最終更新日 2020年10月13日火曜日 11:56:06
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【米中もし戦わば】031-06、東アジアにおける沖縄の戦略的価値

①の「強化」戦略を具体的に説明すると、基地の燃料タンクや兵器庫を

地下深部に移動させ、航空機をサイロに格納し、膨大な量のコンクリートと鉄筋で

滑走路や建物や兵舎や不当を要塞化する、と言うことである。

さらに、迅速に滑走路を修理したり、ミサイル集中攻撃をを受けた際に

必然的に発生する瓦礫を除去したりすることができる専門的な装備を準備しておくことも

「強化」戦略に含まれる。

こうした平凡な試みの価値について、フリードマン教授はこう述べている。

滑走路に空いた穴を修復するための機械といった装備は非常に重要である。

これらは優先上位リストの上部には入っていないし、一般的に軍が購入したがるような

最新兵器でもない。

だが、戦争と言う状況下で基地や施設を使用可能な状態に保つためには

これらは必要不可欠である。

②の「分散・多様化」戦略について説明すると、これを実行するには

2通りの方法がある。

まず、すでにアメリカ軍の駐留を受け入れている国の中で基地を分散する方法。

このようなリスクの分散と多様化が日本でどのように機能するかを、

ヨシハラ教授が次のように説明している(日本は中国の脅威を強く感じているため、

基地の分散と言う考えに理解を示すものと予想される)。

基地や艦船といった高価資産を日本列島全体の再配置すれば、

中国にとってはターゲットを絞り絞り混むのは非常に困難になる。

たとえば、およそ1000キロにわたって伸びている琉球諸島には、

アメリカやその同盟国空軍および海軍が使用することのできる港湾施設や

飛行場が多数存在する。

琉球諸島の南西の島々まで軍を分散して配置することができれば、

中国にとってターゲットを絞り込むことは非常に困難になるだろう。

分散・多様化戦略を実践するための2番目の、そして中国側からも最も抵抗を受けると

思われる方法として、現時点では大規模なアメリカ軍の駐留を終了受け入れてない国々に

まで軍事施設を広げると言う選択肢もある。

 アメリカン・エンタープライズ研究所のダン・ブルーメンタールは、

「中国側から見ればターゲットとすべき国と地域が突然増えることになるのだから

日本にある数カ所の基地や軍事施設だけをターゲットとして考えれば良い場合と比較して

抑止力が格段に高まるだろう」と述べている。

アメリカの防衛の傘に入ることに最も積極的なのは、資源や領海をめぐって

中国との紛争が急速に激化しているベトナムだと思われるが、

このような拡張型の「分散・多様化」は中国側の「ゆずれない線」を踏み越える危険がある。

ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロンは次のように注意を促している。

アメリカが新たに建設する基地の数はデリケートな問題だが、特にデリケートなのは、

それがこれまでアメリカ軍基地がなかった国に建設される場合だ。

だから、例えばアジア地域全体にアメリカ軍を分散させる目的で基地を

5つベトナムに配置するとすれば、それは単なる分散戦略を超えた問題となる。

それは、アメリカの新たな同盟国が中国と国境を接することを意味する。

