「中央日報」(2015年7月15日付)は、
コラム「韓国の低成長脱出に向けた本当の決め手」を掲載した。
筆者は、カンボンギュン元財政経済部長官(注:大臣)である。
「韓国経済の低成長危機意識は、短期的景気低迷に対する懸念に劣らず、
今後20から30年先を見据えた長期的成長見通しが非常に悲観的と言う深刻性にある。
KDI (韓国開発研究院)は韓国経済の潜在成長率が、
2010年代の3%水準から今後10年単位で1ポイントずつ低くなり、
2035年には1.5%まで下落すると予想している。
潜在成長率を低下させる最大の要因は、少子化の影響である。
2020年から生産年齢人口が減少するのだ」韓国経済も、最大の課題は少子高齢化にある。
日本以上の少子化が進んでいる。
儒教社会の余波で、親は子供の結婚まで経済的な面倒を見る習慣が残る。
古風な親たちは、この習慣に縛られて老後資金もままならない事態に追い込まれている。
OECDでは、自殺率が一位と言う面目ない記録を残すほどであり、高齢者の自殺率が高い。
これが、悪循環をなして非婚化やいっそうの少子化に拍車をかけている。
今後の潜在成長率は少子化の影響によって、10年間で1ポイントの低下が予想されるとしている。
こうした人口動態の変化はいかんともしがたいが、受け身では問題が解決不可能なままとなる。
親が、成人した子供の面倒(結婚)まで見る事はおかしな話だ。
成人したら、子供の経済的な独立を促す。
政府が就職問題の改革を進めることも必要である。
これには、財閥制度の廃止といった経済民主化が欠かせない。
このように、韓国の少子化は、時代遅れの経済制度の存在と無関係でないのだ。
韓国経済の将来性を大きく左右するのは、中国経済の動向である。
米国は、中国経済がリスキーな存在であることを匂わせている。
FRB(連邦準備制度理事会)議長も発言している。
「没落」必須の中国経済と深い関わりを持つことが、韓国経済にどれだけの負の連鎖をもたらすか。
韓国には、その認識が希薄である。
中韓FTA (自由貿易協定)が、韓国経済の成長を支えてくれると見ているならば、それは誤解である。
韓国経済の生きる道は、TPP (環太平洋経済連携協定)への参加だろうが、相変わらず「反日ポーズ」をとっていることが障害になる。
TPPと言う同じ経済圏に入りながら、中国と一緒に「反日」をやられたのでは、日本の立場がない。
そこは、しっかりとけじめをつけさせることだ。
米国が韓国外交に不安を覚えるのはこれだけではない。
中国の南シナ海での傍若無人な振る舞いに対し「無言」を貫いていることだ。
米韓同盟の立場から、一言あってしかるべきである。
米国は、こう韓国に迫っているが「沈黙」を守っている。
中国に気兼ねしている結果である。
中国は、「泥舟経済」である。
私が一貫してこう呼んでいる理由は、経済に耐久性がないことに尽きる。
それにもかかわらず、中国を「過大評価して」一蓮托生のようなかんじを抱いているから不思議なのだ。
「事大主義」から抜け切れないのだろう。
中国の「衛星国」になる決心ならば、もはや言うべき言葉もない。
TPP参加を取りやめるべきだろう。
「労働力不足の問題は、解決策が全くないわけではない。
現在、10%を超える成年失業者、子供の養育を終えた専業主婦、
そして55から65歳の健康なリタイヤ世代などは、産業現場に適応できる就職教育訓練を受ける可能性がある。
つまり、労働条件さえ合えば働く意欲を持っている人々だ。
この就業希望者のための職業教育訓練は政府が当然すべき責務で、
企業もインターシップを提供して積極的に協力しなければならない。
すでに韓国にやってきて技術を習得した外国労働者や、
コリアンドリームを夢見る東南アジアの青年たちに永住権や国籍を与える
果敢な移民政策も講じなければならない」韓国経済を眺めて不可解なのは、
少子高齢化の進行で労働力人口不足が起こっているのに、具体策を取ろうとしない「怠慢」にある。
問題は、働く意欲と能力を持ちながら労働できない人々がいることである。
現在の労働環境が、労働参加を阻害しているから起こる問題である。
定年延長は、ようやく60歳にのびたばかりだ。
成年失業者にとって定年延長が「職場を奪う」として反対してきた。
ならば、成年失業者はなぜ増えるのか。
大企業への就職を狙う「就職浪人」が発生するからだ。
「就職浪人」を出さずに大学卒業と同時に就職させるには、
「事大主義」の一掃が前提になる「大企業に勤めることが格好良い」。
こういう意識が極めて強いのだ。
「就職浪人」を減らすには、賃金格差の是正と言う点からも、
財閥制度と言う寡占経済体制の廃止が前提になる。
ここまで話を詰めてくると、最後は経済体制の一新につながる。
問題解決の鍵は政治に帰着する。
これについては、次のパラグラフが取り上げている。
「潜在成長率を左右するまた別の重要変数は、生産性の向上である。
すべての経済全体が経済主体が、新たな技術進歩に適応しようとする革新努力を強化すれば、
いくらでも技術進歩の速度を高めることができる。
韓国は、政界と政府が企業の努力革新を難しくさせている。
そのため国の運営体制を再編する政治改革も、先送りするばかりであってはならない」
韓国における経済問題の最終的な解決では、政治が機能回復しなければダメである。
その政治が一筋縄でいかないのだ。
大統領府と国会が対立する。
国会では与野党がむなしい論戦を繰り返す。
現在の政治状況が、まさにこれである。
大統領が与党と対立したのである。
大統領の権限を縛ると言う国会法の改正で与野党が珍しく合意したところ、
朴大統領から「ノー」が突き付けられた与党責任者が辞意を表明して一見落着となった。
経済民主化問題が取り上げられた場合、韓国の政治状況は麻痺するだろう。
それはそれほど、利害関係が入り組んでおり、財閥側の制度改革阻止運動が激しくなるに違いない。
韓国とは、こういう国である。
正論が通りにくいのだ。
「反日発言」を見れば一目瞭然である。
感情論の域を超えた「正論」が、なかなか聞こえてこないのだ。
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