最終更新日 2020年9月14日月曜日 12:19:17
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【米中もし戦わば】011-2、「日本の海上部隊は地上発射ミサイルを深刻な脅威にさらされている」

中国のミサイルの脅威について論じるとき、最近の報道は最新式の対艦弾道ミサイル

(空母キラー)にこだわる傾向があるが、アメリカ国家総合大学教授バーナードコールや

アメリカ海軍大学校教授ライルゴールドスタインといった専門家は、

ずっと以前から存在する巡航ミサイルの方がさらに危険かもしれないと考えている。

 コール教授は、中国の巡航ミサイルが「非常に挑戦的な」脅威となった原因は、

ミサイルの生産数やその速度及び性能の向上よりも、

「人工衛星ネットワークやその他の種類のレーダー」が開発され、

その結果、ミサイルが目標をずっと正確に探知追尾できるようになったことにあると言う。

 ゴールドスタイン教授は、中国の巡航ミサイルのうち、

特に対艦巡航ミサイルの危険について掘り下げ、次のように述べている。

中国の最新型対艦巡航ミサイルの中には、射程や速度の点で、

(それほど高性能とは言えない)ハープーン対艦ミサイルなどの

アメリカのよりも優れているものがある。

したがって、この分野では中国の方がアメリカよりも進んでいるわけで、

これは実に気がかりな事態である。

 しかし、気がかりなのはそれだけではない。

この巡航ミサイルを、中国は高性能の水上艦(ミサイル艇)や潜水艦など、

様々な場所から発射することができるのである。

数について言えば、台湾に対してだけでも1500発以上のミサイルが

配備されていると報告されている。

実際に使用されれば必要以上の殺傷能力を発揮するだろうが、これはむしろ、

台湾の独立を阻止するための威圧の道具である。

 この点に関して、国際評価戦略センターのマークストークスが次のように

簡潔に述べている。

1993年以来ずっと7分で台湾に到達する位置にミサイルが配備されている。

 そして、このことが台湾国民に心理的圧力を加えている。

 だが、中国のミサイルのターゲットは台湾だけではない。

 例えば、東シナ海の尖閣諸島の領有問題で中国と対立してる日本の状況考えてみよう。

 ゴールドスタイン教授は、尖閣諸島の現状をこう述べている。

 例えば東シナ海の戦略的均衡が兵器の種類によってどのように変わるかを見てみると、

日本の海上部隊は地上発射ミサイルの深刻な脅威にさらされているように思われる。

例えば中国沿岸部から発射される巡航ミサイルは尖閣諸島付近の海上保安庁の船舶を

射程内収めているし、これを決定的に打ちます打ちまかすこともできると思われる。

 したがって、巡航ミサイルの脅威が非常に大きい。

 対艦弾道ミサイルばかり気をとられていると、巡航ミサイルの脅威から

目をそらすことになりかねない。

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【米中もし戦わば】010-8、迎撃困難な最高速度マッハ10の新型ミサイル

