それでは、中国中央政府に政治的影響与えるような特定利益集団や、
中央政府の目と権限の届かないところで活動する能力を持っているような、
さらにたちの悪い特定利益集団にはどんなものがあるだろうか。
実は、こうした特定利益集団は驚くほど多いように思われる。
ここ10年の間に中国の攻撃的行動が増加していきた事にも、
こうした特定利益集団が大きくかかわっている可能性がある。
この点について、クライネ=アールブラントはこう述べている。
ここ5年から8年の間に、自身は外交に直接関わる立場ではないにもかかわらず、
外交政策決定に多大な影響力を持つ人間が増えてきた。
こうした事は、多くの領域で起きている。
まず、北朝鮮の核開発について考えてみよう。
北朝鮮が核保有国になれたのは、一般的見解とは異なり、中国の国家戦略の
結果ではなく、穴だらけの中朝国境で活動する中国企業が北朝鮮に
「すばらしい核兵器」(ゴードン・G・チャンが北朝鮮の核兵器を揶揄した言葉)の製造に
必要な機器や技術を強引に売りさばいたことの望まざる生産物なのかもしれない。
同様に、貪欲な地方官僚の行動が南シナ海などの緊張を高めている側面もある。
クライネ=アールブラントが指摘しているように、広西チワン族自治区や広東省や
海南省などの沿岸部では税収増加に躍起の官僚が地域の漁民に圧力をかけ、
より大型の、つまり、より遠方の紛争海域にまで航行できる船を買わせている。
これによって漁獲量が増加し、地域の経済は成長し、税収もアップする。
こうして官僚の目標は達成される。
だが、同時に、自国漁民とベトナム漁民との衝突も増加することになる。
中央と地方との食い違いの中で何が最悪かと言えば、地方官僚がしばしば、
中央の意思に反して挑発的な行動をとることだろう。
クライネ=アールブラントはこう報告している。
私が直接インタビューした雲南省やその他の地方官僚は、「われわれはまず行動し、
それから、北京が何もリアクションを起こさなければそのまま続ける。
これが我々のやり方だ」と語った。
北京がリアクションを起こせば多少は修正するが、とにかくやり続けると言う考えに
変わりは無い。
そして、必要なこと以外は一切中央に報告しない。
まず行動し、イニシアチブを取る。
そのあとで、必要であれば是正措置を取る、と。
中国には、北京にいる皇帝の命令を無視する長い伝統がある。
中国の有名な諺に「天は高く、天子は遥か彼方におわす」というのがある。
これは、中央から遠く離れた地方の住人は、自分の日常生活から遠く離れた
中央政府とは無関係に動くと言う意味である。
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