には10年単位の時間を必要とするのだ。
日本経済には、「失われた20年」との形容詞がついて回った。
実はこの形容詞こそ、バブル経済が崩壊した場合、それだけの時間をかけないと回復しないと言う
「本質」をついた言葉でもある。
バブル崩壊とはその後一国経済の根幹を破壊し尽くす「業病」である。
この認識をしっかり持たないと、中国経済の今後の展望は難しい。
日中のバブルの共通因子は次の点にある。
(1)生産年齢人口比率の低下、不動産バブル崩壊時期の一致
(2)ライバル国経済を凌駕したという錯覚(実現)の存在平成バブル崩壊は1990年である。
平成バブル崩壊は1990年である。
生産年齢人口比率のピークでもあった。
生産年齢人口比率のピーク前は、この直前は、どこの国でも住宅需要が顕著になるパターンだ。
さらに、米国経済をGDPで追い抜ける。
こういう大いなる錯覚に陥っていた。
太平洋戦争で敗れた相手の米国経済を抜けされる。
この思い違いが、日本全体を大胆な行動に駆り立てた。
日本企業がニューヨークのマンハッタンで著名ビルを買収する行為(その後売却)は、
日本企業の驕り高ぶった感情の一端を表している。
日本経済が一時的に米国に接近できた根本的理由は、生産年齢人口比率がピークを迎えると言う
「人口ボーナス」現象がもたらした、一度限りの現象である。
日本のバブルでは主役が企業である。
中国のバブルの崩壊は2010年以降である。
2010年が生産年齢人口比率のピークであった。
それ以前、不動産バブルは大きな山を描き、日本以上の規模に達していた。
インフラ不足を補うという事情も手伝って、固定資産投資が盛り上がった。
何より重要なのは「2010年」、 GDPで日本を抜き去ったという事実がもたらした異常なまでの
「自信」である。
これは、とてつもない経済の
膨張をもたらした。
アヘン戦争(1840から1842年)以来、先進国の膝下に屈した「中華帝国」が完全復活した。
そういう錯覚を生み出したのだ。
そのはしゃいだ気分の延長で、中国政府は「不可能なことはない」と言う錯覚を抱き、
空前のバブル(不動産と株式)を産み落とした。
中国バブルの主役は政府である。
この差は、バブルの規模に決定的な差をもたらしている。
中国が国家ぐるみのバブルである以上、空前絶後に達している。
こうした認識を深めれば、中国経済の復活までには日本を上回る時間を必要とする。
こういう仮定をおかざるを得まい。
卑近な礼を持ち出せば、次のようにもう言える。
「中国は、行司たる役割をすべき政府が、回しを締めて自ら相撲をとってしまった」のである。
行司がいない以上、景気についての正常な判断が下せないのだ。
しかも、市場機能は麻痺している。
二重の意味で「行司役」が存在しなかった。
韓国は、こういう「暴走」国家への経済的な依存を深めている。
韓国の経済的な損失がどれだけ増えても、自らが選択した結果である。
甘受すべきであろう。
自らの情勢判断の誤りを嘆くしかないのだ。
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