台湾だけでなく、第一第二列島線に沿って点在するアメリカ軍基地も

危険にさらされている。

 かなりの機動力のある空母には、中国の対艦ミサイルを少なくともかわせる可能性が

あるが、固定された基地はGPS誘導精密ミサイルの集中攻撃を受ければなすすべがない。

 基地は不可解なことにミサイル攻撃を想定した造りにになっていない

(十分な量のコンクリートで強化されていない)ため、ミサイル防衛システムが

機能しなかった場合には壊滅状態になる可能性が高い。

 その脅威は現在いやが上にも高まっている。

というのも、中国はミサイルを増産しているだけでなく、

これまで以上に殺傷能力の高い新型ミサイルの開発に余念がないからである。

 その代表例が、2014年に最初の試験が行われた極超音速滑空ミサイルである。

 このこのミサイルの最高速度はマッハ10、つまり音速の10倍(時速12,000キロ)である。

 このミサイルが危険なのは、その速度のせいだけではない。

 「エービーエーションウィーク」誌(アメリカの航空宇宙雑誌)によれば、

極超音速滑空ミサイルは「大気圏突入後に機体を引き起こすことができるため、

比較的水平に近い角度で滑空して目標に接近することができる。

 よって弾道ミサイルよりも探知が遅れるため、反応するための時間もより限られる」と言う。

 さらに、「極超音速滑空ミサイルが空気力学的な操作が可能なため、

迎撃もずっと困難になる」。

 これと同様に危険なのが、新型のDF-31Bミサイルである。

 これは道路移動式の大陸間弾道ミサイルシステムで、

中国の急峻な山岳地帯での輸送隠匿を考えて特別に設計されている。

ビルガーツは、「移動ミサイルはより大きな戦略と言う脅威と考えられ、

その1を追跡して攻撃すること非常に困難だからだ」と述べている。 

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【米中もし戦わば】010-7、中国はどれだけの核兵器を隠し持っているのか?

憶測の域を出ないのは、中国がこの広大で不透明な迷路の中に隠し持っているだろう

核弾頭の数である。

ペンタゴンは一貫して、中国が保有する核弾頭の数は240から400の間に過ぎないと

見積もってきた。

 だが、カーバーは2013年に発表したレポートの中で、中国が地下長城内に

3000発もの核弾頭を備蓄してる可能性を指摘している。

 これがもし真実なら、中国が保有する核弾頭の総数は米露両国が新STARTによって

保有されている核弾頭の総数の後合計にほぼ等しいことになる。

カーバーのレポートは「誇張」として手厳しい批判を受けることもある。

 例えば、「憂慮する科学者同盟」(1969年に設立された国際的非営利団体)の

ある代表者は、カーバーのレポートを「馬鹿げている」「怠慢」だと表している。

だが、こうした批判は、中国の核弾頭の開発が秘密裏かつ無制限に、

急速に進んでいると言う点を、見落としている。

 それに、こうした批判は中国が難攻不落の地上発射システムを完成しつつあるという

事実をも無視している。

さらに、核兵器の地下通路を高速で他の発射場まで運ばれると言う、

戦力の踊るべき機動性によって、核兵器の無害化に「モグラたたき」的な

困難さが加わることになる。

対照的に、アメリカの地上発射はそのほとんどは固定式のサイロに格納され、

その位置はGoogle等のインターネットサイト上に広く公開されている。

地下長城に関しては、もう一つ注意すべき重要な点がある。

中国が隠し持っている核兵器の数がわからないため、中国はこの不透明さを

威圧の道具として利用し得ると言う点である。

 実際、地下長城の存在が明らかにされた時、多くのアジア諸国が恐怖と警戒感をあらわにした。

 同時に、中国が実際に保有する核ミサイルと核弾頭の数は誰にもわからないのだから、

「中国は大量の核兵器を保有している」と言う主張は中国側は誇張だとして

簡単に斥けることもできる。

 したがって中国は欲しいままに核兵器を備蓄することも、

それをもっともらしく否定することもできるのである。 

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【米中もし戦わば】010-6、地下に広がる全長5000キロのミサイル発射施設

