最終更新日 2020年9月21日月曜日 11:25:57
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【米中もし戦わば】015-05、サイバースパイによって盗みとった機密情報を兵器製造に利用

第3点が最も問題である。

 中国は昔ながらのスパイと近代的サイバー戦を組み合わせ、

アメリカの最新兵器の設計図を盗み出しているのだ。

 例えば前述の成都J-20について考えてみよう。

J-20がステルス技術を獲得したのは、1999年、アメリカの戦闘機F-117ナイトホークが

セルビア上空でソ連製のヴィンテージ物のミサイルSA-3に撃墜されたときのことである。

 アメリカのステルス戦闘機が撃墜されたのはそれが初めてだった。

 ペンタゴンはそれをまぐれあたりだとして片付けたが、

セルビアの田園地帯に飛散したその残骸は中国人スパイによって組織的にかき集められた。

 セルビアの農民や一般市民の家を文字通り訪ね歩き、かなりの金額と引き換えに

F-117の残骸(中には小型車ほどの大きさのものもあった)を回収したのである。

 集められた残骸が中国に送られて組み立てられ、こうしてステルス技術の多くが

中国の手に渡った。

 もちろん、ステルス性能は第5世代戦闘機が持つ数多くの要素の1つに過ぎない。

 それなら成都J-20の残りの技術はどうしたのかと言えば、

中国は、サイバースパイ史上最も包括的で効果的なハッカー行為によってそれを獲得したのだった。

2007年、中国のサイバー軍団はペンタゴンに不正アクセスして統合打撃戦闘機に関する

機密情報の多くを持ち去ったばかりでなく、F-35製造に協力していた

イギリス最大の防衛契約企業BA Eにも侵入し、そうとは知らないBAEが

第5世代戦闘機の設計や電気システムや性能に関する重大データを盗み出した。

新旧のスパイ技術を駆使して、中国はこれまで、研究、開発に何兆ドルもの

税金が注ぎ込まれている

アメリカの機密情報を盗み出してきた。

アメリカへのさらなる打撃として、中国はこのようなスパイ行為の成果を兵器製造に

利用している。

 こうしたコピー兵器の中には、やがて本家本元を超える性能を獲得するものも

あるかもしれない。

 最後に、アメリカの最新テクノロジーを盗み出す中国の行為は

今後エスカレートしていく可能性があることを述べておく必要がある。

国際評価戦略センター上級研究員リチャードフィッシャーは、

中国が第5世代に追いついてしまったときにアメリカが制空権を維持する

唯一の方法は第6世代戦闘機を開発することだけだと述べ、

政治家にそれを強く要請している。

 もちろん、同等の経済力を持つ強豪国より優位な立場を保つために

さらに何千億ドルも出するのは、納税者にとって大きな負担である。

 同時に、このような軍拡競争はより生産性の高い民間投資から資源を転用し、

ただでさえ低迷しているアメリカ経済にさらに負担をかけることになるだろう。

こうした理由だけでも、アメリカの納税者が中国のスパイ行為に怒りを覚え、

将来に不安を感じるのは当然だといえよう。

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【米中もし戦わば】015-04、米国は経済力の低下を理由第5世代戦闘機の製造中止

