最終更新日 2020年10月24日土曜日 11:09:35
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【米中もし戦わば】037-04、経済的相互依存が返って紛争をエスカレートさせることもある

新旧の歴史的事実に鑑みて言える事は、「経済的相互依存は両刃の剣だ」と

言うことである。

国安全保障上不可欠ではない物質は双方がバランスよく輸出入している、

といった特定の条件下では、経済的相互依存は平和維持に役立つだろう。

この場合は、貿易による利益が侵略のコストを上回っている。

 だが、どちらか一方が国家安全保障上不可欠な物資の輸入に過度に依存しているような

場合には、経済的相互依存が返って紛争をエスカレートさせる方向に働く可能性がある。

したがって、経済的相互依存に頼ってアジアの平和を維持しようとする態度は、

歴史や現状の冷静な分析に基づく戦略と言うよりも希望的観測のように思われる。

 プリンストン大学のアーロン・フリードバーグは言う。

 「日中関係を見てみると良い。貿易でも投資でも、両国は極めて緊密な結びついている。

 にもかかわらず、中国は日本との衝突のリスクを高める行動を取り続けている」

しかも、戦争を誘発する要因は利害と言う合理的なものだけではない。

 アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラは、これについて次のように述べている。

 私としては、経済的相互依存によって合理的な利害分析が生まれると思いたい。

 戦争になれば相互依存関係は当然破壊され、双方が莫大な経済的損失を被るのだから、

合理的な利害分析は相互に自己抑制効果をもたらすはずだ。

 だが、歴史を振り返れば、戦争勃発には恐怖や名誉といった、損得勘定以外の要因も

絡んでいることがわかる。

国家が重要な国益を守るために武力を用いる必要があるかどうかを決定する際、

主な推進力となるのがこの2つである。

だから、このような漠然とした要因も考えに入れるなら、

米中間で戦争が起きる可能性を除外しない方が賢明だと思われる。

 これに補足して、フリードマンが次のように述べている。

 貿易は安定と平和の源だとこのこれまで長い間信じられてきたし、

大局的な意味ではこれは真実だと思う。

 歴史を振り返ってみても、概してこれは正しい。

 だが残念なことにこれは保証ではない、密接な通商関係にある国同士が戦略的・政治的に

良好な関係にあるとは限らない。

 そして、歴史上、密接な通商関係にある国同士が戦った例もあるのだ。 

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【米中もし戦わば】037-03、中国への経済制裁で最も打撃を受けるのは米国自身

