最終更新日 2020年11月17日火曜日 11:14:59
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【変見自在】909、偽りの教科書

敵前逃亡を強いられたマッカーサーのマニラ奪回攻略戦は昭和20年2月5日に始まった。

 その前日、日本軍側から人道的申し入れがあった。

 マニラ市北部、古い歴史を持つサントーマス大の構内に英米民間3700人が収容されている。

 マニア占領時に適性市民として収容された人たちで、このまま市街戦が始まれば、

銃砲火の巻き添えを食う。

 両軍の話し合いがつき、日本側警備兵65人の後方退去と収容所の解放が粛々と行われた。

 市街が二個大隊ほどの日本軍と70万人の現地人だけになると、

米軍は翌日から凄まじい艦砲射撃を始めた。

 それに先立つペリリュー、サイパン攻略では7000トンの爆弾が降り注がれたが、

マニラ市にはそれをはるかに超える爆弾が降った。

 市街は瓦礫と化し、多くの市民が死に、日本軍の抵抗は2週間で終わった。

 マニラは制圧された。

 日本はその半年後の8月15日に降伏した。

 GHQは9月15日、「日本軍はマニラ攻略戦時に市民10万人を殺した」と日本の新聞に

書かせた。

 当時はまともだった朝日新聞は「生き証人も捕虜もいる。

その嘘を検証しようじゃないか」と書いたら直ちに廃刊を通告された。

 朝日は米国の犬になることで許され今日に至る。

 それにしてもGHQの言い分がひどい。

 米軍はその半世紀前に現地人40万人を殺して植民地にした。

 今回も艦砲撃をためらったと思えない。

 無辜の市民が死ぬと、それをそっくり日本軍のせいにしてきた。

 日本軍二個大隊は米軍と熾烈に戦いながら毎日10,000人の市民を犯し、

殺し回った計算になる。

嘘が丸見えで、最近は四割が米軍の攻撃で死んだことを認め、

残り「6万人を虐殺した」ところまで大幅値引きしている。

 戦後2代目の華人頃大統領キリノもこの値引きに反対だった。

彼の妻子は米軍の攻撃で死んだ。

 考えてみれば彼が家族も財産も失ったのは全て日本軍の侵攻のせいだ。

 恨みは深い。

 彼は「妻は日本軍狙撃兵が撃ち殺した」「次女は日本軍兵士が放り上げ

銃剣で刺しころした」と吹聴した。

 彼は昭和23年、大統領に就任するとその祝いにモンテンルパに繋がれた

BC級戦犯3人を処刑させた。

翌年キリノは日本政府に80億ドルと言う法外な賠償要求を突きつけた。

 日本が難色を示して交渉が長引くと昭和26年1月、彼は戦犯死刑囚14人を一晩で処刑させた。

日本側が渋れば残りの死刑囚も順次吊るしていくと言う脅しだった。

 いかにも華人系らしいやり方にさすがに米国も動き、ダレスを派遣して死刑恐喝をやめさせた。

 脅しがダメなら戦犯を囲っている理由がない。

 キリノは昭和28年、BC級戦犯全員を解き放った。

 この許しがたい大統領をNHKの中田整一が「妻子を殺した悪役の戦犯に

キリノ大統領が恩赦」の美談に仕立てて皆様のNHKで流した。

 NHKは戦後GHQ製の自虐番組「真相はこうだ」を流し続けた。

 キリノの話も流した。

今更真相も語れない。

 いついっそ騙し通せと思ったか。

 中田のウソから70年。

先日の朝日新聞が夕刊一面で「キリノの美談が帝国書院の中学生の教科書に載る」と

うれしそうに報じていた。

執筆は浪野新太。

記事につけたメモには「恩赦の前に17人の死刑が執行された」とある。

 執行を命じたのはキリノで、彼が対日交渉のカードとして処刑したとは書いていない。

 かけば美談にもならないからだろう。

 信州大学教授の大串潤児にも「BC級戦犯は悪い罪人」と言わせる。

 現地の戦争裁判は華人系が仕切った。

 セブ島に行ってもいない日本軍将校に同島で住民を殺した罪で死刑を宣告している。

 どこが悪い罪びとか。

 死刑囚の「巨額の脅しに屈するな。 われわれは喜んで死んでいく」と言う言葉も残る。

70年経ってまだこんな教授や新聞が歴史を偽ろうとする。

 悲しい話だ。 