中国側は、封じ込められると言う恐怖を募らせるだろう。

したがって、極端な状況下にある場合以外は、これは得策ではない。 

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【米中もし戦わば】031-05上空から丸見えの米軍基地

第一列島線の主要なアメリカの基地には、中国第二砲兵部隊がすでにに照準を当てている。

主要なアメリカ軍基地とは、日本本土の佐世保及び横須賀海軍基地と横田空軍基地、

沖縄の嘉手納空軍基地とトリイステーション陸軍基地、韓国の烏山空軍基地と

テグ陸軍基地のことである。

 フリードマン教授は、これらの基地の脆弱性について次のようにずばり述べている。

 基地は固定されていてどこへも移動しない。

 つまり、中国の通常兵器に繰り返し攻撃される恐れがある。

 よって、当該地域における我々の形勢は若干不安定だ。

 だから、どのようにその不安定さを軽減するかが重要な問題となる。

 ミサイルの危険にさらされているのは、滑走路上の航空機だけではない。

 基地が破壊されると言う事は、補給線の重要な要素が失われると言うことである。

 アメリカ海軍大学校のトシ・吉原教授はこう述べている。

 こうした記事の多くはグーグルアースではっきりと見ることができる。

 基地は、上空から丸見えの、固定されたソフトターゲットだ。

だから、中国軍は座標を打ち込んでミサイルを一斉に発射すれば、

アメリカ軍の弾薬や燃料タンクの兵站支援施設を一気に破壊することができる。

 そうなれば当然、、第一列島線上のアメリカ軍の作戦継続能力が著しく弱体化する。

アメリカは軍事資産をむき出しのままに野ざらしにしておく傾向があるが、

これは中国の姿勢とは正反対である。

 中国がアメリカとソ連の両方から攻撃の脅威にさらされていた冷戦時代以来、

人民解放軍はできるだけ多くの軍事施設を強固な遮蔽物で覆うことに執念を燃やしてきた。

 ミサイルでいっぱいの地下長城(第9章参照)や、海南島にある洞窟のような潜水艦基地

(第25章参照を)思い出すだけで、中国がそのような施設を全土に張り巡らしている事は

十分に想像がつく。

 この脆弱性に対するアメリカの態度はと言えば、何をすべきかについては大方の意見が

一致しているものの、それを実行しようとする政治的意思に欠けているのが現状である。

 ミサイル防衛システムを強化しなければならないのは当然だが、

それ以外に、次の3つの戦略が必要だと考えられている。

つまり、

①既存の基地及びターゲットの「強化」戦略、。

②すでにアメリカ軍基地を受け入れている国の中で基地を分散するとともに、

他のアジア諸国に追加的施設を開設する「分散・多様化」戦略、

③空母戦闘群の主力艦重視を改め、非対称戦争を中国にやり返すための

機雷や攻撃型潜水艦に力を入れる「軍備再編」戦略の3つである。

この3つの戦略の目標は、アジア地域におけるアメリカの軍事資産の抵抗力を

格段に高めることである。

 「抵抗力を高める」とは、「中国のミサイル攻撃の第一撃

(特に、第一列島線上の基地インフラに対するもの)を確実に吸収できるようにすること」

であるとトシ・ヨシハラは説明している。 

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【米中もし戦わば】030-04、なぜ米国は中国の脅威の高まりを認めないのか?

