最終更新日 2021年2月16日火曜日 06:37:58
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【日中もし戦わば】第6章日米とアジアが連携して中国の野望を阻止せよアメリカは本当に日本を守ってくれるのか?

第二次世界大戦後、世界はアメリカを中心とする西側陣営、

ソ連を中心とする東側陣営に分かれて対立しましたが、現在はこうした対立軸が消滅し、

共産主義国である中国もアメリカやヨーロッパ諸国が経済的に密接に結びついています。

 軍事面でも、フランスなどが装備品を中国に売ったりしています。

 しかし、そういった時代だからこそ自由、民主主義、基本的人権の尊重、

法の支配といった普遍的価値を共有するアジア太平洋・インド地域の国々で

まとまらなければならないし、日本がその中心に立たなければ、

この地域の平和と安全は確保できません。

アメリカはドナルド・トランプが大統領に就任して「アメリカ第一主義」を

掲げていますが、こうした考え方は昔からあって、これからも変わらないと思います。

 トランプ大統領は「古きよき白人たちのアメリカ」の復活を目指している節が

ありますが、一方で、民主党の大統領予備選に出馬したバーニー・サンダースが

考えた社会主義的な考え方も支持されています。

こうしたアメリカ人の考え方のブレは、軍事における脅威認識にも及んでいます。

 国防省は、ロシアを最も警戒すべき国としていますが、中国に対しては、

どれだけ脅威を感じているのか不透明な部分が多いのです。

母親が日本人であるハリー・B・ハリス太平洋軍司令官(24)は、

講演で「中国から攻撃があれば、われわれは必ず防衛する」と

尖閣諸島防衛の義務履行について述べていますが、

それ以前のオバマ大統領によって任命された司令官の中には親中派だった人物もいます。

 このように、アメリカの中国への対応には幅があって、

常に日本側に立っているわけでは無いのです。

日本とアメリカは同盟関係にありますが、大統領や現地司令官によって、

こうした対応の振れ幅があるので、アメリカが大きな犠牲を払ってまで

中国に立ち向かうのかは不明なところがあります。

 ですから、日本は「自分の国は自分で守る」心構えをつねに持っておかなければならないのです。

 中国が日本に武力紛争を仕掛けるときは、おそらくアメリカに

「これは中国と日本の間で行われる戦いであって、貴国とは関係がない。

 仮に貴国が参戦すれば、世界経済に計り知れない打撃が及ぶだろう」と主張するはずです。

 さらに、昔から行っている「三戦」のスキルをフルに発揮し、

日本を悪役に仕立て上げて攻撃のタイミング大義名分を得る可能性もあります。

 中国が対日攻撃を仕掛ける時、まずはあらゆる手段を使って

日米間を分断することを認識しておくことが必要です。

 つまり、日本は、「自分の国は自分で守る」を基本としなければなりません。

 その上で、我が国の防衛を全うするためには、同盟国アメリカが日本有事に

自動的に参戦してくれるとの安易な期待を排して、そのコミットメントを担保する

確かなは仕組みを構築することが重要です。

 なぜなら、現状においては、核の脅威に対する拡大抑止やわが国に脅威を及ぼす

敵基地・施設等に対する反撃能力は米国に依存せざるを得ないからです。

 また、台湾やフィリピンなど第一列島線の国々の防衛が崩壊すれば、

わが国の防衛にも重大な影響が及ぶ事は必須であり、結局、わが国の平和と安全は

我が国一国では確保できません。

 そのため、普遍的価値や戦略的価値を共有する第一列島線上の国に加えて、

広くアジア太平洋・インド地域の国との協力関係の強化が、必然的な要請になってくるのです。

 そのような認識のもとに、以下本章では、第1章から第5章で述べた要点を

改めて振り返りながら、中国の覇権的拡張主義を抑止するための日本の防衛論について

具体的に書くことにします。 

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【日中もし戦わば】「第三次相殺戦略」は何をオフセットするのか?