中国の長距離精密攻撃核ミサイル開発の中心となっているのが

自慢の地下長城を要する第二砲兵部隊(人民解放軍ロケット軍)だが、

第二砲兵部隊と言う名称自体がちょっとした詐欺である。

 1966年に設立された時、その重要性を対外的に隠蔽するため、

当時の周恩来首相によって「第一」ではなく「第二砲兵部隊」と命名されたのである

その真の任務が公になったのはようやく1984年のことだった。

その任務とは中国のミサイル全般(弾道ミサイルも巡航ミサイルも、通常型ミサイルも)の運用である。

第二砲兵部隊の呼び物が地下長城である。

 地下長城とは、大型トラックが入るだけの高さと幅を持った、

迷路のような地下トンネルのことである。

その建設は、1960年代末に中国の核兵器開発開始と同時に始まった。

現在、この地下トンネルネットワークは縦横に伸びる全長5000キロに及ぶトラック、

鉄道路線になっており、移動式ミサイル発射装置を最高時速約100キロで輸送する能力を

有している。

アメリカ随一の地下長城の専門家カーバー教授は言う。

 「およそ15分でトラックや列車が現場に到着し発射準備は完了する。

中国はミサイルの発射にかなりの自信を持っている。

 アメリカの人工衛星がミサイル発射準備を探知するまでに、

ミサイルが既に発射されてしまっているからだ」

この地下長城の存在は単なる憶測ではない。

 それどころか、この度肝を抜く設備は2006年に中国国営テレビで華々しくお披露目されている。 

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【米中もし戦わば】010-5「中国は、核弾頭搭載可能なミサイルを世界で最も幅広く保有している」

以上のことを前提として、中国が核弾頭を温存するためにそれをどのように

保管してるのかと言う問題に戻ろう。

 しかし、この問題を論じようとすると、当然のことながら、

中国の核兵器計画の不透明性と言う問題に再びぶつかってしまう。

 この不透明性は、軍縮交渉を通じて核戦争の危険を減らそうと必死にに模索してきた

米露とは全く対照的である。

核軍縮交渉が本格的に始まったのは、米ソが第一次戦略兵器削減条約(START)に

調印した1991年だった。

 この条約によって、米ソ両国の保有する核弾頭は6000発に、それを搭載する

大陸間弾道ミサイルや爆撃機の総数は1600に制限された。

 2001年までに、この条約に従って「既存の戦略核兵器のおよそ80%が撤去された」

どんな基準から見ても、これは驚くべき成果である。

 第一次STARTが2009年に失効した後、米露は2011年に、保有する核兵器を

さらに削減する新STARTを締結した。

 このさらに厳しい新条約によって、大陸間弾道ミサイルを配備数は700基に、

大陸間弾道ミサイルに搭載される核弾頭の数は1550発に発射装置及び

重爆撃機の保有総数は50%減の800に制限された。

 核軍縮交渉の長いプロセスを経て米露が核兵器の削減に成功したのとは対照的に、

中国がこれまでどんな形の軍縮にも頑として応じなかった。

それどころか、こうした条約をいいことに、ミサイルや核弾頭能力の開発を

何の制約も受けずに行ってきたのである。

ジョージタウン大学教授で、以前ペンタゴンでもアドバイザーを務めていた

フィリップカーバーはこう述べている。

 現在、中国は核弾頭搭載可能なミサイルを世界で最も幅広く保有している。

 幅広くと言うのはつまり、射程の非常に短いものから大陸間ミサイルまでと言う意味である。

 中距離核戦力全廃条約によって、米露は中距離及び戦域ミサイルを全廃した。

 したがって、すべての範囲のミサイルを保有している中国は特異な存在である。 

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【米中もし戦わば】011-1、第9章、地下の万里の長城問題

中国が「地下の万里の長城」に貯蔵している核弾頭の数を選べ。

 ① 30② 300③ 3000この問題の真に恐ろしいところは、正解がわからないことである。

 だが、中国が誇る「地下長城」に関する噂や憶測がほんの少しでも当たってるとすれば、

中国の核弾頭保有数は、今すぐとは言わないまでも今後数十年の間には

ダントツで世界一になるだろう。

アメリカの科学誌「原子力科学者会報」が警告しているところによれば、

「中国は五大核保有国の中で唯一、核兵器の備蓄を増やしている」と言う。

中国の方がどれほどの脅威を持っているかを正しく理解するために、

ミサイルの基礎をもう一度おさらいしておこう。

 一言で言えば、ミサイルはその射程距離によって大まかに3つに分類される。 

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【米中もし戦わば】010-4米軍のアジア駐留コストは激増する