「米中戦争は起きるか」を考える上で、F-22およびF-35計画について

述べておかなければならないことが少なくとも3点ある。

第1点

F-22は200機足らず製造されたが、その後、景気の低迷、予算超過、

財政赤字増大を理由に議会はそれ以上の製造を中止してしまった。

これはアメリカの経済力の欠如がペンタゴンの無能さと相まって

軍事力展開能力にいかに速やかに悪影響を及ぼすかを示した典型例である。

F-22の現在の保有数では、世界的規模で制空機能を果たすには不十分だと

一般に考えられている。

第2点

アメリカのお寒い戦闘機製造計画とは対照的に、中国はF-22と35の

国産コピーバージョンの製造を急ピッチで進めている。

例えば、成都J-20 (マイティドラゴン)はF-22とF-35の要素を併せ持つ

多用途戦闘機だと思われるし、おそらくは空母艦載機として設計された

成都J-31 (グライファルコン)はF-35を思わせるコンパクトな作りである。

 2011年に成都J-20は一般公開されたが、そのタイミングが実に挑発的だった

「ロバート・ゲイツ国防長官が胡錦濤国家主席と会見するわずか数時間前」だったのである。

 しかも、その会見の目的は皮肉にも「米中関係修復」だった。

 別に長官自身は、「胡主席は単なる偶然の一致だと断言した」と述べて

このばつの悪い出来事はやりすごした。

だが、この説明を額面通りに受け取れば、これは、中国の政治的トップが

ゲイツに面と向かって嘘吐いたか、あるいは、中国軍の自律性が

これまで信じられていたよりもはるかに高いかのどちらかを意味していることになる。

 保守系のウォールストリートジャーナル誌の社説は、

「仮に軍が意図的に胡主席に隠していたのだとすれば、

軍のタカ派が、アメリカとの関係も含めた中国の外交政策を次第に牛耳るように

なってきたと言う懸念が強まる」と述べている。

 胡錦濤が嘘を吐いたにせよ、群が隠したにせよ、

これは平和の見通しにとっては明らかに悪いニュースである。 

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【米中もし戦わば】015-03、開発が進む第5世代戦闘機の実力

