ここからは、米中関係について見ていきたい。
トランプ大統領との個人的に強固な関係を持つ安倍首相とともに、
アジアの安全保障上のポイントとなるのが、ペンス副大統領の存在だ。
大統領と同じく選挙で選ばれたペンス副大統領については、大統領といえども解任できない。
そんなペンス副大統領は、中国封じ込めについてトランプ大統領以上に強固な考え方を持っている。
だから中国が朝鮮半島で覇権を握るような状況になるのは許さない。
2019年5月5日、日本ではゴールデンウィーク期間中、
トランプ大統領がTwitterで対中関税の引き上げを表明した。
米ブルームバーグ通信によると、ライトハイザー通商代表が北京で協議した際、
中国側が外国企業への技術移転強要を是正する法整備の約束を撤回したからだと言う。
米中貿易戦争は、貿易赤字を減らすと言う単なる経済問題ではない。
背景には米国の軍事覇権を保つために技術的優位性を維持すると言う戦略がある。
だから、米国の技術を盗み取るような中国の行為は絶対許さないと言う
米国側の強い意志に基づいている。
ここで言う「中国の行為」とは、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、
国有企業によって作り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行を指す。
なぜそれが明確にわかるかと言えば、中国とは名指しことされていないものの、
2018年9月の日米共同声明にもこのことが盛り込まれているからだ。
これらの文言は、米国の交渉担当者が対中戦略として語ってきたもの。
しかも、公式の外交文書にまで登場していると言うわけだ。
このうち強制的技術移転は、米国の対中戦略の大きな柱である。
これを中国が反故にすればトランプ大統領が許すはずがない。
あのタイミングでトランプ大統領がツイートしたのは、米中の閣僚級会談への牽制と言う側面があった。
そんな中、中国の〇〇副首相率いる交渉団が訪米し5月10日まで協議を行った。
その交渉で、外国企業に対する強制的な技術移転の法整備を再び中国が約束する事態になれば、
25%の追加関税は撤回されていたかもしれない。
それでも米中貿易戦争の抜本的な解決にはかなりの時間を要するだろう。
米中貿易戦争が単なる経済問題ではなく、米中の覇権争いと言う今回の展開は以前から読めていた。
それでも世界の市場はトランプ大統領のツイートに驚き、予断を許さない展開になった。
安倍首相は5月6日、トランプ大統領と電話会談をした。
その内容はミサイルを含めた飛翔体を発射した北朝鮮問題が中心だったとみられるが、
トランプ大統領のツイートの内容についても聞いたはずだ。
そこには「日米貿易交渉を急ぎたい」と言うトランプ大統領の思惑があったかもしれない。
トランプ大統領としては、再選を狙う2020年の米大統領選に間に合うよう、
各国との貿易交渉で成果を出したいと言う裏事情があるのだ。
そこでトランプ大統領は、5月にも日米貿易交渉を妥結するように頼んだ。
それに対し安倍首相は、7月の参院選前では政治的に無理だから秋の国会で法案を出し、
米大統領選に間に合わせると言うスケジュールを提示した。
これはトランプ大統領の同意を得たようである。
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