「エアシーバトル構想」と同じように注目されるのが、「第三次相殺戦略」です。

 この戦略は、CS BAのロバート・マーティネズ元海軍省次官が発表した論文が発端です。

 2014年11月、当時のヘーゲル国防長官が発表した「国防イノベーション構想」(DII)、

すなわち「アメリカが長期的に優勢を維持する方策を追求する構想」と

つながっているとみられています。

「相殺戦略」と言うのは、技術上及び軍事作戦上の優位性を保持して、

敵の能力を「相殺」(抑止ないしは無効」するというものです。

 つまり、敵を上回る技術・武器でオフセットするわけです。

 「第3」がつくのですから「第一」も「第二」もあります。

 「第一次相殺戦略」は、1950年代のアイゼンハワー大統領による「ニュー・ルック」と

言われる核による大量報復戦略です。

 そして「第二次相殺戦略」は、1970年代末~80年代のハロルドブラウン国防長官が

提唱した通常戦力の質的優越です。

具体的には、ステルス爆撃機のF-1178やB-2、精密攻撃兵器、

改善型C4ISRなどのことです。

 では「第3相殺戦略」では、中国に対してどんな点で優位性を保とうとするのでしょうか?ここでは、次の5項目が提示されています。

 ①無人機作戦

②長距離航空作戦

③ステルス航空作戦

④水中作戦

⑤複合化システムエンジニアリングと統合

では、具体的な兵器・技術はどのようなものでしょうか?

例えば、厳しい環境下でも相手の領土を深くに侵入できる「高高度長期滞在無人航空機」

(RQ配布ん-4:グローバルホーク後継のステルス機)、

「無人偵察攻撃」(MQ-9リーパー)、空母の甲板から発着する

高い機動性とステルス性を備えた「艦載無人攻撃システム」(NQ-XやNーUCAS)、

相手に察知されないように侵入し領土の奥深い目標を正確に攻撃できる

「ステルス長距離打撃爆撃機」の次世代機、陸上に対する攻撃能力を高めた潜水艦、

敵の弾道ミサイルに対する地域防衛やミサイルによる飽和攻撃に威力を発揮する

電磁レールガンや高出力レーザー兵器、外部からの攻撃に対する復元力が強い

小型衛星で構成する通信監視システムなどが、これに該当します。

 いずれも、中国が追いつけないレベルのものを目指しています。

 米軍は、核兵器を使わずに、相手国の内深部を攻撃できる能力を追求しています。

 それが、「通常兵器による迅速なグローバル打撃」(CP GS)構想ですつまり、

「C PGS」は、「第3の相殺戦略」の延長線上にあるものといえます。

 「CPGS」では、地球上のあらゆる場所へ、1時間以内に、通常戦力による精密で、

破壊力のある攻撃を行うことを目指しています。

核兵器の使用のハードルは極めて高く、また、その時々の財政負担も大きいことから、

CPGS 構造には「使いやすい長距離攻撃能力」として、

既存の戦略核戦力と通常戦力の間にあるギャップを埋めることが期待され、

アメリカは核兵器に代わる抑止力を模索しているのです。 

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【日中もし戦わば】「エアシーバトル構想」の変遷

中国の「A2/AD」戦略の脅威は、1990年代から指摘され、

「戦略・予算評価センター」や「ランド研究所」といった

有力シンクタンクから警鐘が鳴らされていました。

 その指摘と言うのは、戦略態勢が、冷戦時の「前方展開体制」から

冷戦後の「戦力投射態勢」へ移行しつつあることを大いに関係していました。

と言うのは、後者の弱点は、部隊を展開するための戦場へのアクセスになるので、

将来の敵(中国)を前方展開した後の米軍と戦うより、

その前段階の展開中の米軍の弱点を突いて「A2」(接近阻止)で撃退を試み、

それでも領域に侵入してきた部隊には「AD」(領域拒否)で侵入を排除するだろうと

考えられたからです。

 国防省は、2010年の「QDR」で初めて「エアシーバトル構想」に言及し、

その後、2013年5月に統合参謀本部に置かれた「エアシーバトル室」が公式の

「エアシーバトル構想」として、その要約を発表しています。

その後、エアシーバトル室は2015年に閉鎖され、統合参謀本部内の

別部署J-7にうつされました。

そして見直しが行われましたが、その基本的な枠組みは維持され、

逐次改善されています。

この構造を簡単に言うと、陸、海、空、宇宙、サイバーの5領域の垣根を越えて

一元的に戦力を運用し、同盟国の軍事力とともに敵の「A2/AD」下で

米軍の戦力を展開すると言うものです。

なお、「エアシーバトル構想」は海軍と空軍を中心とした戦略構造です。

 では、「エアシーバトル構想」では、具体的にどのような作戦が展開されるのでしょうか?

