最終更新日 2021年1月28日木曜日 11:21:02
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【日中もし戦わば】南シナ海仲裁裁判所の裁定を完全無視

すでに述べましたが、2016年7月、南シナ海仲裁裁判所は、

フィリピンによる南シナ海での中国の行動に対する提訴の裁定を下しました。

 この裁定は、一言で言うと中国はこれまで主張してきたことをことごとく否定したものです。

 大まかにまとめると、次のようになります。

 (1)南シナ海の海洋資源に対する中国の「歴史的権利」の主張は、

国連海洋法条約の規定の限度を超える部分については無効である。

 (2)中国は南シナ海や海洋資源を歴史的に排他的に管轄してきた証拠はなく、

「9段線」内の海域における「歴史的権利」の主張はいかなる法的根拠もない。

 (3)南沙諸島には「島」は無い。

 (21)に見るように、中国が人口島に作り替えた7カ所のうち5カ所は「岩」であるから、

12海里の領海のみ有する。

残るスービ礁とミスチーフ礁は「低潮高地」だから、領有の対象にはならない。

 また、中沙諸島で中国が支配するスカボロー礁も「岩」であり、12海里了解のみ有する。

この裁定は、明らかに中国にとって大きなダメージでした。

 はっきり言って「全面敗訴」に近いからです。

 何しろ、中国が南シナ海内海化の最大のよりどころとする9段戦そのものが

否定されたのです。

 さらに、5箇所の人工島の原初形状が岩ですから、その周りのたった12海里でしか

領海が得られなかったのです。

 もちろん、中国は、この裁定を認めませんでした。

 何の罰則もないのですから、認めて従うわけがありません。

 外務次官は、「仲裁裁判所の判決は中国の南シナ海での主権に影響しない」と述べ、

さらに「我々の安全が脅かされれば、われわれは当然、(防空識別圏を)

設定する権利がある」とまで言い出したのです。

 結局、南シナ海仲裁裁判所の裁定は、中国に対して逆効果にしかなりませんでした。

 なぜなら、その後、中国は南シナ海の力による支配をより一層強めているからです。 

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【日中もし戦わば】人工島造成で強まる南シナ海の支配

中国が人工島を造成しているのは、南沙諸島で占拠する7箇所の岩や岩礁です。

すなわち、クアルテロン礁(華陽礁)、ファイアーリークロス礁(永暑礁)、

ガベン礁(南薫礁)、ジョンソン礁(赤瓜礁)、ミスチーフ礁(美済礁)、

スービ礁(渚碧礁)、ヒューズ礁(東門礁)です。

 中国は2014年半ば以降、これらの岩や環礁に大規模な埋め立て工事を行い、

人工島を造成してきました。

このような人工島の造成は国連海洋法条約に照らして違法ではありません。

 しかしながら、ただの岩や環礁が、もはや原型をとどめない、

回復不可能な形状に作り変える事は、海洋環境上大きな問題があります。

 さらに、これを軍事基地化することが、周辺諸国に大きな影響与えます。

 当初は、中国は、人工島の造成を、例えば灯台、漁民のための台風避難上、

気象観測所や捜索救難施設などの公共財を提供することが目的であると主張しました。

 確かに、スービ礁、クアルテロン礁などには灯台が建造されました。

 しかし、その一方で、当時の人民解放軍副参謀長は、

2015年5月31日のシンガポールでの安全保障会議で、

「埋め立ては中国の軍事、防衛上の所要を満たすためである」とはっきり述べたのです。

 例えば(20)ファイアリークロス礁には、すでに長さ3000メートル級の

滑走路が完成して中国軍機が何度も離着陸しているのが確認されています。

 この滑走路は中国が保有するすべての軍用機が離着陸可能で、

これによって海南島基地からの飛行機によるロジスティック(兵站)が可能になりました。

 また、ここには、大型港湾施設が整備されて南シナ海で

最大の面積を持つ中国の完全な軍事基地となっていることがわかります。

 ファイアリークロス礁と同じようにミスチーフ礁、スービ礁も滑走路と

港湾設備が作られています。

 それだけではありません。

 中国は、人口頭にミサイルも配備しているのです。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CS IS) 2017年3月27日に