中国は、二大戦略に従って近代化プログラムを進めてきた。

 一方の戦略は、1950年代から60年代の、第二・第3世代のヴィンテージ物の

航空機を退役させ、少なくとも第4世代のテクノロジーと交代させることである。

 もう一方の戦略には、マンハッタン計画並みの切迫感と大量のスパイ活動が伴っている。

その主眼は、アメリカの「統合打撃戦闘機」(F-22 やF-35戦闘機など)に匹敵する

最新の第5世代戦闘機の開発である。

 第5世代戦闘機が中国にとってどれほど重要かを理解し、その開発が

エスカレートする可能性があることを理解するためには、

まず、第二次大戦以来アメリカが常にとってきた基本戦略を理解する必要がある。

 大日本帝国にハワイ上空の制空権を握られ真珠湾がほとんど壊滅状態に陥ったあの

「屈辱の日」以来、アメリカは、常にまず空から邪魔者を取り除き

敵の作戦空域を制空戦闘機で支配すると言う戦略をとってきた。

 そして、このような制空戦闘機の最先端がF-22のような第5世代戦闘機なのである。

このようにしてひとたび航空支配を確立すれば、F-35などの他の戦闘機や

B-2やF-35などの他の戦闘機やB-52といった長距離爆撃機は、

海上の敵艦船や陸上の敵資源(戦車や砲台や人員など)を思うがままに攻撃することができる。

 中国は第三次台湾海峡危機で身を持って学んだように、そして、アフガニスタンや

イラクやセルビアでのアメリカの戦いぶりを、明敏な第三者として分析して

学習したように、このような航空支配によってアメリカは戦場を制し、

勝利の確率を最大限に高めてきた。

 アメリカが作戦空域と戦場を制することができるかどうかは、当然のことながら、

戦闘機技術において優位を保てるかどうかにかかっている。

 そこで問題になるのは、先ほど挙げたF-22である。

ロッキードマーチンF-22ラプターは、まず間違いなく世界最強の戦闘機である。

 第4世代のステルス性と第5世代の敏捷性を兼ね備え、アフターバーナーなして

超音速巡航が可能で、高速の倍近い速度で長距離を飛ぶことができる。

 最後にこれが最も重要であるが、F-22には、おびただしい数のリアルタイム、

データを統合して1つの画面にシンプルに表示する、「センサーフュージョン」と

呼ばれる機能が備わっている。

 ロッキードマーティンのチーフテスト・パイロット、ポールメッツは

センサーフュージョンについてこう述べている。

 「おかげで、パイロットがセンサー・オペレーターやデータ分析者を兼任しなくてもよくなった。

 これは、戦闘機の出現以来、コクピット設計に起きた最も重大な変化だ。

これによって人間の膨大なRAM (ランダムアクセスメモリ)を、直感や洞察や

創意工夫や推論(これらこそ、人間を危険な生存在にする特性であり、

戦闘機パイロットの殺傷能力を向上させる特性だ)のためだけに使えるようになった」

F-35についても説明しておこう。

 F-35の任務は防空と対地攻撃及び偵察である。

 また、これには通常のタイプ、空母からの短距離離陸タイプ、垂直離陸タイプの3タイプがある。

元海軍パイロットで現在はペンタゴンの高官のエドティンバーレイクは、

F-35についてこう述べている。

F-35はゲームチェンジャーだ。ステルス性とセンサーフュージョンを兼ね備え、

パイロットに、編隊全体に関する情報とともに、リアルタイムの戦闘情報に基づいて

状況判断する能力を提供する。

 これは、従来のコクピットの情報では得られなかった能力だ。 

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【米中もし戦わば】015-02米国の空母戦闘群に手も足も出なかった人民解放軍

12月、これに対してアメリカがついに反応し、空母ニミッツを中心とする空母戦闘群を

台湾海峡に送り込んだ。

 アメリカの艦船が台湾海峡をパトロールするのは1976年以来のことだった。

 空母戦闘群到着後、数ヶ月は平穏な時期が流れた。

 だが、1996年3月、台湾初の総統直接選挙が近づくと中国が再び圧力をかけ始めた。

 それは3月初め、3度目と4度目の弾道ミサイルによる1連の威嚇射撃から始まった。

 その後5日間に中国は、「海軍艦船およそ40隻、航空機およそ260機、

兵士推定15万人」の参加する大掛かりな作戦演習重をも行った。

最初と2度目のミサイル試験が台湾の主要な航空路線と海上交通路を避けて行ったのに対して、

あまりにもそれらに近すぎ、台湾海峡は事実上封鎖されてしまった。

これに対してビル・クリントン大統領は、既に太平洋で待機していた

空母インディペンデンスを中心とする空母戦闘群を台湾海峡へ移動させ、

ペルシャ湾に停泊していた空母ニミッツに高速で台湾に戻るように命じた。

台湾の有権者を恫喝しようとしていた中国指導部のやり方は完全に裏目に出た。

台湾海峡危機が、李登輝の得票率を相対的多数から過半数へと押し上げたのである。

 得票率54%で、彼は台湾史上初の総統直接選挙に勝利した。

 アメリカの空母戦闘群がやってきた時、人民解放軍は当然のことながら、

制海権と制空権の両方を掌握している軍隊にはても足も出ないことを思い知った。

 こうして、第三次台湾海峡危機は中国にとって、貴重な学習体験であると同時に

もう二度と繰り返してはならない体験となった。

というのも、中国がいつか台湾は我が物にするためにはアメリカ海軍を

無力化する必要があるし、そのための唯一の方法は、制空権をアメリカに与えないことだからである。

 それを悟って以来、中国は海軍を世界クラスへと成長させようとするとともに、

接近阻止戦略によってアメリカの空母を台湾から遠ざけておこうとしている。

 中国軍も、時代遅れの航空機の寄せ集めから、地域のどんな競合国とも

肩を並べられる近代的大艦隊と着実に変貌を遂げている。 

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【米中もし戦わば】015-01第15章第5世代戦闘機の実力