ハリー・ポッター・シリーズで悪役ヴォルデモートの名前を呼ぶことが

タブーとされているのと同じように、こうした真実は残念ながらワシントンの政界では

タブーとされ、あえてこれに言及する政治家はほとんどいない。

実際、この「都合の悪い事実は見て見ぬふり」と言う態度にはそれなりの政治的理由がある。

第一に、ホワイトハウスも議会も、中国が着実にアメリカとの軍事力の差を縮めている

ことを正式に認めたがらない。

そんなことを認めれば、世論が厭戦ムードに傾き、予算状況が既に逼迫している今

何らかの行動が必要になってしまうからである。

中国の脅威が高まっていることを認めれば、ただでさえ2極分化している政治体制の中で、

「大砲かバターか」の悩ましい選択をしなければならなくなる。

同時に、政治家も軍幹部も、アメリカの相対的な凋落を認めるより、

自信たっぷりにアメリカ軍の優越性をアピールしたがる。

そうしなければ、東シナ海や南シナ海、さらに、ことによると、インド亜大陸における

中国のサラミ・スライシング戦術を助長することになるからである。

加えて、「アメリカ軍の有意は永遠に続く」と言う神話は、中国の貿易で

多額の利益を上げているアメリカ産業界にとって都合の良いストーリーにも

ぴったりマッチしている。

アメリカの経済新聞やケーブルニュースで特に人気の高いこうしたストーリーの中では、

中国はアメリカと平和的に貿易を行うことだけを望んでいる「友人」である。

ボーイング、キャピタル、GE、ゼネラルモーターズといった大企業が、

中国で営業する権利と引き換えに「軍民両用」技術を積極的に中国に移転している。

もちろん、「軍民両用」であるからには、こうしたアメリカの技術は必然的に

武器に転用され、アメリカの陸海空兵士に向けられることになる。

最後に、本章冒頭の問題の正解が、これまで述べてきたことから推論できるように

5の「1~4の全て」だとすれば、そのゾッとするような現実は

ミアシャイマーの書き出す未来ものである。

アメリカの持つ軍事力に追いついたと思えば、中国はアジアにおける覇権を

いっそう強く主張するようになるだろう。

もちろん、その過程で中国はアメリカと言う派遣国をアジアから追い出そうとするはずだ。

となれば、これから考えなければいけない問題は、「中国の非対称兵器と

強大化する軍事力に対して、アジアのアメリカ軍は実際にどの程度脆弱なのか」と

「脆弱性を踏まえた上で、アメリカの艦船や航空機や前進基地に対する

中国の攻撃に対処するためにはどうしたらいいか」の2つ、と言うことになる。

これから数章を割いて、この2つの問題に取り組むことにしよう。 

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【米中もし戦わば】030-30、米国のイージス・シールドはミサイル攻撃を受ければ粉々になる

さらに、アメリカ軍は永久に優位に立っているはずだと言う思い上がりに

疑問符を突きつけるのが、急速に成長する中国経済の持つ潜在力である。

これが結局は、今後のどんな戦争においても決定的な役割を果たすことになるかもしれない。

中国の経済成長が今のペースでアメリカを上回り続ければ、数に優れた中国軍が

技術力に優るアメリカ軍を圧倒する時がいつか来るだろう。

スターリンの格言「量も質のうち」をもう一度思い出してほしい。

質より量の中国がアメリカ海軍のアジアでの戦力投射に突きつけている問題を

理解するために、もう一度イージス戦闘管理システムについて考えてみよう。

これは、数千キロとは言わないまでも、数百キロの彼方からこちらに向かってくる

ミサイルを探知できる高性能レーダーシステムを中心とするシステムである。

ギリシャ神話に登場する盾に由来するとその名の通り、イージスは、アジア太平洋地域で

活動するアメリカ空母戦闘国のデジタルシールドである。

アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラ教授によれば、イージスを打ちまかすための、

そしてそれによって台湾海峡のような重要な紛争地域を掌握するための中国の明確な戦略は、

対艦弾道ミサイル、低高度巡航ミサイル、高高度超音速ミサイルを

イージス搭載艦めがけて大量に、それぞれ異なる方向およびベクトルから

一斉にに打ち込むと言うものである。

 そんな猛攻撃を受ければ、アメリカ軍自慢のイージス・シールドも粉々になってしまうだろう。

 アジアにおける最終的な軍事バランスについて考える際に言っておかなければならない事は、

アメリカ最大の敵は中国それ自体ではなく単に「地理の過酷さ」

(アメリカがアジアから遠いために生じる問題を表す、アメリカの軍関係者がよく使う言い回し。

「(遠)距離の格差」とも言う)かもしれないと言うことである。

有り体に言えば、1万キロ彼方のアジアまで出撃するのでは、たとえ前進基地と

空母戦闘群と長距離爆撃機の力を合わせたとしても、

補給路を確保してホームグラウンドで戦う近代的装備の中国には、

技術的には相変わらず勝っていたとしても太刀打ちできないだろう。 

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【米中もし戦わば】030-02米軍と中国軍の技術的な差は急速に縮まっている