公表したところによれば、3000メートル級の滑走路を持つファイアリークス礁、

ミスチーフ礁、スービ礁の各人工島で

作戦機24機を格納可能な大型格納庫が完成し、また長距離地対空ミサイルを

格納できる約20の開閉式の屋根がついた構造物も完成しているのが確認されました。

 CSISによれば、いつでも作戦機や地対空ミサイルを

配備できる状態になっているようです。

 (21)は、中国が7つの岩や低潮高地に造成した人工島の軍事装備や施設等の配備、

建設状況をまとめたものです。

 そして(22)が、南沙諸島の各国の支配図です。 

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【日中もし戦わば】「サラミスライス戦術」と「キャベツ戦術」

それでは、中国はどのようにして南シナ海の島嶼を奪っていったのでしょうか?

中国の海洋への進出戦略の特徴として言われているのが、「サラミスライス戦術」です。

これは「サラミ一本全部をいちどに盗るのではなく、気づかれないように

少しずつスライスして盗る」と言う寓意です。

つまり、1つ1つの小さな行動を積み重ねていき、

気がついてみたらすっかり変わっていたと言うことを狙うのです。

この場合の武器は“時間の経過“です。

ゆっくり、かつ着実にサラミの1枚1枚を侵食していくわけです。

では具体的にどうやるのでしょうか?最初は、漁船です。

いかにも漁猟のためとして、狙った岩や岩礁の近海にやってくるのです。

しかし、漁船には民兵が載っていたりします。

最初は2、3隻でも、やがて船団となり、ついには何百昔の大船団になったりします。

そうなると、中国海警局の巡視船(ようするに「公船」)が漁船と漁民を

守ると言う口実でやってくるのです。

公船のによる常続的な哨戒活動が始まります。

そういうことが続くと、この状態が当たり前になり、

だんだん、他国の漁船が近づけなくなります。

そのうち、中国公船は近づいてくる他国の漁船に海域からの退去を求めるようになります。

これは、海洋法令執行活動といい、自国領域であることのアピール行動です。

この段階で阻止しないとでも中国公船の活動は大っぴら、

「ここは中国領、中国の主権が及ぶから、警察権を行使する」と言うことになります。

ここまできたら、「キャベツ戦術」が始まります。

漁船、公船の後方に戦闘艦を待機させ、岩や岩礁をぐるりと囲んで、

他国の漁船を締め出してしまうのです。

こうした様子が1枚包み込んでいるキャベツの葉に似ている、

これを「キャベツ戦術」と言うことになったのです。

こうされると、他国の漁船が自分たちの漁場まで行くことができません。

となれば、後は、島や岩礁に上陸して、そこに建物を築いたりして

人工島を建設すればいいわけです。

前記の通りフィリピン領だった中沙諸島のスカボロー礁は

まさにこうして奪われてしまいました。

現在、中国にこの戦術を仕掛けられていうのが、尖閣諸島であるのは言うまでもありません。

中国はこうしたやり方なら、アメリカが動いてて来ないことは学習しています。

何しろ、ワシントンDCから見たらとるに足らない岩礁、岩にすぎないのです。

ニュースにもならないので、アメリカで中国非難の世論が起こることもありません。

こうして海洋進出に自信を持った中国は、南シナ海全域の支配を完成させるため、

人工島の造成に踏み切ったのです。 

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【日中もし戦わば】沿岸の六カ国がそれぞれ領有権を主張

では、中国はどのようにして南シナ海を内海化・何回か軍事的聖域化

してきたのでしょうか?