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【変見自在】907 次点は菅直人

マッカーサーに言わせると新憲法に戦力不保持を入れると言い出したのは幣原喜重郎だった。

 マックはそれを聞いたとき「腰が抜けるほど驚いた」が、幣原は諄諄と説く。

 日本が子々孫々まで戦争に無縁であるためには戦力を持たなければいい。

 今、そんな憲法を作れば「世界は我々を夢想家とあざけ笑う。

でも100年経てば我々は預言者と言われるだろう」と。

 「2人は感極まって手を握り泣いた」とマックの回想録にある。

 この100年のあらかたが過ぎたがだれもそんな戯けは言わない。

 だいたいこの2人は信用がない。

 マックは日本軍が攻めてきたとき部下を見捨てて1人敵前逃亡した。

 行きがけの駄賃にフィリピン傀儡政権のマソンから50万ドルを強請りとった。

 それが世間に知れた。

 ケチな元帥はトルーマンにクビにされるまでの10年、帰国もできなかった。

 だから彼は日本に居座った。

 彼が任されたGHQの任務はF・ルーズベルトの遺言「日本を4つの島に閉じ込めて

滅ぼせ」を実行することだった。

 それなら日本を丸腰にさせよう。

 そうすれば滅んだも当然ではないかとマックは考えた。

 うまくいけば彼の汚名も半分は消せる。

 ただ日本人が丸腰を受け入れるだろうか。

 共産党の野坂参三ですら「民族の独立を危うくする」とはっきり反対していた。

 で、マックは首相の幣原が自発的に言い出し、新憲法を作ったことにした、

と言うのがことの真相だ。

もっとも幣原がまともな日本人なら、そんな狂言を断固拒否するか、

首相を辞して抗議しただろう。

しかし彼は俗に言う英語屋だった。

 白人大好きで英語を習い、外交官になって白人国家に憧れ続けた。

 こんな話もある。

 彼は外務省の米人顧問ヘンリー・デニソンの日露講和メモを見つけた。

 「参考にしたい」と本人に断りに行ったら即座にストーブにくべられた。

 「つまらない話だから」と。

 日露講和は日本が1銭の賠償金も取れずに終わった。

 セオドア・ルーズベルトとデニソンが裏で結託した結果と言われる。

 馬鹿な英語屋のせいで日本は貴重な1次資料を失った。

 幣原は日本弱体化を狙う米国の意図も見抜けずにワシントン会議で日英同盟切りを

喜んで承諾した。

 米国と組んだ支那の日貨排斥、法人テロにも米国の機嫌をとって

ひたすら軟弱外交に徹した。

 中でも日本が持つ満州の権益を米国に認めさせた石井・ランシング協定まで

彼の独断でいとも簡単に放棄してしまった。

これに乗じて米国は日本が「支那領満州を不法に侵略した」とする

スティムソンドクトリンを持ち出して日本を孤立させ、国際連盟脱退、

日米開戦への流れを加速させていた。

そして戦後。

 米国がまた幣原を再登場させ、戦力放棄のマッカーサー憲法を受け入れさせた。

 それも「日本人が自ら言い出した」と装って。

 幣原の所業は万死に値するが、その2ヶ月前、彼はもう一つ、許されざる悪行をしていた。

 GHQ製の「人間宣言」を昭和天皇に無理強いしたのだ。

 趣旨は「日本人は特別の民族と盲信し、現人神の下に世界侵略に出た」と

認めさせることにあった。

 日本を侵略国家とする嘘に反発された陛下は冒頭に五箇条の御誓文をつけることを

希望された。

愚かな幣原もGHQも意味がわからないままOKを出した。

 五箇条の御誓文は明治天皇が民主国家・日本の形を謳ったものだ。

 万機公論に決し、上下心を1にして日本人はここまで来た。

 これからも誇り高くあれと。

 ユーミンに「早死にすべきだった」と言った朝日新聞「論座」メンバーの白井聡。

 彼はまた安倍政権についても「日本史上の汚点」と罵っている。

 朝日の論調に沿えば知識人だと思っているところが笑わせる。

 彼が少しでも勉強すれば日本史上の汚点は幣原喜重郎としただろう。

 ちなみに次点は菅直人になるか。 

