だが最近、「非大気依存推進システム」と言う新技術の登場によって、
ディーゼル電気方式潜水艦の勢力地図が劇的に塗り替えられた。
非大気既存推進システムにはいくつかの種類があり、
大気依存問題の解決方法がそれぞれ異なっている。
例えば、スウェーデン製のシステムは超低温タンクから供給される液体酸素を使って
ディーゼル燃料を燃焼させ、ドイツ製のシステムは液体水素燃料電池を使う方法を
採用している。
このように、非大気依存の推進システムによって、ディーゼル電気式潜水艦は
従来よりもずっと長期間(最長2週間かそれ以上)潜航できるようになり、
そのステルス能力は格段に高まった。
ディーゼル電気式潜水艦のステルス能力のこの飛躍的進歩は、
我々の推理作業にとっては大いに重要である。
というのも、中国がこの非大気依存製品に飛びついたからである。
自前では製造できないため、中国は外国からこのシステムを大量に買い付けている。
そして、この新システムは、新たに建造される潜水艦の為だけでなく、
中国艦隊の既存の潜水艦を改造するためにも使われている。
ここからが、我々の推理作業にとって特に重要な点である。
非大気依存推進システムを搭載したディーゼル電気式潜水艦ほど、
東シナ海と南シナ海に適した海軍兵器は他にない。
実際、ディーゼル電気方式潜水艦は「接近阻止・領域拒否」戦略を実行するための
究極の「受動攻撃型」兵器である。
このような、事実上探知不可能な潜水艦は、艦船が長距離魚雷または巡航ミサイルの
射程に入ってくるま待ち伏せしているだけで良い。
標的にされた船舶は、日本の駆逐艦であれ、アメリカの空母であれ、
ベトナムの潜水艦であれ、任務中止に追い込まれるだろう。
中国は自前で潜水艦を建造するとともに、ロシアからも買い付けている。
このように保有数が多いだけに、中国にとって「接近阻止、領域拒否」兵器の効力は
一層大きい。
潜水艦を大幅に増強し始めた1990年以降、中国の潜水艦保有数は60席にまで増大した。
しかも、今後、ドイツ製の動力を搭載した最新式の元級潜水艦15隻を
さらに建造する予定である。
また、ロシア製のラーダ級潜水艦4籍も発注している。
吸音外装タイルと超静音プロペラを特徴とするラーダ級潜水艦は、
非大気依存の推進システム搭載の潜水艦よりも静かかもしれない。
全体像を把握しておこう。
東シナ海と南シナ海と言う比較的狭い範囲の水面下に「受動攻撃型」兵器として
大量投入されることによって、中国のディーゼル電気方式潜水艦は、
すでに述べた大陸間弾道ミサイルからロケット推進式上昇機雷まで、
多彩な種類の他の「接近阻止、領域拒否」兵器との相乗効果を発揮するだろう。
これらの影響すべてその地域に展開するアメリカ海軍のコストとリスクを
上昇させることになる。
その中で水面下の中心的役割を果たすのはディーゼル電気方式潜水艦である。
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