作戦は、中国を想定して考えると、概ね次のように構成されています。

 まず、中国の第一撃を避けるため米海空軍を第二列島線以遠へ待機させます。

 それと同時に15分中国軍の「C4ISR」機能(指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、

監視、偵察)などを麻痺させる「盲目化作戦」と、潜水艦を撃破して水中を支配する

「水中作戦」を遂行します。

 この盲目化作戦と水中作戦を継続して行い、その成果を拡大しながら、態勢を整え、

米軍の戦略を展開します。

一方、この構想とは別に陸軍と海兵隊は、2012年に連名で「A2/AD」下の

陸上作戦構想である「アクセスの獲得と維持」と言う構想を発表しています。

 これは、海空軍への対抗策と言えるものです。

 米軍においても、海軍と陸軍は基本的に作戦のフィールドや戦い方が異なるため、

相互のすり合わせや調整が難しいようです。

そのため、下院軍事委員会では、陸軍と海兵隊の役割が過少に抑えられていると言う

批判が出ました。

 これは、「エアシーバトル構想」が、中国を念頭に置いたものにもかかわらず、

国防省が特定の地域や敵を対象とした作戦計画や戦略ではないと

公式に説明していたことにも影響されているのかもしれません。

つまり、中国を名指しすることを避けたが故の混乱です。 

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【日中もし戦わば】中国の覇権挑戦で「リバランス政策」に転換

しかし、このような「前方展開体制」は、政情不安定国での軍事革命、

中国やイランなどの軍事能力の強化と強化に伴う在外米軍基地の攻撃に対する脆弱性、

国内の厳しい財政事情などを考慮すると、維持が困難になってきました。

先に戦い方が21世紀型に変わったことを述べましたが、こうしたことを踏まえて、

米軍がトランスフォーメーション(再編)に入りました。

ユーラシア大陸周辺部における「前方展開型体制」から前方展開戦力を縮小して

広報配備に移行し、紛争地域へは、後方からの「戦力投射型態勢」によって

対処するようになりつつあります。

考えてみれば、全世界といっても、もともとまんべんなくできたわけではありません。

選択的な関与になっていました。

2001年の同時多発テロ以降でアメリカは10年以上にわたって

中東での対テロ戦に多くの力を注いでいます。

つまり、アメリカは中東を選択してきたのです。

しかし、中国の脅威の増大に伴い、選択を変えなければならなくなりました。

そのため、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」において、

アジア太平洋地域を重視する「リバランス」戦略に方向転換したのです。

 アメリカは、2020年までに海空軍戦力の60%をアジア太平洋地域に配備する予定です。

 こんな事は、中国のアジアにおけるアメリカの覇権への挑戦がなければ、

起こらなかったことです。

 当初、中国は平和的台頭をすると、アメリカは楽観視していたからです。

 中国に対する大きな懸念が最初に表明されたのは、2006年の「QDR」です。

 ここでは、「アメリカと軍事的に競い合う可能性が最も大きいのは中国」と

述べられていました。

 しかし、2010年の「QDR」では、対中配慮から敵対的な記述を避けています。

 オバマ前大統領が当初は中国に融和的だったことの反映でしょう。

それでも、「中国やイランは、アメリカの戦力投射能力に対抗するための

非対称な手段を追求」と言う記述がありました。

 そして、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」で、前記したように、

よりリバランス政策による対中軍事戦略が明確に出されたわけです。

 このプロセスで、最も重要なのが、中国の「A2/AD」戦略に対抗するための

「エアシーバトル構想」(ASB)と「第三次相殺戦略」の新たな戦略・作戦構想として

登場したことです。 

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【日中もし戦わば】「全世界関与」が基本のアメリカの軍事戦略