ごく新しい事例としては、クリミアやウクライナ、さらに東欧全体におけるロシアの

拡張主義的行動がある。

ロシアと言う独裁的国家はヨーロッパとの貿易及び西側(特にアメリカ)の金融システムに

大きく依存している。

だが、この相互依存関係は、ソ連崩壊後の失われた領土を取り戻そうとする

ロシアの度重なる試みを阻止するためにはほとんど役に立っていない。

ロシアと中国との明白な類似点は、言うまでもなく、ロシアと同じように中国も、

歴史的な誤り(と中国が感じているもの)を軍事力で正そうとするかもしれないと言うことである。

 だが、最も興味深いのは(中国がそれを非常に注意深く見守ってきた)。

 軍隊を派遣してウクライナを支援したりクリミアからロシアを追い出したりする代わりに、

アメリカもヨーロッパの同盟側ももっぱら経済制裁によって

この宣戦布告なき戦争に対抗する道を選んだ。

 だが、ここからが難しいところではある。

 議論の余地はあるものの、経済制裁がロシアの侵略行為に若干の歯止めをかけたとすれば、

それは、アメリカとの同盟諸国の対ロシア貿易への依存度が逆方向の依存度に比べて

はるかに低いおかげである。

 だが、中国が尖閣諸島や台湾やセカンド・トーマス礁やアルナーチャル・プラデーシュを

武力で占領すると言う挙に出た場合、アメリカとアジア同盟諸国による経済制裁は

おそらく大失敗に終わるだろう。

それはなぜか。

 それは、ロシアの場合とはは異なり、そのような制裁体制は、

それが中国経済に与えるのと同等かそれ以上のダメージを

アメリカ人への経済に与えるからである。

さらに言えば、そういうわけで対中経済制裁は試みさえしないだろう。

 「米中戦争は起きるか」と言う文脈から言えば、これは少なくとも中国に関しては、

経済・金融制裁と言う非軍事的ツールはほとんど検討の対象外と言うことを意味している。

 中国には、アメリカ陣営が中国経済に与えられるのと同等の損害はアメリカ陣営に対して

与える力があるからである。

経済制裁と言う非軍事的ツールが平和維持に使えない以上、中国が事を起こした場合、

当然のことながら軍事衝突の可能性は高くなると言わざるを得ない。 

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【米中もし戦わば】037-01、第37章貿易の拡大で戦争は防げるのか?

問題

ある国が貿易に大きく依存している場合、その貿易相手国と戦争になる可能性は

どうなるかを選べ。

①低くなる

②高くなる

③高くなるか低くなるかは、取引されているものによる。

少なくとも中国に関して言えば、現在の一般的見解は1の「低くなる」だろう。

これは、「商業による平和」を信奉し、貿易が平和をもたらすとする立場である。

金融業界も製造業界も、国際関係論の「リベラリズム」も、「中国との戦争は

ほとんどありえない。 

双方にとって、貿易を失うことによる損失の方が戦争から得られるどんな利益よりも

はるかに大きいのだから」と声高に主張し続けている。

その昔、フランスの政治学者モンテスキューもこう述べている。

平和は貿易の自然な結果である。

互いに意見の異なる二カ国が、貿易を通じて相互に依存するようになる。

というのも、一方は買うことに関心があり、他方は得ることに関心があれば、

互いの必要の上に2カ国の結びつきが築かれることになるからである。 

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【米中もし戦わば】037-02、第一次大戦前のドイツと現在の中国はどこが似ているか?

