ところが、2016年6月17日に事件が起きます。
ダオはハッキングされ、総額3600万ETHが失われたと言うものです。
ICOで注目され、150億円ほどの資金を集めたダオでしたが、
そのうちの75億円分をハッカー勝手に持ち出して逃げたのです。
もちろん、イーサリアム価格も暴落します。
ところが、75億円をハッカーから奪い返すホワイトハッカーが登場して、
サイバー空間上で数十億円の争奪戦が起きました。
75億円も失われと言うのは、ダオだけの問題ではなくプラットフォームとしての
イーサリアムにも問題があったのではないかと言うことで、イーサリアムの
運営元の話し合いで、本来は禁じ手である「そのような取引をなかったことにする」
(これを「ハードフォーク」と呼びます)ことを決定します。
ここで思い出して欲しいのですが、ブロックチェーンは「取引履歴」がひとつづきの
チェーンになっていることが最大の特徴で、だからこそ後から改竄することができず、
それが信用につながっていたわけです(198ページ参照)。
ところが、「その取引はなかったことにする」、つまり問題のある取引の直前で
取引を止めてそれ以前の状況に戻れば良いと言うことを、自分たちで決定してしまいます。
その結果、本来枝分かれしないはずのブロックチェーンが枝分かれしてしまい、
ある時刻を境に、後から書き換えられたブロックチェーンにつながるりイーサリアム、
書き換えられる前のブロックチェーンにつながるイーサリアム
(これを「イーサリアムクラシック」と呼びます)と言う、2つのイーサリアムが
同時に存在することになってしまったのです。
まさにパラレルワールド、平行宇宙のような状況です。
さらに問題を複雑にしたのは、ハードフォークの方針の決め方でした。
ブロックチェーンの主張としては、中央で誰かが管理するのではなくて
みんなで分散してやるから信用が担保されると言う面があったので
ごく少数の運営者だけで決めてしまったので、それに反発する人たちが出てきました。
純粋に中央集権的な決め方が嫌いな、ブロックチェーン原理主義者的な人たちは
イーサリアムクラシックを支持し、今回のような問題を起こさないためには
書き直しも止む無しとする人たちは新しいイーサリアムを支持して、
業界を2分する大騒ぎになっています。