ここからは話はアメリカの軍事戦略に戻します。

 これまでに述べてきた「NSS」や「Q DR」などで、

どのような内容が示されてきたのかを見てみます。

 まず、国家安全保障戦略の基本姿勢ですが、2010年の「NSS」に端的に示されています。

 ここでは、アメリカの安全保障が、

①アメリカ、アメリカ国内同盟国及びパートナー国の安全、

②力強く、革新的で、成長するアメリカ経済による繁栄、

③アメリカ国内と世界における普遍的な価値の尊重、

④平和、安全、機会を促進する規範に基づく国際秩序、この4つが基盤であるとしています。

この方針は、2015年のNSSでも踏襲されています。

この4つの基盤に基づき、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」で、

3つの柱が示されました。

①本土の防衛、

②グローバルな安全保障の構築、

③戦略の投射と決定的な勝利の3つです。

②では、同盟国や友好国の安全を保障するため、

アメリカによる世界の関与を継続するとし、

③では、米軍が敵を決定的に打破する能力を維持することによって、

1つまたは複数の戦域において攻撃を抑止すると記しています。

すでに何度か述べましたが、アメリカは「海洋国家」のシーパワーです。

東西を大西洋と太平洋で隔てられた「大陸規模の島国」であり、

いずれかの大洋を経由しなければ「世界島」と言われるユーラシア大陸にアクセスできません。

そのため、第二次大戦以降今日まで、米本土に軍のの主戦力を置き、

ユーラシア大陸のロシアと中国を取り囲む同盟国に必要な部隊を前方展開し、

その間の海上交通路を安定的に維持し、有事における軍事輸送、

通商や資源の自由なアクセスを確保することを基本としてきました。

そして、万一、ユーラシア大陸からの脅威が顕在化した場合には、

まず前方展開部隊をもって対処します。

そして次に、米本土から主戦力を送り込むか、他方面から戦力を転用します。

こうして、米本土から出来る限り遠方で敵を撃破して安全を確保するのです。

つまり、アメリカの軍事戦略は、「全世界関与」が基本です。

軍は全世界展開なのです。

そのための軍事能力は、核戦争から大規模~小規模の通常戦争、

対テロ戦、宇宙・サイバー戦、そして大規模災害対応や人道支援に至るまで、

「紛争のフルスペクトラムへの対応」、すなわちあらゆる事態に

シームレスに対応できることが追求されてきました。

 こうしたアメリカの全世界関与を可能にするのが、同盟国、友好国です。

 日本、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、タイなど約60カ国が、

アメリカの安全保障を支えています。 

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【日中もし戦わば】「核不拡散条約」と「核兵器禁止条約」の矛盾

ここで、わが国の核に対する態度に関して述べておきますが、

一言で言えば、現状ではアメリカが世界最強の核大国でないと困ると言うことです。

 「唯一の被爆国」といってもでアメリカの核の傘で安全保障が担保されている以上、

核を容認する以外の政策は取れません。

 それなのに、核兵器の廃絶を訴えると、完全に自己矛盾に陥ってしまいます。

 もちろん、世界では核軍縮の話し合いが、長年にわたって続いています。

 しかし、成果は全く出ていません。

 次の(23)は世界の核保有国とその核弾頭の保有数をまとめたものです。

 米露がほぼイーブンに対して米中は圧倒的にアメリカ優位となっています。

 核軍縮を目的とした代表的な条約に、「核不拡散条約」(NPT条約)があります。

 これには世界のほとんどの国(191カ国)が締結国となっていますが実効性がありません。

 なぜなら、この条約は「核保有国」(米ロ中)と「非核保有国」を分け、

非核保有国は核兵器の製造も取得も禁止すると言っているに過ぎないからです。

 したがって、インド、パキスタン、イスラエルは非核保有国としての加入を拒んでいますし、

一方で北朝鮮のように核兵器の開発・保有を自ら宣言している国もあります。

 