もちろん、国際関係論の「リアリズム」派に属する人々は、

「貿易は常に、侵略を防ぐ切り札になる」と言う見解を即座に却下する。

自らの見解を裏付ける例として、彼らは、史上最も明白なパックス・メルカトリアの

失敗例である第一次大戦を、史上最も見当はずれに終わった予測とともに引き合いに出す。

 第一次大戦勃発のわずか数ヶ月前、リベラリズム派の重鎮、スタンフォード大学総長

デビット・スター・ジョーダンは厳かにこう予測した。

 いつも今にも来そうで、いつも差し迫っていて、そのくせ一向に来ない、

ヨーロッパの大戦についてなんと言えば良いだろうか。

そんなものは決して来ない、と申し上げる。

人知の及ぶ範囲でいえば、そんな事はありえない。

 言うまでもなく、それから数ヶ月もたたない内に、その「ありえない」戦争は

現実の戦争となり、世界経済を壊滅させ、数百万の兵士とさらに数百万の民間人の命を奪った。

パックス・メルカトリアがこの場合になぜ上手くいかなかったかを説明する際

リアリズム派は経済的相互依存の平和維持能力に関してリベラリズム派よりも

ずっと複雑な見解を展開する。

ある国が食料、エネルギー、その他の原料用天然資源といった国家安全保障上

不可欠な物資を貿易に大きく依存している場合、

その国が戦争を引き起こす可能性は実際には高くなるかもしれないとリアリズム派は言う。

 彼らが第一次大戦を引き合いに出す理由は、まさにこの有害な相互依存が

そこに見られるからであり、第一次大戦のドイツ帝国と現代の中国には

いくつかの興味深い類似点が見られるからである。

第一の類似点は、ドイツ帝国も現在の中国の「マラッカ・ジレンマ」と

同じようなものを抱えていたことである。

第一次大戦前の数十年間に急速に発展したドイツは、石油の輸入への依存度を次第に高めていた。

そのため、大英帝国の帝政ロシア及び帝国主義的アメリカと共謀してドイツを

中東及びその石油資源から締め出そうとしているのを見て、ドイツは警戒感と怒りを募らせた。

現在これと似たような反中国的な謀略の存在を中国は感じているかにどうかについて、

こんな気がかりな事実がある。

胡錦濤国家主席が国家主席が2003年の演説で「マラッカ・ジレンマ」に初めて言及した際、

「(特定の大国)がマラッカ海峡を通過する石油の流れを

コントロールしようとするかもしれない」と警告しているのである。

第二の類似点は、第一次大戦前のドイツ帝国と同様の現在の中国も、

その急成長する産業基盤を支えるために外国から天然資源の輸入に

大きく依存していることである。

リアリズム派のデール・コープランドは、「保護主義的なフランスがドイツ帝国への

鉄鉱石の輸出を制限するとすぐさま、ドイツ産業界は公然と、

鉄鉱石を産出するフランス・ロレーヌ地方を確保する必要について語り始めた。

彼らにとって、戦争はビジネス上の問題だった。」と述べている。

 中国の国営企業がこれと同じように外国の資源を戦争によって「確保」しようと

しているかもしれないと考える事は、少なくとも中国の拡張主義の合理的解釈として

可能である(第28章で述べた、中国政府の失地回復政策を後押ししていると思われる

「派閥の弊害」を思い出してほしい)東シナ海と南シナ海の紛争には必ず中国側の

不法な天然資源採掘が絡んでいるし、中国石油総公司といった

国営企業の石油掘削装置が中国軍の艦隊に守られていることも珍しくない。

派手さは無いものの、第3の類似点が最も興味深いかもしれない。

第3の類似点とは、ドイツ帝国も現在の中国も海洋封鎖を恐れていることである。

第一次大戦に至るまでの20年間、ドイツの食糧輸入は急激な人口増加をも上回る速さで

増加していた。

その結果、コープランドによれば、「相手が兵糧攻めに持ち込もうとして

輸入量を封鎖してくるのでは、と言う双方の恐怖を反映」して、独英間で軍拡競争が起きた。

これはドイツ側の被害妄想ではなかった。

コープランドはこう述べている。

「イギリスのドイツ封鎖計画は第一次大戦に至る最後の10年間にかなり進んでいたため、

「必要品を外国からの輸入に頼るドイツは、経済封鎖がこのまま進めば

自国産業が窒息させられてしまうと恐れた」。

もちろん、ドイツ帝国の反応と現代中国の反応が同じかどうかわからない。

当時は当時、現在は現在である。

だが、現代の封鎖支持者の説く「経済的絞殺」と当時のドイツが味わった恐怖を比較してみると、

現在の中国も同様の恐怖を覚えるのはむしろ当然だと思われる。

こうした歴史上の類似点は、「第一次大戦前のドイツは現在の中国のような、

国家安全保障上不可欠な物質を輸入に頼っている国は

攻撃的になる可能性があると言うリアリズム派の結論を明確に裏付けている。 

「経済的相互依存は平和を絶対的に保障するものではない」ことを示す現代史の事例は、

このほかにもたくさんある。

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【米中もし戦わば】036-03、米国による経済的関与が中国の軍事力の源泉になっている