問題

1995年~96年の第三次台湾海峡危機によって戦略的重要性が浮き彫りにされた

ものを選べ。

①制空権

②制海権

③ 1と2の両方

1995年から96年にかけての台湾海峡危機によって、中国軍上層部が制空権と

制海権の必要性に突然目覚めた。

 40年間で3度目の、台湾をめぐるこの危機の引き金になったのは驚いたことに、

総統候補者、李登輝の「台湾の民主化経験について、

母校のコーネル大学で講演するつもりだ」と言う、たった一言の声明だった。

 李登輝が公式に台湾独立支持を表明するかもしれないと恐れた中国は、

1995年7月、台湾の北端から60キロほどしか離れていない場所で一連の

「威嚇射撃」的なミサイル試験を行った。

この挑発行為の後数ヶ月にわたって、ミサイル試験の第二波と実弾演習が続き、

11月にはついに「台湾侵攻演習」が行われた。 

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【米中もし戦わば】014-04アメリカのイージスシステムを圧倒する小型艦

水上艦に関する記述を締めくくる前に、駆逐艦や空母といった大型艦だけでなく

小型艦の話もしておこう。

022紅稗型ミサイル艇は、中国の軍用艦中最も小型ながら、接近措置戦略に最適の艦船である。

 長さわずか45メートルのこの小型艦はステルス性に優れ、巡航ミサイル2発を搭載して

時速75キロに迫るスピードで航行し、強烈な打撃を与えることができる。

 現在、中国はこのミサイル艇を大量生産している。

これは、毛沢東のトレードマークだった「人海戦術」にぴったりな兵器である。

 例えば、このミサイル100隻がアメリカの空母戦闘群めがけて高速で押し寄せ、

「一斉射撃」を浴びせるのと同時に、対艦弾道ミサイル、地上発射巡航ミサイル、

攻撃型潜水艦から発射されたミサイルも一斉に空母戦闘群に襲いかかるような

事態が起きるかもしれない。

そうなれば、アメリカのイージスシステムがどれほど優秀だろうと

、数で圧倒されてしまうだろう(こうした人海戦術に対してイージスシステムが

どれだけ有効か、実地試験が行われた事は1度もない)ヨシフスターリンの格言

「量も質のうち」を思い起こさせるシナリオである。

中国のミサイル艇についておそらく最も憂慮すべきなのは、

中国がその設計図を最初にどこから手に入れたかと言う点である。

中国のディーゼル電気方式潜水艦隊がヨーロッパ製であるのと同じように、

中国のミサイル艇に使用されている「軍民両用」技術も、一般的にアメリカの同盟国と

見なされている国によって提供されている。

オーストラリア企業AMDは、当初、厳密に民間利用目的に限定した上で

双胴船を中国に販売した。

だが、一度ビジネス上のつながりが確立してしまうと、中国は言葉巧みにAMDを

広州の企業との合弁事業に誘い込んだ。

AMDの基本的な基本的な設計図を軍事用途に合わせて変更したのはこの合弁企業

シー・バス・インターナショナルだった。

 こうして我々は現在、オーストラリアの設計図をもとに中国が建造した、

フランス製ディーゼルエンジンを搭載した軍艦から、ロシア製ミサイルが

アメリカや日本やベトナムの艦船に発射されるかもしれないと言う事態に直面している。

 こんなグローバリゼーションは御免被りたいものである。 

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【米中もし戦わば】014-03、南シナ海の制空権を「遼寧」で握る