これまで述べてきたように、中国は、サイバースパイ行為と伝統的なスパイ行為、

それに外国製品をリバースエンジニアリングを巧みに組み合わせて

外国の軍事技術を盗みだしているのでアメリカ軍と中国の技術的な差は

急速に縮まっているが、アメリカの製造業の多くが中国に拠点を移して

それに伴って多くの「軍民両用」の技術が中国に転用されているため、

その速度にさらに拍車がかかっている。

サイバースパイ行為の結果、中国はアメリカの第5世代戦闘機と同等の戦闘機を

出動させることができるようになった。

第5世代戦闘機は、アジアの航空支配の要である。

同時に中国はアメリカ軍から盗み出した設計図をもとに大量のドローンを製造し、

ビル・ガーツが「アメリカ海軍の心臓部」と呼んでいるイージス戦闘管理システムを

もサイバー戦士に盗み出させた。

また中国は、冷戦時代スタイルの従来型スパイ行為によって、

弾道ミサイルや巡航ミサイルの技術を盗み出した。

その技術を使って大量に生産されたミサイルが、今ではアメリカの艦船や前進基地や

諸都市に向けられている。

特に憂慮すべき事実は、ロシアとの軍縮条約に縛られているアメリカのミサイル保有数と

比較して、中国のそれの方がはるかに多いことである。

 ロシアと言えばすでに述べたように、現在中国の領空を防衛しているのは

世界最強のロシア製防空システムである。

 その他にもオーストラリア、フランス、ドイツといったアメリカの友好国から多くの

「軍民両用」技術を取得したことによって、中国は今では、事実上探知不可能な

ディーゼル電気方式潜水艦や最新式ヘリコプター、さらには、

極めて威力の高い巡航ミサイルを搭載したミサイル艇まで配備することができるようになっている。

 アメリカの質的優位が失われかけている事についてペンタゴンの元アナリスト、

マイケル・ピルズベリーは次のような哲学的な見解を述べている。

従来、我々はこう考えてきた。

 「アメリカの技術はダントツで世界一だ。

 アメリカの艦船も戦闘機も、ミサイルの電気回路や通信能力も、

他国の20年先を行っている」。

 それは真実だった。

そう考えたのは間違いではなかった。

 問題は、技術の管理が緩むにつれて、アメリカ軍の優位性の基礎が

次第に流出してしまったことだった。

 スパイ活動や違法な手段によるものもあったが、単にアメリカが輸出したことによる

流出も多かった。

同時に、アメリカ防衛研究開発予算を削減してしまった。

 軍人の中には、「われわれは撒くための種を食べてしまったのだ」と嘆く者もいるが、

彼らの言う通りだ。

 つまり、アメリカに最良の潜水艦、最良の無線通信、最良の暗号システム、

最良の戦闘機をもたらしていた数々の発見が今も失われてしまったと言うことだ。

 これに追い打ちをかけるように、ブルッキングス研究所の

マイケル・オハンロンはこう述べている。

現在我々が力を入れている技術の性質が、中国はその防衛費の多寡にかかわらず

西太平洋で我々の資産を脅かすのは容易にしている。

アメリカはミサイル防衛を構築することができるし、

中国がミサイルにかける10倍のカネをミサイル防衛に費やすこともできる。

 だがそれでも、このような競争では攻撃側に利がある。

だから、アメリカの防衛予算が中国を回り続けたとしても、技術の重点が移ったことにより、

西太平洋でアメリカ軍がこれまで通り自由に活動することは難しくなるだろう。 

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【米中もし戦わば】030-1第4部戦場では何が起きるのか?

第30章質の米軍VS量の中国軍問題次の記述のうち、

中国とアメリカの軍事バランス及び、通常戦争が起きた場合に予想される勝敗を最も

的確に表現しているものを選べ。

 ①技術的に大アメリカ軍が中国軍をしのいでいる。

よって、戦争になれば今ならアメリカが勝つ

②中国は急速にアメリカとの技術的な差を縮めている。

 よって、長期的には、勝敗の予想が次第に困難になる

③中国の経済成長がアメリカを上回り続ければ、中国はアメリカよりも

はるかに大量の兵器を製造するようになり、いつかは、アメリカが技術的優位を

保っていたとしても中国がそれを量で凌駕することになる

⑤ 1 ~4のすべて

アメリカと中国の軍事力を比較する時、偉大なピッチャー、サチェル・ページの名言

「後ろを振り返るな。誰かが追いついてきているかもしれない」を思い出さずには

いられない。

現在、アメリカ軍の方が技術的に優れている事は確かだが、

中国はその差を急速に縮めている。

 さらに言えば、中国がその差を自力で技術革新することによってではなく、

多岐にわたる知的所有権窃盗作戦によって縮めている。

 しかも、技術を盗まれているのは主としてアメリカ軍自身である。 

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【米中もし戦わば】029-03ロシアでは中国脅威論も広まっている