国連では、5年ごとに「NPT条約」の再検討が行われます。

 最近では2015年5月に「核兵器を禁止する条約の締結を呼びかける最終文書」の採択が

行われましたが、米英仏ロが反対ないし棄権したために流れました。

日本も棄権です。

 アメリカがこんな条約に賛同するはずがないからです。

 「核兵器禁止条約」(NWC)は、国連では、毎年のように議論されています。

 そして、この条約の締結に向けて交渉開始すると言うような決議案が提出されます。

 すると、米ロは必ず反対し、日本、韓国なども反対します。

 ところが中国は曖昧な態度をとり続け、北朝鮮は賛成に回るのです。

 2016年12月27日、国連総会第1号委員会(軍縮・国際安全保障問題)

で採択された「核兵器禁止条約について交渉する国連の会議を来年召集するとした

決議案」は、圧倒的な賛成多数で採択されましたが、中国が棄権し、

北朝鮮は賛成しました。

反対は、米英仏ロと日本や韓国、オーストラリアなどでした。

 なぜ、中国や北朝鮮はこうした態度取るんのでしょうか?

北朝鮮は、自国の核開発は米国の核の脅威から国を守るための抑止力だと主張しており、

核兵器廃絶に向けた決議に賛同を示すことで、自国の核開発を正当化するとともに、

米国の核兵器使用も禁止対象となり得る条約に積極的な立場とみられています。

 アメリカの核に対する自衛だと言いいたいのです。

 一方、中国の習近平主席は2017年1月18日、スイスの国連欧州本部で

「核兵器が禁止され現存の貯蓄分も破壊される世界を目指すべきだ」と返事しました。

 オバマ前大統領の「核兵器のない世界」の模倣版です。

 国連では「核兵器禁止条約」の制定に向けた交渉の準備会合もあって今も続いています。

 2017年2月16日の会合では、米ロと日本は欠席しましたが、中国は出席し、

前記の通り、曖昧な態度に終始しています。 

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【日中もし戦わば】オバマ前大統領の「核兵器のない世界」の欺瞞