だが、ここではっきり言っておかなければならないのは、

1連の非対称兵器の開発において中国が必ずしもアメリカ艦船の撃沈を

目標としているわけではないかと言うことである。

 中国はむしろ、「戦わずして勝つ」ことを最初の目標とする孫子の兵法に則り、

中国がその気になりさえすればアメリカの空母撃沈できるのだと

アメリカに思わせようとしているのである。

だから中国は、アメリカ海軍大学校ジェームスホームズの言う「ハードシールド」

(「アメリカ海軍を完全にアジア海域から駆逐するための」防御壁)を

構築しようとしているわけではない。

中国は単にアジア海域で作戦行動を行うアメリカ艦船のコストとリスクの負担感を

上げようとしているに過ぎない。

 そして、そうすれば、すでに戦争に疲れているアメリカが戦わずして

逃げ出すだろうと踏んでいるのである。

中国が反干渉作戦のお手本にしているのは孫子だけではない。

 この戦略は、カールクロワゼヴィッツの「代数による戦争」と言う

西洋的な考え方の典型例でもある。

この名高いプロイセンの軍事理論家の精神にのっとり、中国はアメリカに費用対効果

と言う問題を提起している。

 アメリカの政治家や軍司令官は、「アジアに駐留することで得られる

経済的国家安全保障上のメリットは、著しく増大しつつあるリスク及び

海軍やアジアの基地の付随的コストに見合っているだろうか」と言う不愉快な問題に

直面せざるを得ない。

 中国の力が増大するにつれて、費用対効果を厳密に考えれば、

この重大な問題にアメリカはいずれ「ノー」と答えざるをえなくなる、

と中国は考えているのである。

いつかアジア太平洋地域の海と空で東(孫子)と西(クラウゼヴィッツ)がどのように

出会うことになるかを、アメリカ海軍大学校教授トシヨシハラが次のように説明している。

 (中国の)目標は、アメリカ海軍を軍事的に打ちまかすことではない、中国の目標は、

ホワイトハウスの戦略的政治的計算法を変化させ、コストとリスクの負担感から

アメリカの政策決定者がアジアへの介入を躊躇するように仕向けることである。

 ホワイトハウスが躊躇し、決定を遅らせれば、それだけ中国は紛争を

自分に都合よく解決する時間を稼げるようになる。

 これによって現地の状況は不可逆的に変化するだろう。

そして、それによって中国の望みが実現するだろう。

 中国の望みとは、戦わずして勝つこと。

 つまるところそれは「立入禁止区域」を設けることである。

 このような恐ろしい結果を防ぐため、さらに、中国の最新式対艦弾道ミサイルの脅威に

対抗するため、アメリカは日本やオーストラリアといった同盟国の協力を得て

最新鋭のミサイル防衛システムを導入しようとしている。

 もちろん、こうしたミサイル防衛システムを当該地域が持ち込むことそれ自体も、

事態のエスカレーションを招く行動である。

と言うこともというのも、中国は防衛システムを数で圧倒しようとして

さらに多くのミサイルを配備するだろうからである。

 典型的な「安全保障のジレンマ」の軍拡競争が起きようとしている。

 アメリカのミサイル防衛システムは、中国の通常型ミサイルを無害化するにとどまらず、

必然的に、そしておそらくは意図的に、中国の「報復核攻撃」能力をも脅かす。

 すると、この行動は状況の不安定化も招くことになる。

 というのも、このような核報復能力こそが「核抑止力」

(「こちらに核ミサイルでやり返す力があれば、先制攻撃を仕掛けられる心配は無い」

ということ)の基礎だからである。

 核抑止力の話が出るところで、次章では、中国の核に関する最も厄介な問題である

「核の万里の長城」について述べることにする。 

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【米中もし戦わば】010-3、中国が手にした「空母キラー」の脅威