現在、遼寧はベトナムにとっては恐怖の源でもある。

 ヘリテージ財団のディーン・チェンはこう述べている。

 南シナ海を見て、それから各国の空軍基地と飛行場がどこにあるかを見るれば

すぐにわかることだが、南シナ海はその大部分が陸地から非常に遠い。

だから、たとえ小さくても空母を一隻そこに配置すれば、

いわゆる防空6カプセルのようなものができることになる。

 砂漠の盾作戦、砂漠の嵐作戦、ユーゴスラビア紛争、アフガニスタン戦争と、

過去20年間の戦争から中国は、現代戦に勝利するには制空権を握ることが

必要不可欠だということを学んだ。

制空権があっても勝てるとは限らないがい、なければ確実に負ける。

だから、空母を配備できる能力は、たとえそれによってほんの2、3機の航空機を

飛ばすことしかできないとしても、近隣諸国がそこに航空機を

持続的に飛ばしておくことができない場合には大きな利点になる。

 より一般的な遼寧の戦略的価値について言えば、確かに遼寧はアメリカ空母のような

高度な航空電子機器や航空管制ソフトウェアはない。

それに、遼寧はアメリカの空母に比べてフットボール場1つ分ほど短いため、

フル装備した航空機は遼寧の甲板から離陸することはできない。

 とは言え、覇権を確立するするために中国は息の長い戦いを続けようとしている。

 だから、遼寧は訓練艦として、「2050年まで海軍力を世界に投射する」と言う

劉華清提督のビジョンにかなり良く合っている。

少なくとも、中国の造船所がフル稼働している現状から考えれば、

中国が何隻もの空母を出動させる日は近いものと思われる。

空母だけでなく、あらゆる外的脅威から空母を守る巡洋艦や駆逐艦といった、

空母戦闘群に不可欠な「護衛艦」も出動させることになるだろう。

「護衛艦」の概念と役割を理解するため、典型的なアメリカ空母戦闘群について

考えてみよう。

空母戦闘群には、中心となる空母のほか、対潜水艦戦にも耐水上艦戦にも

対空戦にも対応できる多目的タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦が含まれている。

 この様々な目的を補助するため、空母戦闘群には、巡洋艦よりも少し小さい

アーレイ・バーク級駆逐艦に二隻及びイージス戦闘システム

(常時、何百もの空中目標を同時追跡するように設計された海軍の統合兵器システム)も

含まれている。

 さて、海軍力の世界的投射を中国が意図していないとすれば、空母戦闘群の構成する

非常に高価な主力艦を有する必要は無いはずである。

現在、中国沿海部の至る所でこうした主力艦が恐るべきペースで建造されていることを

考えれば、中国にはその意図が大いにあると言わざるを得ない。

 もちろん、中国が空母戦闘群を出動させることができるようになれば、

米中間に紛争が起きる可能性はおそらく飛躍的に増大するだろう。

中国がその向上した海軍力を背景にして(すでに現在、東シナ海や南シナ海で

着々と行っているように)海軍力で劣る近隣諸国に自分の意思を押し付けようとすれば、

その可能性は特に高まるだろう。 

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【米中もし戦わば】014-02ダミー会社を通じてウクライナから買い取った空母遼寧の誕生物語からは、中国の様々な策略とともにその軍事的意図が見えてくる。

それは、ソ連の空母「リガ」が収益した1988年12月4日から始まる。

長く複雑な物語である。

 それから10年後(ソ連崩壊から7年後)、「ヴァリャーグ」と改名されていたこの空母は、

エンジンと舵を取り外された状態でウクライナの造船所に放置されていた。

 それを、中国人実業家グループがマカオのカジノとして使うと言う名目で買い取った。

 もちろん、アメリカ国務省とペンタゴンはそんな策略には騙されなかった。

 この取引に関わっていたダミー会社の経営者が元中国軍人だっただけになおさらだった。

さらに、中国がこの手の策略を使うのはこれが初めてではなかった。

 1985年に同じようなダミー会社がオーストラリアの空母「メルボルン」を

スクラップにすると言う名目で買い取った時も、

「メルボルンの飛行甲板は無傷で残され、空母艦載機の離着陸訓練用に使用された」。

 ヴァリャーグがが中国の造船所で修理されて中国初の作戦行動可能な空母になるのを防ぐため、

アメリカ当局は密かにトルコに圧力をかけてボスボラス海峡通過を阻止させようとした。

 この作戦が功を奏し、ヴァリャーグが1年以上の間黒海をあてもなく周回していた。

 だが結局、財政事情の厳しいトルコが中国の魅力に負け、ヴァリャーグが解放された。

 1時、強風と高波のために牽引ワイヤーが外れたりといった危険な航海を終えて

中国に到着したヴァリャーグは、大連の造船所で改造、再装備されて遼寧として

生まれ変わり、2014年4月に海上試運転が行われた。

現在、遼寧は中国国民のプライドの源である。

至るところに写真が飾られているし、小さくな子供から年配者まで誰もが、

空母から航空機の発進するときの甲板員の特徴的なポーズを真似て喜んでいる。

1970年代に中国のある高官が「中国は絶対に空母は造らない。

 空母は帝国主義の道具だし、それに撃ち落とされるのを待っているのを待っている

格好の標的のようなものだからだ」と言ったのは有名な話だが、

それを思うとまさに隔世の感がある。 

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【米中もし戦わば】014-01第14章小型化が空母戦闘を襲う