21世紀の戦争においても、やはり最大の問題は「核戦略」です。

 核兵器をどうするかが、安全保障と軍事戦略の根幹になります。

 2009年4月、オバマ前大統領が、チェコの首都プラハで、

ノーベル平和賞受賞の決め手となった、有名な「核廃絶演説」を行いました。

 「核兵器のない世界」を訴えたのです。

 ウィリアム・ペリー元国務長官、、ジョージシュルツ元国務長官、などが

共同執筆した論文「核なき世界」が下敷きになっています。

この論文は「各報復の脅しによる抑止戦略はもはや時代遅れ効率的になっているので、

核兵器のない世界を目指すべきである」と提言していました。

 「核兵器のない世界」といっても、核をすぐにでも廃棄するというのではありません。

 どうやら、日本ではこの辺のところが誤解されているようです。

 その真意は「核兵器のない世界」は目指すべき目標として具体的措置をとりながら、

それまでの間、「核兵器のある世界」の確実な抑止力を維持していこうと言うことです。

 オバマ前大統領「(「核兵器のない世界」は)私の生きてる間は実現されないだろう」と

述べたことに混迷する世界の現実が反映されているのです。

 オバマ前大統領の「核兵器のない世界」政策は、2010年2月発表の「Q DR」や

「弾道ミサイル防衛の見直し」(BMDR)、同年4月発表の「各体制の見直し」(NPR)に

反映されました。

 このうち特に「NTR」では、

①各拡散・各テロの防止、

②アメリカにおける核兵器の役割の提言

③核戦力レベルの低減と戦略的抑止・安定の維持 (配備核弾頭と運搬手段の削減、

IC BM・SLBM・長距離爆撃機と言う「核の三本柱」の規模縮小、

ICBNの単弾頭化、核搭載海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」の退役等)、

④地域的抑止の強化と同盟国・パートナー国に対する安心供与、

⑤安全・確実で効果的な核兵器の維持という五つの柱が挙げられました。

 しかし、これらはいずれも進展しませんでした。

実際のところオバマ政権下で削減された核兵器の数は、冷戦後の歴代政権のなかで

最も少なかったのです。

 ブッシュ政権下では約5300発の核兵器が削減されたのに対し、

オバマ政権下削減された核兵器は700発にすぎませんでした。

「核兵器のない世界」と言うのはいつのま一視の欺瞞なのです。

 アメリカが一方的に核を削減したら、自国の安全保障や同盟国等に対する

「拡大抑止」(核の傘)ほころびが生じ、同時に超大国の地位を失うのは自明だからです。

 トランプ大統領は現実的で、大統領就任前のTwitterで、

「世界の核に関する良識が戻るまで、アメリカは各能力を大いに強化・拡大する必要が

ある」と訴えました。

 さらに、就任後には2017年2月のロイターとのインタビューで

「アメリカは核能力で他国に遅れを取り始めた」として“世界最強の核兵器大国“になると

宣言しました。

記者から「それでは核軍拡競争になるのではないか」と問われると、

「核軍拡競争でも良いではないか。

アメリカはその競争の全てで他の諸国を圧倒する」と答えたのです。 

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【日中もし戦わば】21世紀の戦争に備えて戦い方を変革

新冷戦が始まったと言われる以上、先の冷戦終結以降今日まで、

アメリカはどのように国防・軍事戦略を変えてきたのかを振り返ってみる必要があります。

 1990年、ソ連の崩壊で冷戦が終結、アメリカでは、

通常戦力の包括的見直し作業が行われました。

 これを「ボトムアップ・レビュー」(BUR)と言い、

1993年に国防省がクリントン大統領に報告書を提出しました。

 この「BUR」では、「米軍の規模は縮小するものの、世界の警察官として

グローバルに関与し、唯一の超大国としての役割を果たすため、

即応性や公嗣んせい抗堪性を強化して圧倒的な軍事的優位性を保持する。

 また規模縮小を補うため、同盟国や友好国に応分の役割分担を求める」と言う

基本方針が定められました。

そしてここでは、主たる脅威として「地域大国が引き起こす大規模地域紛争、

大規模破壊兵器の拡散」が挙げられていました。

さらに、冷戦後の流動的な国際情勢を踏まえ、「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR)を

義務化しました。

 

要するに4年ごとに、世界戦略を見直していこうと言うのです。

 その後、1996年に「兵力構成見直し法」に基づき、米軍の組織と態勢を

「冷戦型」から「21世紀型」へ転換することが決められます。

 これを「米軍の変革」と「グローバルな防衛体制の見直し(GPR)」と言い、

これにより米軍の戦い方そのものも変化することになりました。

 また簡単に言うと、相手が国家ではないテロやゲリラ、サイバー攻撃等と

どう戦っていくかと言うことです。

テロや、サイバー攻撃などの「非国家主体・非対称の脅威」は、

世界中でいつでもどこでも起こりえます。

これを「脅威」と認識することで、戦い方が変わるのです。

 例えば、どこかで戦争が起こったら、その初期段階から敵を凌駕する速度で

予想戦場に兵力を投入し、自国に有利な状況を作為する「前方抑止」が、

米軍の主たる戦い方になったのです。

この戦い方の変化とともに、基地や施設等の再配置が行われることになりました。

 それまでの米軍兵力は西欧・東アジアに偏在していましたが、

これが「GPR」に基づいて見直されることになったのです。

 ここでは、中国やイランなどが力をつけ、在外米軍基地の「攻撃に対する脆弱性」が

浮き彫りになったこと、さらには基地の維持経費なども考慮されました。

現在行っている在日米軍再編は、こうした流れの一環です。

海兵隊員9000名およびその家族のグアムとハワイへの移転も、

すべて大きな情勢の変化への適応です。

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【日中もし戦わば】南シナ海トライアングルを完成させたい中国