中国の対艦弾道ミサイルの画期的な点は、地表へと落下しながら、空母や駆逐艦等の

大海原の中の比較的小さな目標を速やかにロックオンすることができるとともに、

非常に正確に目標を追尾しながら回避行動まで取れることである。

中国の指導者がこの画期的新兵器を公然と「空母キラー」と呼ぶのも理由のないことでは無い。

 実際には、中国の対艦弾道ミサイルは、巡航ミサイル、比較的安価なディーゼル電気方式

潜水艦、機雷や地雷、ミサイルを搭載した小型高速双胴船(ミサイル艇)といった

「非対称兵器」の1つに過ぎない、非対称兵器とは、

それらが破壊しようとしている対象に比べて非常に安価な武器のことである。

例えば、中国大陸から発射される対艦弾道ミサイルや高速双胴船から発射される

従来型の巡航ミサイル1発の価格は数百万ドルだが、

そのどちらも、一隻100億ドルのアメリカ空母を破壊するだけの能力を持っている。

 また、それらが直撃した場合、5000人の命が失われることも忘れてはならない。

 この点について、ジョージタウン大学教授で、以前ペンタゴンでアドバイザーを

務めていたフィリップカバーはこう述べている。

アメリカは世界最強の海軍を保有している。

 現在、アメリカ海軍はおそらく、中国やロシア軍を含め、世界中どのどこの海軍と

通常戦争を戦っても勝利することができるだろう。

 だが、中国は抜け目なく行動し、対艦弾道ミサイルなどのいわゆる非対称兵器を

開発してきた。

 対艦弾道ミサイルは、アメリカ海軍の艦隊を人質に取る能力を持っているかもしれない。

 これは、アメリカのアジア地域の海軍力展開能力が次第に小さくなっていくことを

意味している。

 中国の軍事力のこの非対称性ことこそがまさに、航行中の空母を弾道ミサイルで

攻撃する能力といった技術の進歩と相まって、自国の防衛はアメリカの空母艦隊に

依存しているアジア諸国やペンタゴンを慌てさせているのである。

実際、アメリカの空母戦闘軍の無力化にかける、中国の偏執狂とも言える力の入る様は、

戦略的優位を求めてせめぎ合い、お互いにますます不愉快に感じている米中両国の

間に存在する文化的地政学的な意見の相違の大きさを如実に物語っている。

一方の中国は、列強のせいで味わわされた「屈辱の100年間」が身に染みている。

 そうした視点から、中国は非対称兵器の拡充を「反干渉作戦」の実行を目的とした、

純粋に防衛的な軍備増強とみなしている。

その目的は、中国本土と、中国沿岸に眠る豊富な地下資源を守ることである。

 もちろんアメリカ側は、この中国の反干渉作戦を全く違う立場から見ているし、

違う名称で読んでいる。

アメリカの軍事アナリストにとってそれは防衛的どころか攻撃的な性質を持つ、

「接近阻止、領域拒否」戦略である。

アメリカ軍をのアジア海域から駆逐(領域拒否した上で、その帰還を阻止しようとする

(接近阻止)と言う性質上、この戦略は段階的に拡大する可能性が極めて高いものである。

航海の自由と言う原則の上に成り立ち、その範囲を貿易に大きく依存しているアメリカと

言う国にとって、中国の「接近阻止、領域拒否」作戦は到底受け入れられるものではな

い。

 そうなると必然的に、双方がゆずれない線を海上に引くようになり、

戦争の可能性は高まるだろう。 

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【米中もし戦わば】010-2、巡航ミサイルと弾道ミサイルはどこが違うか?