問題

中国の空母「遼寧」に関する最も正しい記述を選べ。

①中国国民の愛国的誇りの象徴である

②訓練用小型空母であり、太平洋上のアメリカ空母戦闘群はほとんど

あるいはなんらの脅威も与えない

③フィリピンやベトナムといった近隣諸国に強い圧力を及ぼし得る

④ 1 ~3のいずれも正しい

中国の空母「遼寧」がアメリカに直接的な危険をもたらさないことに疑問の余地は無い。

 この比較的小型の空母には新型電子機器や兵器はほとんど搭載されておらず、

飛行甲板が短いため、軽装備の航空機しか離陸できない。

とは言え、中国がずっと大型で近代的な空母を数隻建造しようとしていることを考えれば、

遼寧を中国人の愛国的誇りの象徴に過ぎないとして片付けた多くの専門家は、

練習台としてのその価値を過小評価しているかもしれない。

中国が東シナ海や南シナ海で抱えてる多くの領土問題を自分に都合よく

解決しようとしていることを考えれば、遼寧を過小評価する専門家たちは

威圧手段としてのその役割を見過ごしているとも言えよう。 

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【米中もし戦わば】013-03ヨーロッパの最新軍事技術が「民間利用」と言う名目で中国に渡っている

中国が保有するディーゼル方式潜水艦隊の性能の高さは、

「接近阻止、領域拒否」戦略は中国にとっていかに重要であり、

それがアメリカ艦隊にいかに危険かを物語っているだけでは無い。

 それは、一般的にアメリカの同盟国と見なされている国々がアメリカにとって

脅威となる技術を、そうと分かっていながら大金と引き換えに中国に提供している

と言う事実をも明確に示しているのである。

 ドイツ製の最高級ディーゼルエンジンは、今までは中国の潜水艦やフリゲート艦など

他の艦船にも当たり前のように搭載されているが、本来ならこれは、

中国には全く入手できないはずの製品である。

 兵器関連品の対中輸出禁止措置は、アメリカとヨーロッパで現在も継続中だからである。

 この禁止措置は1989年の天安門事件を受けて人権と言う見地から始まったものだが、

最近では、少なくとも、ヨーロッパ諸国にとっては形骸化してしまっている。

そのため、ドイツやフランスなどは、軍事利用目的ではなく民間利用目的だと言う

名目で、ディーゼルエンジンなど「軍民利用」の技術を中国にたやすく売り渡している。

 この「軍民両用」詐欺によって、ヨーロッパ企業は鉄面皮にも「民間利用」と言う

抜け穴を利用して中国に最先端の装備を売り渡し、フィリピンやベトナムの沿岸警備隊を

脅したりアメリカや日本の艦船を沈没させたりするための準備を中国の潜水艦に

整えてやっているのである。

兵器関連品の対中輸出禁止措置がヨーロッパ企業にとって単なる形式に過ぎない事は、

ストックホルム国際平和研究所の統計にも表れている。

 これを見ると、フランスとイギリスとドイツの製品だけで、中国が輸入している

兵器関連品の20%近くを占めていることがわかる。

「漢和防衛評論」氏のアンドレイ・チャンは、「ヨーロッパのテクノロジーがなければ、

中国海軍は動くことができないだろう」と簡潔に述べている。

つまりレーニンの古い格言をもじって言えば、「資本主義の協力者たちは、

資本主義者等当人をつるす縄でも喜んで売るだろう」と言うことである。 

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