「経済的には民主化と平和を促進する」と言う主張の論拠を知るには、

「USA*エンゲージ」のウェブサイトを見るのが1番の近道である。

USA*エンゲージとは、「農業団体とメーカーの幅広い連合」と自称する団体で、

そのメンバーにはアップル、ボーイング、キャタピラー、コナグラ、

ユニオン*カーバイド、ウェスティングハウス、ゼロックスなど

そうそうたるアメリカの多国籍企業が名を連ねている。

 こうした、多国籍企業にとって、独裁国家中国が一大市場であるだけではない。

 安い労働力が無限に手に入り、税負担を劇的に軽減できる、

環境保護規定や衛生安全規定が事実上存在しない中国は、生産拠点の主な移転先でもある。

 もちろん、政治の舞台では、企業のロビイストは経済的関与を推進したい理由として

「公害を撒き散らし、労働者を搾取して利益を上げたいから」などとは言わず、

「世界の平和と繁栄を促進するため」と説明する。

これから、彼らの3つの論拠を詳しく見てみよう。

まず1つ目は、「成長する中間層」の持つ変革力である。

 USA*エンゲージはこう主張する。

 市場経済の発展は、教育の普及、社会の外界への解放、独立した中間層の発達など、

社会に変化をもたらし、それが独裁的支配への逆風となる。

したがって、「この変化に直面した政府は中間層の支持を求めざるをえなくなり、

政治的自由、法による支配、腐敗の一掃を望む中間層の声に答えざるをえなくなる」と

USA*エンゲージは説明する。

 確かにこれは説得力のある論拠である。

 だが、中国では、経済的関与によってもたらされた経済発展は言論の自由を促進するより

中間層の不満をそらす働きをしてきた。

「お前たちを豊かにしてやる。そのかわり、おとなしく黙ってろ」というのが、

中国共産党と「成長する中間層」との暗黙の取引である。

 全体的に見て、中国では中間層が政治に対しても最も消極的だが、

それはおそらくこの取り決めのせいだろう。

 2つ目の論拠として、USA*エンゲージは「第三者組織」を挙げ、

スタンフォード大学のシーモア*マーティン*リプセットの言葉を引用している。

リプセット曰く、経済発展は国家と社会との関係をも変える傾向がある。

 経済が発展するにつれて、国家をチェックし、政治参加の幅を広げる第三者組織の

数と種類が増え、就業や富の蓄積の機会に対する国家管理や腐敗や情実は減少する傾向がある。

 だが、中国政府はオーウェル「1984年」を彷彿させる保安機関に相当な資金を投入し、

政府の権威に申し立てをする恐れがある「第三者組織」に常に目を光らせている。

 環境保護、人権、言論の自由、チベット問題など声高に異議を申し立てれば、

あっさり「労働改造所」送りになる恐れがある。

 労働改造所とは、スターリンの「グーラグ」にならって設置された強制収容所である。

3つ目の論拠は、「情報は力なり」である。

 (やはりスタンフォード大学教授のヘンリー*ローウェンから引用した)記述は、

この論拠の本質を表している。

 経済が外の世界へ開かれれば、情報の流入量は飛躍的に増大する。

 インターネット、テレビ、書籍、新聞、コピー機、外国の雑誌、ありとあらゆる形態の

大衆的娯楽および知的見解が流入し始め、民主主義、人権、法による支配といった

思想を広めていく。

だが、ここでまたしても、民主化を阻む中国の保安機関の壁、中でも」

「グレート*ファイヤーウォール」が立ちはだかる。

50,000人もの「サイバーコップ」軍団を動員し、アメリカのシスコ*システムズなどの

外国企業から提供された監視技術を駆使して、中国政府は特に、

インターネット系での情報の流入を制限することができるだけでなく、

政府のメッセージに都合の良い情報の流れを作ることもある。

 このように見てくると、少なくとも中国に関しては、アジアに平和をもたらす力としての

経済的関与うに過度な期待をせない方が良いと思われる。

それどころか、経済的関与は中国の軍事力の源泉だと思われる。

 「平和のための経済」とは逆に、中国との経済的関わりを削減することが

中国の軍事力増強を抑える1つの可能な選択肢と言えるかもしれない。

 だが、そんな過激な手段を講じる前に、まずは次の、経済的関与理論と

よくセットで論じられる理論を検証してみる必要がある。

 「中国と世界の国々との高度な経済的相互依存関係によって戦争を防ぐことができる」と

するこの理論について、次章で論じることにしよう。 

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【米中もし戦わば】036-02、中国のWTO加盟により米国経済は壊滅的な打撃を受けた