経済的・政治的・軍事的結びつきから中国とロシアはおのずと同盟関係を結ぶように

思われる一方、より長期的に見ると、ロシアが「バランスを取るために」

アメリカやその他の同盟諸国と手を組み、中国の台頭を抑えようとする可能性も

充分考えられる。

その最大の理由はおそらく、ジョン・ミアシャイマー教授が大国政治の理論の中で

重要なモチベーションの1つとしてあげているもの、つまり恐怖である。

中国に対するロシアの恐怖は、ロシアがほぼ10倍の人口を要する中国と

世界最長の国境線を共有していると言う事実に端を発している。

しかも、ソ連崩壊以前、中国のGDPはロシアのわずか3分の1ほどだったのに、

現在ではロシアの4倍以上へと驚異の成長を遂げている。

人口と経済のこのような厳しい現実に直面して、多くのロシア人が、

極東ロシアへの中国人の合法・非合法の移住が、ロシアの国土を

着実に侵食していくだろうと心配している。

同時に、ロシアの天然資源への中国のあくなき欲求によって、

ロシアついには中国の「植民地」にされてしまうのではないかと言う恐怖も抱いている。

今ではアフリカの大部分、ラテンアメリカのかなりの部分、

オーストラリアやカナダの1部が中国に支配されているが、

それと同じやり方で中国がロシアをも支配するようになるだろう。と。

 ロシア国内には、ますます強大化する中国はいつか、帝政ロシアが中国から

領土を奪ったことを盾に、天然資源に富めるシベリアを武力によって

強奪しようとするのではないか、と懸念する声さえある。

ひょっとしたら、清が帝政ロシアにはウラジオストク港を割譲させられた

1858年の愛琿条約が不平等条約であったことを盾に、

中国からウラジオストク港を返せといってくるかもしれない、と。

このような現状から考えれば、両者にとってずっとマシな長期戦略は

アメリカ主導の「バランス連合」に加入することだろう。

そのほうが、ロシアの技術と天然資源を世界最大の産業基盤と兵力を人口に結びつける

中露同盟よりも、ずっと世界の安定と平和的バランスに貢献するだろう。

アメリカ主導のバランス連合のメリットはこのように明らかなのだが、

冒険主義的なロシアがクリミヤ併合を、その正反対の方向へ、つまり中国の腕の中へと

進んでいるように見える。 

民主主義と自由、法による支配、国境線の現状維持、領土、領海をめぐるあらゆる紛争の

国際法による非暴力的解決を徹底し、それらに基づいて世界平和を実現するためには、

これはどう考えても喜ばしい見通しとは言えない。 

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【米中もし戦わば】029-02中露軍事同盟が結ばれる日が来るか?

もちろん、プーチンを持ち上げる事の利点は、そうすることで、中国もロシアそっくりの

拡張主義を力ずくで推し進める大義名分が得られることである。

両者の主張には明らかな類似点がある。

軍事大国となった今、中国にも「屈辱の100年間」に不当に切り取られた領土を

回復する権利があるのだ(皮肉なことに、帝政ロシアも当時は切り取り側に

加わっていたのだが)。

中露両国が同じような論法で武力行使を正当化している事は、米中関係にとっては

明らかに気がかりである。

だが、中露共通のストーリーには、さらに気がかりな可能性がちらついている。

中国とロシアが、領土を不法に奪われたと言う過去の歴史と世界最強の独裁国家と言う

現在の状態に共通の利害を見出し、アメリカ及びその民主的同盟国に対抗して

戦略的軍事同盟を結ぶかもしれない、と言う可能性である。

 そのような中露軍事同盟が及ぼす影響について考えるにあたって、

次の事実を再確認しておこう。

確かにロシアは、旧ソ連に属していたバルト三国やウクライナやベラルーシ、

コーカサスや中央アジアの社会共和国を失ったし、チェコスロバキアや東ドイツや

ハンガリーやポーランドもはや従属国ではないが、それでも依然として

世界最大の国である。

実は、ロシアの国土面積はアメリカのほぼ2倍である。

ロシアの広大な国土は様々な天然資源にも恵まれている。

石油の埋蔵量は世界一、石炭埋蔵量は世界第二位だし、天然ガスの埋蔵量は

世界のそれの40%、森林資源は5分の1を占めている。

さらに、アルミニウム、銅、プラチナ、スズなども豊富に産出する。

それだけでも、「エネルギー超大国」ロシアが「世界の工場」と

手を結ぶ意味があると思われる。

だが、中露同盟が結ばれるとすれば、その理由は天然資源と製造能力の

実利的結びつきだけでは決してない。

政治的な面で、ロシアと中国は、共産主義国と言う共通の過去とともに

独裁国家と言う現在の政治形態をも共有している。

 ロシアが民主主義国と言うのは名目のみである。

 また軍事面でも、ロシアは中国に先進的兵器システムを供給している。

 ロシアの軍事技術と中国の膨大な兵力が長期的に結びつけば、

質量ともに兼ね備えた軍事同盟の成立が予想される。 

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【米中もし戦わば】029-01第29章16軍事同盟の成立