次の(18)の地図は、南シナ海の概略図に沿岸6カ国が主張する

200海里排他的経済水域(EEZ)の境界線を示したものです。

 中国のラインは先に何度も述べた九段線です。

 しかも地図にあるように、南シナ海には、4つの主要な島嶼群、

すなわち北から「東沙諸島」(パラタス諸島)、「西沙諸島「(パラセル諸島)、

「中沙諸島」(マクセルフィールド諸島)「南沙諸島」(スプラトリー諸島)が存在し、

沿岸国がその全てに対して、あるいはその1部に対して領有権を主張し、

南シナ海の海洋境界確定問題をいっそう複雑にしているのです。

 これ以外にも島嶼や岩礁はありますが、これらのほとんどが、過去の

領有権争いの歴史を象徴するかのように、中国語、ベトナム語、タガログ語、

マレー語などの島嶼名が混在しています。

 もちろん、英語表記もあります。

 さらに一部には、日本語名を持つものもあります。

 なぜならこれらの島は日本が太平洋戦争で破れるまで、日本の領土だったからです。

 南シナ海を中心に東南アジア地域の全てを支配した国家は、歴史上日本以外にはありません。

 では、4つの主要な島嶼群に関して、現場がどうなっているのかを見てみます。

 「東沙諸島(パラタス諸島)」日本の敗戦後の1947年から中華民国(台湾)が

支配しており、台湾は2007年に「東沙環礁国家公園」に指定した。

東沙島(パラタス島)には滑走路があり、海岸巡防署(沿岸警備隊)要員が駐留中である。

 「西沙諸島(パラセル諸島)」西南の永楽群島(クレセント諸島)と

東北の宣徳群島(アンフィトリテ諸島)に大別される。

 50近いサンゴ礁の島と岩礁で構成される。

 現在、すべての島嶼を中国が支配しているが、台湾、ベトナムも領有権を主張している。

 最大の島、ウッディー島(中国名:永興島)は、海南島から約370キロメートルの位置にある要衝。

 1954年、ベトナムから宗主国フランスが去った後、中国が占拠して軍事基地を作った。

 その後、1974年の西沙諸島海戦で、中国がすべて島嶼を支配下に置いた。

 2012年7月、中国はここに南沙諸島、西沙諸島とおよび中沙岩礁群も含め

南シナ海全域を管轄する「三沙市」と、「軍警備区」を設置した。

 2016年2月、ウッディー島の基地に射程約200キロメートルの

「HQ-9」地対空ミサイルや「J-11」ジェット戦闘機が配備されたことが確認された。

 「中沙諸島(マクセルフィールド諸島)」中沙諸島は、そのほとんどが干潮時でも

海面下にある暗礁群。

その全域を中国と台湾が領有を主張し、東部地域はフィリピンが領有を主張。

 暗礁群のうち、重要なのはスカボロー礁(黄岩島、フィリピン名:パナタグ礁)で、

この岩礁は、満潮時も海面上にあるため、国連海洋法条約による「岩」とされる。

 フィリピンのルソン島の西方約220キロメートルにあって、

北方のバシー海峡を窺う戦略的に重要な位置にある。

 そのため、中国とフィリピンが争っていたが、2012年4月、

スカボロー礁内のラグーンで操業する中国漁船をフィリピンの監視船が

検挙しようとしたところ、中国の監視船二隻が現れ、その後、両国の対峙が続いた。

 しかし、台風接近により、フィリピン側が退去すると、中国顔がそのまま居座った。

 現在、中国は、環礁の開口部を封鎖し、環礁の周辺を漁船、海警極巡視船、

海軍艦艇などで重層的に取り巻き、支配を強化している。

 これが「キャベツ戦術」の最初とされるものである。

 「南沙諸島(スプラトリー諸島)」岩礁、砂州を含む120を超える海洋自然地形からなる。

 フィリピン、マレーシア、ブルネイがその1部に対して、中国、台湾ベトナムが、

その全部に対して領有権をを主張している。

 南沙諸島には120を超える自然地形があり、各領有権主張国の支配する

自然地形の数は資料によって多少異なるが、フィリピン八箇所、マレーシア3箇所、

ベトナム21カ所、中国七ヶ所、台湾1カ所と概算されている。

 各領有権主張国は、自国が支配する主な自然地形に小規模な守備隊などを配備している。

中国は、占拠する7カ所を人工島に作り替え、軍事基地化を進めている。

 この中国の7カ所のうち6カ所は、1988年にベトナム海軍との「南沙海戦」で

奪ったものであり、1ヶ所は米軍が1992年にフィリピンのクラーク基地と

スービック基地から撤退した後の空白をついて1995年に占拠したものである。