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【米中もし戦わば】著者紹介

著者ピーター・ナバロ Peter Navarro大統領補佐官、国家通商会議議長。

 選挙中からトランプ陣営に加わり、政権移行チームでも引き続き経済、

貿易、アジア政策の担当を務めた。

CNBCの経済番組ではレギュラー出演者としても活躍。

 「ビジネス・ウィーク」「ニューヨーク・タイムズ」

「ウォールストリート・ジャーナル」など、各紙誌にも寄稿している気鋭の学者である。

 専門は経済学で「中国による不公正な貿易が、アメリカ経済とその製造業に

どのようなダメージを与える与えているのか」を研究していた。

その過程で、中国がそうした貿易で得た経済力をもとに、軍事力を増強し、

南シナ海や東シナ海で様々な軍事行動を起こしていることをに着目。

 本書では、中国の経済や貿易活動はもちろん、政治体制や軍の内情に至るまで、

あらゆる面から「米中戦争」の可能性、それを防ぐ方策を分析している。

 訳者赤根洋子(あかね・ようこ)翻訳家。

 早稲田大学大学院修士課程修了「(ドイツ文学)。

 主な訳書に「科学の発見」(スティーブン・ワインバーグ)、

「寄生虫なき病」(モイセズ・ベラスケス=マノフ以上文芸春秋

「世にも奇妙な人体実験の歴史」(トレヴァー・ノートン)、

「ヒトラーの秘密図書館」(ティモシー・ ラインバック、以上文春文庫)など多数。

 解説飯田将史(いいだ・まさふみ)1972年生まれ。

 慶應義塾大学修士、スタンフォード大学修士。

1999年防衛庁防衛研究所入所。

 スタンフォード大学客員研究員(2011年)、米海軍大学客員研究員(2013年)などを経て、

2016年より防衛研究所中央研究室の主任研究官を務める

「南シナ海で広がる米中の亀裂」(「問題と研究」第43巻2号、2014年4月)で

いち早く中国の海洋進出に伴う米中の軋轢について指摘し、

2016年3月には防衛省防衛研究所が発表した「中国安全保障レポート」の

執筆責任者も務めた。 

──────────以上終了

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【米中もし戦わば】解説-04

第二次世界大戦では、アジアの覇権国になろうとした日本を、

アメリカは石油の禁輸などの手段を使って抑止しようとしたが、結局は失敗し、

戦争になった。

その後のアジアで、強力な海軍力を持った国は、中国は2000年代に

南シナ海や東シナ海に進出するようになるまでは、出現しなかった。

その意味で、現在アジア地域は、戦後初めてアメリカ以外の国が覇権国たるべく

拡張してきた、その試練を受けている。

本書が記す、フィリピンが領有権を主張しているスカーボロ礁を失った経緯に

愕然とした方もいるのではないか。

 2012年4月に「中国漁船団」の侵入によって始まったこの奪取劇。

 中国は、フィリピン製品の輸入制限や、フィリピンへの事実上の渡航制限によって

中国経済に依存していたフィリピンを追い込む。

 アメリカの仲介で、2012年6月に両国は当該地域から撤退することが決まったにもかかわらず、

中国はそのまま居座り続け、礁のコントロールを握ることになった。

本書「米中もし戦わば」は、米国、中国のみならず、ベトナム、フィリピン、台湾、

韓国、北朝鮮、そして日本といった国々のパワーバランスの中、

中国は何を狙い、何が同盟国の側に足りないのかを、わかりやすく書いている。

 沖縄の基地問題や集団的自衛権の問題も、こうした大きなコンテクストの中で

考えていくと、その糸口が見つかるかもしれない。

 アジア地域のアメリカのプレゼンスを軽視する候補が大統領になって今こそ、

日本人に読まれる書と言うべきだろう。 

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【米中もし戦わば】解説-03

また、中国領内に侵入できる長距離爆撃を米側が持つことが、

事態の安定につながると言う本書の主張の妥当性はどうだろうか?