—時間がなかったので一節だけ

ところが、中国の場合は、中国共産党の独裁体制が強化されていくように思われるだけでなく、

経済的関与が中国の軍事力増強を強力に推進する経済的援助を提供してしまっている。

これまで見てきたように、新たに得たこの経済力を使って中国は次第に攻撃的行動を

エスカレートさせている。

1972年にリチャード・ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー国務長官が

「ピンポン外交」の新時代を開いたときには、こんな展開は想定されていなかった。

幸先が良いと思われたその当時、ニクソンもキッシンジャーも、経済的関与について

中国を平和的でリベラルな国にしようと言う壮大な計画を立てていたわけではなかった。

毛沢東とニクソンの取引はずっと実際的なものだった。

そして、両方とも、自分がまさに期待していたものを手に入れた。

「敵の敵は友」の原則に従って、ニクソンとキッシンジャーは中国と手を組むことで

ソ連の力を弱めようとしていた。

毛沢東とソ連書記長ニキータ・フルシチョフの関係は次第に悪化していたから、

中国側もそれに依存がなかった。

また、ベトナム戦争からの名誉ある撤退とは言わないまでも有利な撤退を望んでいた

キッシンジャーは中国に、パリの講和会議に出席するよう北ベトナムを

説得してもらいたいとも思っていた。

中国はと言えば、毛沢東の権力の衰えが見え始めていた当時、周恩来首相のような

より実用主義的な指導者は、大躍進運動と文化大革命と言う二度の壊滅的失敗を経て

国際貿易の必要性に目覚め始めていた。

そこで、中国は見返りとしてアメリカに、経済制裁を解除して世界経済に

参入させてもらいたいと要求した。

ニクソンのこの実用主義とは対照的に、ビル・でクリントンの経済的関与によって

中国を変えると言うビジョンが壮大かつ理想主義的だった。

任期満了間際の2000年、クリントンはアメリカ経済界の強いアドバイスを受けて

中国を欧米流の平和的民主国家に変えるためのツールとして中国との経済的な関わりを

積極的に進めた。

クリントンは、中国との経済的関わりをするための中国のWTO加盟を支持するよう

議会に要求し、「中国を受けることで、われわれはより大きな影響力を

中国に及ぼせるようになる」と厳かに述べ、次のように説いた。

経済面から見れば、この「(中国のWTO加盟)承認は一方通行の道路のようなものだ。

中国がWTOに加盟すれば、世界人口の5分の1を擁する市場、

つまり世界最大の潜在的市場が開かれることになる。

史上初めて、中国は我々と同じように、開かれた通商ルールに従うことに同意するのだ。

史上初めて、アメリカの労働者によってアメリカで作られた製品を、

アメリカ企業が中国で販売することができるようになるのだ。

壊滅的な経済的帰結を招いたと言う点でこれほど誤った判断を下した

アメリカ大統領は他にない。

中国がWTOに加盟すると、産業界のクリントン支持者たちが一斉に生産拠点を

中国に作り、その結果アメリカでは70,000もの工場が閉鎖に追い込まれた。

失業者・非正規雇用労働者の数は最終的に2500万人以上になり、

アメリカの貿易赤字は年間3000億ドル以上にまで膨れ上がった。

現在、アメリカの対中貿易赤字は何兆ドルにも達している。

もちろん、こうした経済的大打撃があったにせよ、中国は攻撃的な独裁国家から

平和的でリベラルな民主国家に変えると言う目標が達成できたのであれば、