 なお、これらの4つの島嶼群に、どのように中国が侵入して奪っていったのかを

簡単な年表にすると(19)のようになります。

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【日中もし戦わば】核抑止戦略上なくてはならない深海域

第3章で述べたように、西太平洋への進出を確実にするには、

米軍の自由な活動を妨げる「領域拒否」をしなければなりません。

 とすると、東シナ海はもとより南シナ海を「中国の海」として内海化・

軍事的聖域化する必要があるのです。

現代における「核抑止戦略」を考えたとき、このことが決定的になります。

 しかも、南シナ海は、東シナ海よりはるかに戦略的価値が高いのでしょうか?

それは、深い意味ならば「弾道ミサイル」搭載の原子力潜水艦(SS BN)の潜伏海域を

確保できるからです。

現在、中国は、地上発射型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)でアメリカ本土攻撃できる

能力を持っています。

これまでその主力は固定式の液体燃料推進方式のミサイルDF-5 (東風5)、

で推定射程距離は13,000キロメートルとされていますので、

アメリカ政治の中心であるワシントンDCに届きます。

 しかし、固定式の地上発射型なので、アメリカの先制攻撃によって

中国の核戦力が無力化される公算が高く、アメリカに対する核の抑止力が十分ではありません。

 そこで、中国は、固体燃料発射台付車両(TEL)に搭載できる移動型のDF-31および

その射程延伸型であるDF-31Aを配備しており、特にDF-31Aの数を今後増加させていく模様です。

 しかし、それでも、米国の核攻撃から生き残り、第2撃能力を確保するには不安が残ります。

 つまり、中国はなんとしても「第二撃能力」を確保しなければなりません。

 これができるのは、深海に潜って敵から発見されず、

海中から「潜水艦発射弾道ミサイル」(SL BM)を発射できる潜水艦だけです。

 ただし、中国のSL BMである(JL-2)(巨浪2)の射程は約8000キロメートルしかないため、

これではハワイにすら到達できません。

 とすれば、まず深海域に入り、そこから敵に発見されないように、

太平洋西部海域に出る必要があります。

 そうすれば、ミサイルはワシントンDCまで届くからです。

 こうして、南シナ海が最も重要になるのです。

 東シナ海の水深が約200メートルしかないのに対し、

南シナ海の東部海域には水深3000 ~4000メートルもある海域が広がるからです。

 したがって、中国の原潜は深く潜ったまま、南シナ海の出口である

バシー海峡(最深部は約5000メートル)から太平洋に進出できるわけです。

 中国海軍の原潜の最新のものが「094型晋級潜水艦」で、最新の報道によれば、

すでに射程距離8000 ~14,000キロメートルのSL BMを装備したものが

3隻完成していると言われています。

SL BMの射程が伸びたわけで、そうなると太平洋を潜航して

アメリカ本土に近づかなくても、アメリカ本土に核ミサイルを打ち込めると言うことになるのです。

 このように南シナ海の軍事戦略的価値が高いため、中国は広東省の氵甚江に

中国海軍南海艦隊の司令部を置き、海南島南部の三亜に海軍基地を設けています。

 ここに、2014年、世界最長級の空母用埠頭が完成しています。

 (16)中央共産党の機関紙「人民日報」の国際版「環球時報」のサイトに掲載された空母用埠頭です。

 また、(17)は、海上自衛隊が2016年12月25日に撮影した沖縄周辺海域を航行する

中国の空母「遼寧」です。

 三亜基地の空母用埠頭の長さは700メートル、幅120メートルで、

2隻の空母が同時に停泊できます。

 米軍横須賀基地の空母用埠頭のの長さが400メートル米本土バージニア州ノーフォーク基地が

430メートルですから、中国がいかに南シナ海進出にこだわっているかが伺えます。

 さらに海南島には地下に潜水艦基地があり、2つの軍基地もあります。 

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【日中もし戦わば】第4章南シナ海の人口との軍事要塞化を促進する中国南シナ海とはいったいどんな海なのか?