中国の内陸部にある軍事的なアセットを着実に破壊できる能力を持つことによって、

中国による挑発的な行動、挑戦的な行動を押さえ込む。

それが「エアシーバトル」の抑止の考え方だ。

そのためには長距離を高速で飛行し、敵のレーダーから探知されにくいステルス性能を

備えて中国内陸部も攻撃できる爆撃機を持つと言うのは合理的な結論である。

実際、ステルス性の高い長距離爆撃機をアメリカは保有しており、

それが中国本土を叩くことができると言う事実が、抑止力の1部となっているのである。

それでは日本持てば良いではないか、と読者思うかもしれない。

しかし、日本がこうした長距離爆撃機を持つ事は想定できない。

なぜならば、憲法9条の下で、性能上もっぱら他国の領土を壊滅的に破壊するような

攻撃的兵器を日本は持てないからだ。

自衛隊は「専守防衛」の思想の下、攻撃されないための防衛的な兵器のみを

所有していることになる。

こう考えていくと、米軍のアジア太平洋地域におけるプレゼンスは、

日本にとっては是が非でも必要な傘と言うことになる。 

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【米中もし戦わば】解説-02

本書の中ではもう一つの戦略戦略思想の転換が提示されている。

 すなわち空母主体の現在の米海軍の態勢を改め、潜水艦を主体にし、

第一列島線の海峡(チョークポイント)で中国を封鎖すると言う

「オフショア・コントロール」の考えである。

この潜水艦への戦略移行は、確かにアメリカにとっては安上がりな解決かもしれないが、

第一列島線所に位置する日本にとっては死活問題になる。

これは第一列島線で、石油などの輸入を阻止することで、

中国を干上がらせると言う発想だが、そうした事態まで中国を追い込むには相当の時間がかかる。

その間に中国は、封鎖の突破を目指して、本土で無傷のまま温存されてるミサイル等の

兵器を用いて、第一列島線に存在する敵の軍事基地や政経中枢への

攻撃を行うことが想定される。 

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【米中もし戦わば】解説-02

ハッキングによって先進諸国から軍事技術の主要部分を盗み、

そのコピーによって高性能な国産兵器を作り上げる。

黄海、東シナ海、尖閣諸島、南シナ海を内側に含む第一列島線への進出を、

本書に書かれてあるように、移動式で精密攻撃が可能な弾道・巡航ミサイル、

潜水艦などの強化によって成し遂げつつある中国に対して、

自衛隊はどのような対応をとってきているのだろうか?冒頭で書いたように、

もともと自衛隊はそれによる進行を念頭に置いていた。

しかし、冷戦の崩壊と、経済成長に伴う中国の海洋進出が顕著になった2000年代以降、

自衛隊の体制は北から南へと重点をシフトしてきている。

福岡の築城基地に所属していた主力戦闘機F-15、約20機からなる飛行隊を

沖縄に移転したのはその一つである。

これは、東シナ海上空における中国軍機の活動が活発化していることに伴って、

南西区域におけるスクランブル(緊急発進)の回数増大に対応するためである。

また、陸上自衛隊は与那国島に沿岸監視部隊を設立しており、

今後は南西諸島への地対艦ミサイル部隊の配置が検討されている。

佐世保の西方普通科連隊を中心とした水両用部隊の整備も進んでおり、

陸自は離島奪回能力を向上させつつある。

海上自衛隊は、保有する潜水艦を16隻から2隻と増加させつつある。

より多くの潜水艦を南西海域で運用することにより、中国の潜水艦や水上艦艇等に関する

情報収集や偵察監視能力が向上することが期待される。

また有事においては、南西海域での海上優勢を確保する上でこれらの潜水艦が

重要な役割を担うことになろう。

海上自衛隊は、高性能のレーダーを装備し、多数の敵戦闘機や対艦ミサイルなどに

同時に対応できる高い防空能力を有しているイージス艦の改修も進めている。

特に弾道ミサイル防衛能力の強化が図られており、日本本土に対する弾道ミサイル攻撃の

対処能力の向上につながるだろう。

拡張する中国に対して、米国はアジア太平洋地域における同盟国の防衛協力を強化している。

