【米中もし戦わば】解説-02

ハッキングによって先進諸国から軍事技術の主要部分を盗み、

そのコピーによって高性能な国産兵器を作り上げる。

黄海、東シナ海、尖閣諸島、南シナ海を内側に含む第一列島線への進出を、

本書に書かれてあるように、移動式で精密攻撃が可能な弾道・巡航ミサイル、

潜水艦などの強化によって成し遂げつつある中国に対して、

自衛隊はどのような対応をとってきているのだろうか?冒頭で書いたように、

もともと自衛隊はそれによる進行を念頭に置いていた。

しかし、冷戦の崩壊と、経済成長に伴う中国の海洋進出が顕著になった2000年代以降、

自衛隊の体制は北から南へと重点をシフトしてきている。

福岡の築城基地に所属していた主力戦闘機F-15、約20機からなる飛行隊を

沖縄に移転したのはその一つである。

これは、東シナ海上空における中国軍機の活動が活発化していることに伴って、

南西区域におけるスクランブル(緊急発進)の回数増大に対応するためである。

また、陸上自衛隊は与那国島に沿岸監視部隊を設立しており、

今後は南西諸島への地対艦ミサイル部隊の配置が検討されている。

佐世保の西方普通科連隊を中心とした水両用部隊の整備も進んでおり、

陸自は離島奪回能力を向上させつつある。

海上自衛隊は、保有する潜水艦を16隻から2隻と増加させつつある。

より多くの潜水艦を南西海域で運用することにより、中国の潜水艦や水上艦艇等に関する

情報収集や偵察監視能力が向上することが期待される。

また有事においては、南西海域での海上優勢を確保する上でこれらの潜水艦が

重要な役割を担うことになろう。

海上自衛隊は、高性能のレーダーを装備し、多数の敵戦闘機や対艦ミサイルなどに

同時に対応できる高い防空能力を有しているイージス艦の改修も進めている。

特に弾道ミサイル防衛能力の強化が図られており、日本本土に対する弾道ミサイル攻撃の

対処能力の向上につながるだろう。

拡張する中国に対して、米国はアジア太平洋地域における同盟国の防衛協力を強化している。

その結果、日米の防衛協力はこの数年で顕著に進展している。

例えば、東京都の府中にあった自衛隊の航空総隊司令部を米空軍の司令部がある横田に、

2012年に移転したのもその一つだ。 

陸上自衛隊で有事における初動対応を担うことになる中央即応集団も、その司令部を、

在日米軍陸軍司令部がある座間キャンプに移転した。

米軍と自衛隊が、主要な部隊の司令部を同じ場所に置くことで、

作戦時における相互の連携強化が目指されている。

本書は、米軍が日本や韓国などアジア地域で運用する基地が固定されているために、

中国のミサイル攻撃に脆弱である旨を指摘している。

これは鋭い指摘で、パックスリーなどの地対空ミサイルを配備し、迎撃しても、

異なる方向から多数のミサイルが飛来した場合、その全てを打ち落とす事は難しい。

したがって、そうしたミサイルが着弾しても稼働できるよう、

主要な施設や装備を非常に厚いコンクリートで保護することや、

破壊された滑走路などの施設を早急に普及させる能力の向上といった、

「抗たん化」の推進が必要になっている。 

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