韓国人はなぜ経済的な無理をしてでも大学に行くのか。
また、子弟を通わせるのか。
1988年のソウル五倫取材の時から今日まで、たくさんの韓国人に訪ねてきたが、
ほとんどが「どうして、そんな分かり切ったことを聞くのか」といった顔つきで、
「良い職を得るために決まっているではないか」と答えた。
「では、良い職とは」と尋ねると、8割位が「大きな財閥の社員か銀行員」、
あるいは「公務員か教師」と答える。
大学を卒業して大手財閥系や、非財閥系でも製鉄大手のポスコなどに入社すると、
初任給からしてレベルが全然違うのだ。
韓国語では、日本の取締役にあたる地位を「理事」と言うが、大学を卒業して、
大財閥に入り、昇進を重ねて理事になれば、年収は賃金労働者平均の7倍以上。
さらに運転手付きの大型自動車、個室と秘書が配置される。
そして、家族はみんな幸せになる…これが70年代後半から今日まで、変わらぬコリアンドリームだ。
しかし、入社先が中堅企業だと、初任給はほぼ同水準でも、その後の昇給テンポは見劣りする。
中小企業では大手営業の6割位。
それでも、高卒で就職するのと比べたら大きな開きがある。
中卒や高卒では、どんなに頑張っても、あるいは誰よりも仕事ができても、
「大学を出ていない」と言うだけで馬鹿にされ、一生下積み人生から浮かび上がれない。
簡潔に表現すれば、「大卒以上でなければ人間扱いされない」となるのだろう。
この表現は私の言葉ではない。
朝鮮日報の特集記事が「追いつめられる大学生」(11.3.13)の本記の主見出しだ。
その記事の中にはこんなことが書いてあった。
「大学の卒業資格を得る事は「選択」ではなく「必須」だ。
大学を出ずに成功神話をつくりあげた人たちの話は、ずいぶん前に消え去った。
そのため、実力や経済状態に関係なく大学教育を受けたがる人々が増え、
大学と大学生が爆発的に増加した。
80年に96校だった4年生大学が、10年には222校まで増加した。
412,404人(80年)だった大学生数は、10年には2,555,016人と6倍以上」人間扱いされない…
これを李王朝時代の身分(差別)制度にたとえれば、高卒以下は下人すなわち奴婢と言うことだ。
一方、大企業の取締役は、さしずめ今日の両班だ。
▽大卒以上 ホワイトカラー(理系研究職、事務職) = 中人か上層の常民
▽大卒以下 ブルーカラー(販売、サービス職を含む) =下層の常民か奴婢
(※中人とは、宮廷内の専門職など少数の階層だったが、
まれに両班に昇進できた)こんな事実上の身分(差別)制度がある。
その現実が、幼稚園の段階から塾通いが始まり、
大学生になっても就職向けの塾に通い続ける韓国型受験戦争をもたらした。
昔の両班は世襲だったが、今は大学さえ出れば両班になる可能性があるからだ。
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