中央日報(2015年7月10日付)は、社説で「中国発の津波に備えよう」と題し次のように論じた。
「中国株式市場が尋常でない。6月12日、5100を超えていた上海総合指数は、
7月8日3000台半ばまで下落した。
3週間に消えた時価総額は3300兆ウォン(約350兆円)に上る。
ギリシャ国内総生産(GDP)の10倍、フランス株式市場全体の時価総額に匹敵する」
上海総合指数は、3週間で時価総額354兆円が消えた勘定である。
中国GDPのざっと3分の1にあたる。
その後の相場反騰があるものの、投資家にとっては心胆を寒からしめられた「大事件」のはずだ。
今後の消費行動に影響が出ないはずがない。
現に、2015年6月の自動車販売では、その負の影響がくっきりと出ている。
「中国自動車工業協会(CAAM)は7月10日,2015年の中国自動車販売の伸び率予想を引き下げた。
理由は、中国株急落が消費者心理を悪化させる恐れがあるからだ。
CAAMによれば、乗用車にトラックやバスを加えた自動車全体の販売伸び率は3%程度になる。
2011年以来の低水準にとどまる見通しだ。
今年1月時点では7%と予想していた。
BMIリサーチの自動車アナリストは、「中国市場の力強い伸びは想像できそうもない。
今年後半はさらに悪化するだろう。
株式市場で人々が損失を被る見通しであり、経済を支えられるような状況ではない」と述べた」
(ブルームバーグ2015年7月10日付)
2015年の自動車販売予想は、1月時点の7 %増からついに3 %増と半分以下の伸びに下方修正された。
とりわけ、株価が急落し始めた6月中旬からの売り上げはばったりと止まっている。
株価急落は不動産価格の急落よりも、消費者マインドに響くものだ。
こうして8月には前年比マイナス予想へと変わった。
不動産の値下がりであれば、購入者には福音になる。
だが株価急落では一斉に持ち株評価を引き下げるので、「逆資産効果」がより発揮する。
「評価損」が出ただけで、財布が引き締まるものである。
仮に、政府の強権的な株価テコ入れ策が一時的に、効果を表しても長続きはしない。
大株主の売却禁止は6カ月間。
現在、売買停止にしている銘柄も、いずれは解禁せざるをえない。
その時はどうなるのか。
香港市場の例を見れば、いっきょに40%も下落したことがある。
現在の中国政府の強権策は、賢明とは言い難いのだ。
IMF (国際通貨基金)から、いずれ株価の強権的な下支え策について、何らかの意思表示が出るだろう。
中国政府は「人民元」のSDR (特別引き出し権)昇格を狙っている。
この問題は、決定を1年間先送りとなった。
現在の株価対策はこのSDR昇格条件には逆行している。
いつまでも続けられない理由は、いくらでもある。
株式市場を半ば「凍結」しているからだ。
この強権を解除したときの「反動安」は避けられない。
これでは、消費者が先々の株安を見込んで、購買意欲を高められないに違いない。
以上の中国経済を見れば、韓国から対中輸出が減っても増える事はないだろう。
最近、韓国の対中輸出戦略は、耐久財から消費財へとシフトしている。
中国が最近生産財の競争力をつけてきたからだ。
韓国製品と遜色ない品質が生産できるようになっている。
そこで、消費財へとシフトしつつある矢先に、今回の株価暴落だ。
製品シフトが逆目に出ており、その影響は大きくなるであろう。
韓国にとって「不運」な面もあるが、最大の問題は中国への依存度を高めるめすぎたことにある。
「最近のバブル崩壊は中国政府が招いた部分が大きい。
中国政府は、国有企業改革など経済体質を変えるため、株価の上昇を過度に後押しした。
上海株式市場は1年間1 50%も急騰した。
山が高ければ溝も深くなるしかない。
過去1年間に膨らんだバブルがいちどに抜けて手に生えないほどになったのだ。
問題は速度だ。
株価下落ペースが早ければ経済は揺れる。
お金を借りて無条件投資をしてきた中国の個人投資家は、借金を返すために貯蓄を崩し、消費を減らす。
これは直ちに金融不健全化及び不動産市場のハードランディング、企業投資減少および内需不振、
成長鈍化につながる可能性がある。
こうした最悪のシナリオが現実化すれば、世界経済は大きく揺れる可能性がある」
韓国は今になって、中国経済の脆弱性を指摘してもう手遅れである。
私は一貫して、中国経済を「泥舟経済」と呼んできた。
今回の株価暴落で、世界の中国経済を見る目が厳しくなっている。
「こんなはずじゃなかった」と言う意見が聞かれる。
あまりにも「ツーレート」である。
中国の「人口、国土、歴史」の3点セットに目がくらみ「過大評価」してきた側の問題である。
市場機能への正しい認識すら存在しないのだ。
そんな中国は、先進国へキャッチアップできるはずがない。
ここでは、歴史的な中国分析が欠かせないのである。
「中国経済と一体であるような韓国経済には、致命的になるかもしれない。
今年6月まで韓国の対中輸出率は25.5%だった。
米国(13.2%)の倍だ。
今年の対中国投資額は16億2000万ドルに上る。
日本台湾より多い。
韓国経済はどの国よりも「中国リスク」の響を大きく受けると言うことだ」
韓国は、2015年に中韓FTA (自由貿易協定)発効の予定である。
観光経済にとっては当面、さしたるメリットにならない。
関税0の比率は3%に過ぎないからだ。
工業製品の無税化は10年後である。
しかも、中国経済はこれから「斜陽化」がはっきりしていく。
生産年齢人口比率の低下が明瞭になっていく上に、
不動産バブル崩壊と株式バブル崩壊の影響が前面化するからだ。
大株主の保有株式は当面、売却が禁止されていることや、先物取引での売却も牽制されている。
株価はいちど戻しても再び、暴落が見込まれる。
中国経済の実態悪が、表面化するとともに株価がそれを反映するのだ。
韓国経済は不運にも、中国経済と一体であるような「誤解」を与えてしまった。
朴大統領の「日本嫌い」がもたらした大失敗である。
現時点で、朴大統領の手腕を論じるのは時期尚早だが、これまでのパフォーマンスでは「不合格」だ。
いたずらに、日本と対立し、中国へ身を寄せたことのマイナスが、経済面ではっきり出ている。
日本経済の回復力を見誤り、中国経済を過大評価した結果だ。
要するに、歴史的な観察眼の欠如である。
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