中国の対艦弾道ミサイルのインパクトを正しく理解するために、

まずはミサイルの基本についておさらいしておこう。

 通常型弾頭ないし核弾頭を搭載するミサイルには、原則として次の2つのタイプがある。

推進力は、通常はロケットではなくエンジンである。

 巡航ミサイルは大気圏から出る事はなく、飛行中常にエンジンから推進力を得る必要がある。

 感知されることを防ぐため、地球の輪郭に沿って低空を飛行することが多い。

 これに対して弾道ミサイルは、通常はロケットによって打ち上げられ、大気圏外で準軌道飛行に入る。

 この希薄大気の中を、弾道ミサイルはほとんど燃料を使わず、長距離を飛ぶことができる。

 (価格は普通巡航ミサイルのほうがずっと安い)。

 目標付近に到達すると、弾道ミサイルは自由落下して大気圏に再突入し、

その過程で致死的な高速を獲得する。 

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【米中もし戦わば】009-3、 第一、第二列島線を突破せよ

劉の構想の第一段階は「沿岸」及び「第一列島線」を突破することである。

 すでに述べたように、第一列島線とは、千島列島の北端から日本全土、

日本列島南端の沖縄へとなり、さらに南下して台湾

(第一列島線のほぼ真ん中に位置するとともに、最も重要な島)を通過し、

ルソンとフィリピンを抜けてマレーシア領ボルネオへと続く先である。

もちろん、「第一列島線」は単なる比喩である。

 東シナ海や南シナ海に実際に線が引かれているわけではない。

しかし、仮想ので線とは言え、この比喩は劉提督の心に重くのしかかっていたし、

現在に至るまで中国の戦略はこれにこだわり続けている。

中国はこの第一列島線の突破にこだわるのは、実は極めて妥当なことである。

 なぜなら、これが実際に中国海軍の行動を束縛しているからである。

 まず問題になるのが、劉の言う「沿岸」にチョークポイントが非常に多いことである。

また、中国の水上艦は、日本やフィリピンや韓国といった国々あるアメリカ軍基地から

発進するミサイルや戦闘機にとって容易に到達できる距離にある。

 だから、世界的な制海権獲得の第一段階が、今第一列島線と言う束縛の打破であることを

痛感していた。

 その実行方法については、次章で述べることにする。

 さしあたっては、制海権獲得の第2段階として劉提督が「第二列島線」の打破を

想定していたことを知っておいてもらいたい。

 この第二列島線は、本州の中程から出て、サイパンを含む北マリアナ諸島のほうに

大きく膨らんでグアム(ここが第二列島線の中間点)を通り、

パラオを通過してインドネシアのパプア州とパプアニューギニアまで続く線である。

 この第二列島線を形作る島々に共通するものは、その「足がかり」としての

戦略的な重要性である。

 第二次大戦中、ハワイから反撃を開始したアメリカ海軍はこれらを足がかりにして

日本本土へ空襲を仕掛け、それによって日本の降伏を勝ち取った。

現在第二次大戦の激戦地の1つグアム島は、アメリカ軍の戦略拠点として

大きく立ちはだかっている。

 台湾が第一列島線の要であると同じ意味で、グアムは第二列島線の要である。

 劉提督の目標は、2020年までにこの第二列島線を突破することだった。

 そして、いまや空母を擁する中国海軍はこの目標にあと少しのところまで

近づいているように見える。

 草葉の陰で劉提督は、しっかりと目を閉じて微笑を浮かべていることだろう。

 劉の戦略の第3段階は、2050年までに世界的な制海権を獲得することだった。

 中国海軍が世界規模の海軍どころか沿岸警備隊に毛が生えた程度のものだった時代の

構想であることを考えれば、劉提督の構想のスケールはとてつもなく大きかったと言える。

 現在、中国側からも西側の軍事アナリストからも劉提督の3段階構造に忠実に従って

戦略的行動を進めていることを示す有力な証拠が上がっている。

 世界平和にとって不都合なことに、この構想はその定義からしてゼロサムゲームである。

 実際、中国が第一第二列島線を突破して世界の制海権を握ることに成功するためには、

アメリカ海軍を打ちまかすか、あるいは、アメリカ海軍を従わせる以外に方法は

無いのである。 

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