その結果、日米の防衛協力はこの数年で顕著に進展している。

例えば、東京都の府中にあった自衛隊の航空総隊司令部を米空軍の司令部がある横田に、

2012年に移転したのもその一つだ。 

陸上自衛隊で有事における初動対応を担うことになる中央即応集団も、その司令部を、

在日米軍陸軍司令部がある座間キャンプに移転した。

米軍と自衛隊が、主要な部隊の司令部を同じ場所に置くことで、

作戦時における相互の連携強化が目指されている。

本書は、米軍が日本や韓国などアジア地域で運用する基地が固定されているために、

中国のミサイル攻撃に脆弱である旨を指摘している。

これは鋭い指摘で、パックスリーなどの地対空ミサイルを配備し、迎撃しても、

異なる方向から多数のミサイルが飛来した場合、その全てを打ち落とす事は難しい。

したがって、そうしたミサイルが着弾しても稼働できるよう、

主要な施設や装備を非常に厚いコンクリートで保護することや、

破壊された滑走路などの施設を早急に普及させる能力の向上といった、

「抗たん化」の推進が必要になっている。 

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【米中もし戦わば】解説、日本の安全をどう守るのか

防衛省防衛研究所地域研究部中国研究室主任研究官飯田将史

日本の自衛隊がソ連による着上陸を念頭に置いて、北海道を中心にして

展開していたのは、今は昔の話である。

現在、陸・海・空の各自衛隊は、東アジアの海洋でプレゼンスを強化している

中国軍をにらみつつ、南西地域に重点を置いた展開を推進している。

 本書は、近年の中国の海洋進出に伴って、変化する太平洋地域の戦略バランスを

分析しながら、「米中戦争はあるか」「あるとすれば、どのように防ぐことが

できるのか」を、一般読者に向けてわかりやすく論じた優れた地政学の本である。

 本書ではもちろん尖閣諸島めぐる日中のつばぜり合いや日本に展開する米軍の基地

(佐世保、横須賀、横田、嘉手納等)の脆弱性などが、別個の立場から書かれているが、

日本の自衛隊がどのような戦略のもとに、中国の海洋膨張政策に対峙しているかには

あまり紙幅が割かれていない。

本稿では、「解説」の形をとりながら、日本から見た防衛戦略について記したいと思う。

尖閣諸島周辺の日本の領海に、中国の政府公船が始めて姿を現したのは、

2008年12月のことである。

ほぼ同じ頃に、中国が島嶼の領有権や海洋権益をめぐってフィリピンやベトナムなどと

争っている南シナ海でも中国公船の活動が活発化していることから、

この時期から中国の海洋膨張政策が、様々な衝突を見ながら、国際社会に立ち現れたと

言うことが言えるだろう。

 尖閣諸島周辺に莫大な石油が埋蔵されている可能性を指摘する調査結果が、

1968年に発表された。

急速な成長の結果として、中国経済は中東とアフリカから輸入される石油への

依存を進めており、その輸送には、米国の制海権下にあるマラッカ海峡を

通らなければならない。

この「マラッカ・ジレンマ」を緩和することも、中国が尖閣尖閣と東シナ海にまたがる

海底に依存している存在している石油の確保を目指す、理由の1つになっている。

その尖閣の領有を実現するために、本書にもあるようにまずは地図を書き換え、

漁船を送り込み、サラミをスライスするように徐々に支配を拡大していくというのが

中国の戦略である。

中国は、1996年の台湾における総統選挙に際して、中国が独立派とみなしている

李登輝に投票しないようメッセージを送るために、台湾の近海に弾道ミサイルを

撃ち込む演習を行った。

これに対して、米国は空母インデペンデンスと空母ニミッツを中心とする2つの艦隊を

派遣し、中国は矛を収めざるを得なかった。

 この時の蹉跌が、中国に、アメリカの空母打撃群に対抗する対艦弾道ミサイルなどの

「非対称兵器」の開発を促したと言う本書の見方は的を射たものである。 

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【米中もし戦わば】045-07、現実から目を逸らしてはいけない