中国との関わりも無駄ではなかったと言えたかもしれない。

だが、エコノミストのイアン・フレッチャーが言うように、

「中国の経済成長は中国の民主化にはつながらなかった。

 それは、独裁国家の経済の向上にしかつながらなかった」のである。

 米中委員会のダン・スレインはこう述べている。

 アメリカが2001年に中国の世界貿易機構加盟を承認し、

中国に相応の市場開放をさせることなく自国市場を解放した時、

アメリカが大きな経済的損害を被る事は分かっていた。

だが、アメリカの指導者の多くは、そこに経済的損失に見合う利益になると考えた。

 貿易が増大すれば中国が民主主義国へと変化せざるをえなくなると考えたのだ。

 後に判明したように、その変化がついに起きなかった。

 中国はあらゆる機会をとらえて自由貿易システムを操作し、利益を最大化し、

自国経済を発展させ、アメリカ経済に深刻なダメージを与えた。

 中国との経済的関わりから、リベラルな民主主義国家と言う期待された結果が

生まれなかった理由を、中国人の性格や中国文化に帰するべきではない。

 少なくとも、シンガポールや台湾と言う成功例がそれを証明している。

 何が間違っていたのだろうか。

 そして、最終的にはそれはうまくいくのだろうか。

 その答えを探すため、「経済的関与が民主化と平和を促進する」と言う主張の

3つの論拠と、「民主化と平和を促進」うんぬんの建前は実は自国の労働者を犠牲にして

グローバルに拡大しようとしている大企業の利益を守るための方便に過ぎない、

と言ううがった見解について検討を加えてみよう。 

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【米中もし戦わば】036-01、第36章、中国の経済成長は何をもたらすのか?

問題

経済的関与がアジアの平和を促進に果たす役割について正しく述べている文を選べ

①経済的関与によって、中国は独裁国家から、暴力や侵略に訴えることない

リベラルな民主主義国へと変わっていく。

よって、経済的関与は平和の維持に役立つ

②経済的関与は、中国共産党の独裁的権力を強め、中国の軍事力増強に

資金を提供したに過ぎない。

中国を好戦的な独裁国家から平和的でリベラルな民主主義国に変える力が

経済的関与であると信じ、アメリカとアジア同盟諸国はそれに大金をかけた。

実際、利益を生むチャンスがその賭けには充分あったように思われる。

少なくとも、1970年代にこの柿が最初に行う行われたときにはそうだった。

その後、シンガポール、韓国、台湾など他のアジア諸国が独裁主義国から

リベラルな道国民主国家に移行したことを思い出してみよう。

その意向を後押ししたのは主に、自由貿易と、自由貿易によって

必然的にもたらされる退屈の経済的な関わり合いだった。

他の地域でも、経済的な関わり合いや関わり合いは同様の効果を表してきた。

ラテンアメリカのアルゼンチンやチリやエクアドル、ヨーロッパのハンガリーや

ポーランドやチェコ共和国などはかつて独裁主義独裁的国家だったが、

今では、豊かな国ばかりでは無いとは言え完全な民主主義国である。

だから、中国もきっと宣伝になるはず、とこれまでずっと期待されてきた。 

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【米中もし戦わば】035-06「アメリカにとってゆずれない1線」とは何か?