ここで(18)の地図をもういちど見てください。

 そして、次の3点を結ぶ線を、頭の中で引いてください。

 西沙諸島のウッディー島、南西諸島で滑走路を持つ3つの人工島(ファイアリークロス礁、

スービ礁、ミスチーフ礁)、そして中沙諸島のスカボロー礁の3点です。

 この3点を結ぶと、南シナ海にイメージ上の「トライアングル」ができあがるのが

わかると思います。

これが、中国の目標なのです。

 西沙諸島のウッディー島は、すでに1000人以上の人口を擁し、町ができています。

 港湾施設も滑走路もあります。

 中国軍の基地も整い、長距離地対空ミサイルや戦闘機も配備されています。

 そして、南沙諸島のファイアリークロス礁などの岩礁群に築いた人口島はほぼ完成し、

軍事拠点として機能するようになりました。

さらに、スカボロー礁が滑走路を持つ人工島に作り替えられれば、

南シナ海にそれぞれ航空基地を持つ上記の「トライアングル」が完成します

スカボロー礁は2012年にフィリピンから奪った岩礁ですが、

中国がここを人工島に作り替えるかどうかは、今後の大きな注目点といえます。

こうして、南シナ海トライアングルが完成すると、「A2/AD戦略」の実行が可能になります。

 なぜなら、人口島には必要な軍備、施設がすべてあるからです。

 港湾設備、滑走路はもとより、レーダー施設、電子傍受システム、地対空ミサイル、

対艦巡航ミサイルも備えることができます。

 さらには防空識別圏(AD IZ)の設定であれば力の支配は完成します。

 つまり、南シナ海トライアングルは、中国による南シナ海の内海化の総仕上げなのです。

 南シナ海の戦略的価値についてこの章の最初に述べましたが、

それはこの海域はSL BM搭載の原潜(SS BN)の潜伏海域になるからです。

 その意味で言うと、スカボロー礁は非常に重要です。

 なぜなら、スカボロー礁は太平洋へ進出するための重要ルートであるバシー海峡

近くにあるからです。

 つまり、中国原潜はここに配備される航空機や艦艇の援護下で、

太平洋へ出ていくことができるからです。

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【日中もし戦わば】南シナ海仲裁裁判所の裁定を完全無視

すでに述べましたが、2016年7月、南シナ海仲裁裁判所は、

フィリピンによる南シナ海での中国の行動に対する提訴の裁定を下しました。

 この裁定は、一言で言うと中国はこれまで主張してきたことをことごとく否定したものです。

 大まかにまとめると、次のようになります。

 (1)南シナ海の海洋資源に対する中国の「歴史的権利」の主張は、

国連海洋法条約の規定の限度を超える部分については無効である。

 (2)中国は南シナ海や海洋資源を歴史的に排他的に管轄してきた証拠はなく、

「9段線」内の海域における「歴史的権利」の主張はいかなる法的根拠もない。

 (3)南沙諸島には「島」は無い。

 (21)に見るように、中国が人口島に作り替えた7カ所のうち5カ所は「岩」であるから、

12海里の領海のみ有する。

残るスービ礁とミスチーフ礁は「低潮高地」だから、領有の対象にはならない。

 また、中沙諸島で中国が支配するスカボロー礁も「岩」であり、12海里了解のみ有する。

この裁定は、明らかに中国にとって大きなダメージでした。

 はっきり言って「全面敗訴」に近いからです。

 何しろ、中国が南シナ海内海化の最大のよりどころとする9段戦そのものが

否定されたのです。

 さらに、5箇所の人工島の原初形状が岩ですから、その周りのたった12海里でしか

領海が得られなかったのです。

 もちろん、中国は、この裁定を認めませんでした。

 何の罰則もないのですから、認めて従うわけがありません。

 外務次官は、「仲裁裁判所の判決は中国の南シナ海での主権に影響しない」と述べ、

さらに「我々の安全が脅かされれば、われわれは当然、(防空識別圏を)

設定する権利がある」とまで言い出したのです。

 結局、南シナ海仲裁裁判所の裁定は、中国に対して逆効果にしかなりませんでした。

 なぜなら、その後、中国は南シナ海の力による支配をより一層強めているからです。 

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