米朝首脳会談の決裂後、北朝鮮が非核化交渉の中断やミサイル発射実験凍結の再考を示唆した。
北朝鮮のこうした戦略に展望はあるのか。
2019年3月14日、北朝鮮の国際ウェブサイトは非核化に取り組む姿勢を強調するとともに、
ハノイ階段での米国側の非核化要求は受けられ受け入れられないと主張した。
一方で、非核化に向けた段階的な措置に応じて制裁を1部解除すべきだととも訴えた。
翌15日、ロシア国営タス通信によると、北朝鮮の〇〇◯外務次官は平壌で記者会見し、
やはり米側の非核化要求は受けられ受け入れられないと米朝交渉の中断を警告した。
北朝鮮では、北西部にある東倉里でミサイル施設復旧の動きも表面化している。
東倉里には2018年9月に金委員長が廃棄を約束した施設だ。
ここで2019年2月末の米朝首脳会談をおさらいしておこう。
金委員長は、寧辺の核施設の廃棄と引き換えに、11件の国連制裁のうち5件の解除を求めた。
しかし、トランプ大統領はこれを拒否した。
同時に制裁の完全な解除に応じる変わりに全面的な非核に取り組むよう求めたが、
今度は金委員長がそれに応じなかった。
これは次のように解釈できる。
①現状(ミサイル発射、核実験なし、制裁)、
② 1部非核化、1部制裁解除、
③完全非核化、完全制裁解除、
の3つの状態が考えられるが、トランプ大統領は③ ① ②の順に重視した。
対する金委員長は②が最優先だったのだろう。
となると、交渉結果が①になる。
この状態はトランプ大統領に有利だ。
①はミサイル発射、核実験なしでありながら、経済制裁は継続しているため、
このまま時間が経つほど北朝鮮が追い込まれていく。
そうした状況を打開するため、北朝鮮としては①を変えて、
トランプ大統領に①より②の方がいいと思わせる必要が出てくる。
そこで、非核化交渉の中断やミサイル発射実験凍結の再考を示唆したのだろう。
しかし、これでは2018年6月のシンガポールでの米朝首脳会談の半年前、
米国が軍事オプションを示唆していた2017年末の時点に戻りかねない。
これまでの流れとは全く逆方向のため米朝の信頼関係が一気に崩れて当時より状況が悪くなり、
一触即発の緊張関係が生まれる恐れもある。
さらに非核化への動きを引き戻すものだから、国連の経済制裁も現状より強化されることが不可避だろう。
北朝鮮による①現状の変更に伴い、米国は国連による経済制裁の再強化や
軍事オプションをちらつかせてくるに違いない。
そうなると、北朝鮮内部の崩壊や暴発と言う恐ろしい展開になる可能性もある。
そうなる前に、果たして後ろ盾の中国や仲介役の韓国が米国と北朝鮮に対してどう出てくるのか。
北朝鮮は米国から圧力がかかると日本に擦り寄ってくるため、日本へのアプローチもあり得る。
企画が膠着する中で、安倍首相が存在感を発揮できれば、拉致問題が進展する可能性もなくは無い。
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