最後に道義的責任についてだが、これは確かに正しいとも間違ってるとも言えない。

 特に、既に述べたアメリカの偽善、すなわち人権や民主化のためと言って、

ある国の政治体制の変革を図りながら、特定の独裁政権の事は支持すると言う姿勢を

考えると何とも言えない。

 正義と民主主義と言う錦の御旗の下にアメリカが行っていることの多くは、

実際にはアメリカの国益を促進するための行動に過ぎない。

 それを認めなければ話が進まない。

 だから、率直に言おう。

シンガポールや韓国や台湾などの民主主義国家が繁栄を謳歌してるのは、

そして、フィリピンのような弱小国が征服を免れているのは、

アメリカのプレゼンスのおかげかもしれないが、そのような同盟国がアジアにおける

アメリカのプレゼンスを支えていることも事実である。

そして、アメリカの将来の経済的繁栄を促進し、アメリカ本土の安全保障を

確実なものにするために必要なのがこのプレゼンスなのである。

アジアにおけるアメリカのプレゼンスの問題は結局のところ、

「アメリカにとってゆずれない一線とはなんだろう」と言う問題に行き着く、

とエール大学教授で現在はアメリカン・エンタープライズ研究所研究員の

マイケル・オースリンは言う。

ゆずれない一線と言う概念を説明し、無関心と新孤立主義の危険性を説明するために

オースリンは中国の動向を次のような歴史的事実と対比させている。

1930年代を通じて、アメリカは様々な兆候を見ていた。

広大な領土が奪い取られるのを黙認し、それを無視した。

ヒトラーを無視し、ムッソリーニを無視し、大日本帝国を無視した。

そして、突然真珠湾が起こり、アメリカはゆずれない一線に直面した。

9.11にもアメリカはゆずれない一線に直面した。

10年以上前から、様々な兆候はあった。

アメリカ艦コール爆破事件があった。

 アフリカのアメリカ大使館爆破事件もあった。

 世界中で爆破事件が相次いでいた。

 だが、アメリカはそれを深刻に受け止めなかった。

 次に世界を変えるのは何だろうか。

 それはわからない。

 だが、アメリカはそれについて深刻にそして真剣に考えようとしない。

 アメリカは疲れている。

 面倒なことには取り組もうとしない。 

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【米中もし戦わば】035-05、日本は核兵器を開発する能力を持っているが

ここで、「アジアの国同士の戦争はアジアだけの問題だ。

 アメリカには関係ない」と言う新孤立主義者の言い分について考えてみよう。

 別段深く考えてみるまでもなく、このような考え方がいかに危険かはすぐにわかる。

 最も明らかな問題は、このグローバリゼーションの時代にあっては、

アジアの戦争によって国際的な供給網に混乱が起きればすぐさま

アメリカに跳ね返ってくると言うことである。

経済がどれほど影響受けやすいものかを理解するため、タイが大洪水に見舞われ、

そのすぐ後に日本を大地震と津波が襲ったときのことを考えてみよう。

その結果、国際的な供給網は大打撃を受けて、エレクトロニクス産業と自動車産業は

深刻な供給不足に陥り、世界中のメーカーが代替品の調達に追われ、

タイと日本は深刻な失業問題に直面した。

アジアで通常戦争が勃発した場合、世界経済にどれほどの影響及ぼすか、

想像してみて欲しい。

アジアで核戦争が来た場合については、次のような単純な事実を考えてみてほしい。

死の灰はジェット気流に乗り、わずか7日でアメリカに到達する。

さらに、使用される核兵器の数によっては、世界中が核の冬に追われるかもしれない。

そんなリスクを考えた上で、70年以上にわたって平和を守ってきたアメリカの核の傘を

取り払いたいと誰が望むだろうか。

「アジアで核戦争が起きるとは思えない。悲惨な結果になるとわかっていながら

そんなバカなことをする国はない」と言う論拠はどうだろうか。

実は、そんな考えはっきりって単純すぎるのである。

例えば、韓国がアメリカ軍とその核の傘に見放されたら、次の2つは必須である。

まず、韓国はその高度な技術力を駆使して速やかに自前の核兵器を開発するだろう。

韓国は1975年に核兵器開発計画を放棄したが、それはアメリカが韓国を守ると

約束したからこそだったと言うことを忘れてはならない。

次に、北朝鮮の百万の兵士が38度線を越えて韓国に侵入したり、

平壌の独裁者がそれにソウルに核兵器を落とすと命令したりすれば

(すでに述べたように、北朝鮮に関しては文字通り「何でもあり」である)、

韓国が北朝鮮に対して躊躇なく核兵器を使用するだろう。

もちろん、日本に関しても同様の懸念がある。

すでに述べたように、アメリカ軍が核の傘を引き上げれば、

数十年の原子力産業の歴史を持つ日本は、高性能の核兵器を大量に製造できるだけの

専門知識も核物質持ち合わせている。

誇り高き侍の国、中国による屈辱と征服に甘んじるよりも、

北京の共産党指導部を叩き潰すことができれば中国国民が正気を取り戻すかもしれない、

とはかない望みにかけてでも、核戦争の道を選ぶかもしれない。 

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【週間成績】09/01~09/30

毎週の週間成績は凹んでいる時はアップロードしたくならないのは人の常。

ということで、だいぶマイナスになっていたのでサボっていました。

逆行ばっかりで大凹み。

白紙 2

勝ち負けチャート

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