締めくくりに、この最終章のテーマをおさらいしておこう。

 急速に台頭する中国によって引き起こされた深刻な安全保障上の脅威に

平和的に対抗するには、第一に、経済的・軍事的その他の対抗策について

政治的な合意ができていなければならない。

だが、自由で開かれた民主主義国家においてこうした政治的合意に到達するのは

至難の業だと思われる。

経済的利害は対中貿易との関わり方によって異なり、利益団体は他人のために

団結するより対立し合う道を選びがちである。

独裁的な中国政府は外国の中国報道に強力なメディア統制を敷き西側の

ジャーナリストや大学は一貫して自主規制を行っている。

この分裂状態こそが、「対中戦争の可能性について考えるべきだ」と言う政治的合意の

形成を西側の民主主義国、特にアメリカで長い間阻んできた元凶である。

 言うまでもないことだが、現実から目をそらすと言うこうした状態がこのまま続けば、

物語の結末は我々全員にとって苦いものになるだろう。

もちろん、今ならまだ間に合う。

戦争よりもはるかにましな、はるかに平和的な方法で問題を解決する道はある。

 真実が明らかになり、リスクの大きさ、壊滅的被害の及ぶ範囲の大きさを

中国人と我々の双方が完全に理解できるようになりさえすれば、希望は見えてくる。

 平和が栄えるためには、この真実が自明の理となる必要がある。

 この真実を探求することこそが本書の目的だった。

 この精神に則って最後に、スペインの哲学者ジョージ・サンタヤーナの格言

「過去を記憶できないものは、過去繰り返すよう運命づけられている」を逆にした言葉を

掲げ、本書を締めくくることにしよう。

「どんな将来どんなことが起こり得るかをすべて想定できる人間には、

その中から最善のものを選び、最悪のものを避ける、最上のチャンスが与えられている」

終了近いので、アップロードは少なめ

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【米中もし戦わば】045-06研究・教育機関にも自主規制が広がっている

最後に、自主規制が思いもよらない分野まで分野にまで及んでいる事は明らかにしておこう。

思いもよらない分野とは、研究や教育である。

 米中委員会ウェッセルはこう述べている。

 学術研究はビジネスの要素を待ちつつある。

 大学は常に研究費を探し求めている。

 残念なことに、研究費が中国系団体から出ているケースが次第に増えてきた。

 研究費を出すことによって、中国がアメリカの大学に効果的に広告を出していることになる。

 その結果、残念なことに、大学が多額の人民元に手を出すようになるにつれて、

中国批判を控えると言う微妙な自主規制が生まれた。

 しかし、研究・教育機関の倫理的堕落は、研究費欲しさの自主規制だけに留まらない。

 いわゆる孔子学院が大学のみならず小学校から高校に至るまで、

様々な学校に入り込んで増殖していることも頭の痛い問題である。

 中国政府から資金を得ている孔子学院は、資金難に苦しむアメリカの公立学校に

中国語や中国文化の授業や中国のカリキュラム開発や交換学生プログラムなどを

無償で提供しているのは、「中国のプロパガンダや主義主張をアメリカの子供たち、

つまり、最も影響受けやすい世代のアメリカ国民に植え付けようとしている」と

指摘されている。

 こうしたプロパガンダは、教授たちの著作や、将来の社会政策の担い手である

学生たちの意見に劇的な影響与えてきた。

 これは巧妙で効果的なアメリカの利益にとっては極めて有害なプロパガンダだ。 

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