問題

現在の中国におけるロシア大統領ウラジミール・プーチンの評価により近いものを選べ

①帝国主義者の悪党。

東ヨーロッパの軍事的冒険主義を阻止しなければならない

②ロシアの偉大な英雄。

帝国主義や嘘つきの西側に盗みとられた領土を取り返すために、

プーチンはロシアの軍事力を正当に行使している

もちろん、大方の西側メディアの見解を正確に表明しているのは、

1の「帝国主義の悪党」である。

アメリカ主導の連合軍は、ジョージアやウクライナなど東欧諸国における

プーチンの拡張主義的・現状変更的な活動を阻止しようとしてきた。

だが、中国国内では、「プーチン大帝」などと言われることがあるように、

2の「英雄」と言う評価が大勢を占めるものと思われる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、この元KGB長官に関する本が

中国では「飛ぶように売れて」いて、ベストセラーになっていると言う。

実は、ウラジミール・プーチンを英雄視する事は、「アメリカ帝国主義に率いられた

西側が、これまで中国やロシアなどを食い物にして世界の領土を切り分けてきた」

と言う中国側のストーリーときっちり整合性が取れている。

 ロシアは、ミハイル・ゴルバチョフがロナルド・レーガンに「騙される」までは

ソ連の領土だった土地の多くを失った。

だから、奪われた領土を取り返すため、プーチン大帝がロシアの強大な軍事力を

行使するのは当然かつ正当なことなのだ、と言うわけである。 

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【米中もし戦わば】028-03中国の官僚機構は破綻している

企業や地方官僚の勝手な行動と言う問題のほかに、省庁間の連携がなっていない

と言う問題もある。

最も問題なのは1つの政府機関が外交政策を取り仕切っているわけではないと言う点である。

例えば、北朝鮮問題を日々扱っているのはアメリカでは国務省、中国では外交部である。

だが、中国外交部が北朝鮮問題の真の主役ではない、とクライネ=アールブラントは言う。

外交政策の決定は外交部ではなく、人民解放軍からかなりの情報提供受けた上で

中国共産党中央対外連絡部が行っている。

したがって、中国と交渉する場合、交渉は何の成果も得られない。

このような分断が紛争と判断ミスの温床である事は、2012年のスカーボロ礁をめぐる

中国とフィリピンの紛争にはっきりと表れている。

第24章で述べたように、その時アメリカは仲裁者として両国の間に入り、

「中国とフィリピンの双方がその海域から撤退し、その後、交渉によって

平和的に紛争を解決するよう努力する」と言う休戦協定を取りまとめた。

だが、その後、協定に従ってフィリピンが撤退したにも関わらず、

中国は撤退するどころか前進してスカボロー礁を奪取し現在に至っている。

中国外交の不誠実さの見本のようなこの事例について、クライネ=アールブラントは、

この協定がアメリカ国務省と中国外交部との交渉によって取り決められたことが

その原因だと説明している。

 外交部は中国の官僚組織の中では比較的立場が弱く、その決定は「他の省庁によって

たやすく覆されてしまう」クライネ=アールブラントは、アメリカ大統領が結んだ条約を

議会が批准しないことはいくらでもあると述べてアメリカもこのような不誠実な

外交を行う傾向があると公平に指摘している。

その中で、中国は未だに根に持ってるのは1979年の台湾関係法だ、

とクライネ =アールブランとはいう。

ジミー・カーター大統領による中国との関係正常化に対抗して、

議会は、「中華人民共和国との関係正常化をほとんど無効にする法律」を可決した。

 我々西側の人間は、アメリカのような民主主義国家には様々な意見があるが、

独裁体制の中国には1つの意見しかないと思っている。

だが、そんなことはないはずだ、と。

結局のところ中国との交渉成功の鍵はその問題に関して実権を握っているのが

誰なのかをまず見極めることだ。

 というのがクライネ=アールブラントの結論である。

 だが、そのためには不透明極まる官僚機構の裏の裏まで知らなければならず、

よってそれは簡単なことではない。

この問題が解決するまでは、残念ながら、必ずしもそうではなく、

単に官僚機構の破綻によって中国は協定を反故にするのを続けて見続けることになるだろう。

 結果は同じである。

 そして、話し合いによって問題解決できなければ、武力によって解決が図られる可能性は

明らかに高まるだろう。 

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