すでに、中国が南シナ海にある岩や岩礁を奪い、それらを人工島に作り替え、

軍事要塞化しつつある事は、世界中が知っています。

アメリカ、日本、そして南シナ海の沿岸諸国はその対応に頭を痛めてきました。

 特にフィリピンは領有権問題でオランダの仲裁裁判所に提訴したように、

中国の横暴には困りはてていたのです。

 しかし、2016年5月に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領が就任する前は

中国を強く非難していましたが、就任すると北京に赴き、

経済援助と引き換えにこの問題を事実上棚上げしてしまいました。

 この時、ドゥテルテ大統領は中国中央テレビ(CC TV)のインタビューで、

米国やその同盟国がフィリピンを支持する立場に立てば、

「第三次世界大戦を引き起こす可能性がある」と述べたのです。

 彼がいかに苦慮しているのかが伺えます。

 それでは、なぜ中国は南シナ海を内海化する必要があるのでしょうか?

なぜそこまで、南シナ海が重要なのでしょうか?

南シナ海を鳥瞰すれば、マレーシアとインドネシアが底になり、

アジア大陸とボルネオ島・フィリピン諸島に両側を囲まれ、北から台湾が蓋をした、

くびれたツボのような形をした「半閉鎖海」です。

 その面積は約350万キロで、沿岸国の1つである中国にとっては最大の海域です。

 南シナ海に接する中国の大陸部には、広州、深セン、香港を中心とした

「珠江デルタ地域」があります。

 この地域は、1978年から始まった改革開放政策の一環として

最初に経済特区に指定されたチームです。

さらにその先には、1988年に全域が経済特区に指定された海南省(海南島)があります。

 「珠江デルタ地域」は中国経済の成長のエンジンであり、

「北京・天津・河北地域」、「上海を中心とする長江デルタ地域」と呼ぶ中国経済の核心です。

 つまり、ここへの物流の大動脈として、南シナ海は決定的に重要なのです。

 中国貿易のほとんどは、黄海~東シナ海~南シナ海を経由して行われています。

 中国が輸入する原油の約8割が南シナ海を通って運ばれています。

 さらに南シナ海沿岸諸国には約6億人の人口があり、

これにインドの約13億人をたせば、そこには世界人口の4分の1を擁する巨大市場があるわけです。

 中国製品の最大のマーケットです。

 以上が経済的価値ですが、それ以上に大事なのは、安全保障上の戦略的な価値です。 

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【日中もし戦わば】西への派遣拡張を目指す「一帯一路」

中国の西方戦略の代表的なものがシルクロード経済ベルト構想(「一帯一路」)です。

 これは、主に資源エネルギーの確保を中心とする巨大経済圏構想ですが、

(14)の地図にあるように、同構想は「陸路」(=シルクロード経済ベルト)と

「海路」(= 21世紀海上シルクロード)に分かれています。

 陸路が「一帯」で、海路が「一路」と言うわけです。

 このルートに沿って、中国は西方拡大をしていこうと言うのです。

 2015年12月、この戦略を実現するための金融機関として、

AI IB(アジアインフラ投資銀行)を発足させました。

構想段階から世界中に出資を呼びかけて英国やドイツなども参加することになりましたが、

アメリカと日本は参加しませんでした。

 なぜならこれはIMF (国際通貨基金)とADB (アジア開発銀行)と言う、

すでにある国際金融と経済の枠組みに対する公然たる挑戦だからです。

 また、ドル基軸通貨体制に対する挑戦でもあります。

 「一帯一路」と言うシルクロードの起点は、公式の構想図では陸路は西安、

海路は福州となっていますが、その先はもちろん北京です。

 陸路のシルクロードは昔からあったわけですが、海路のシルクロードはありません。

 中国が新たに構想したものです。

 その線は、南シナ海からアラビア半島に至るシーレーンがさらに伸びて

北は地中海に入ってイタリアのベニス、ケニヤのナイロビにまで達しています。

 ここでの問題は、インド洋のルートです。

 中国は、ミャンマーやバングラデシュに投資し、中国の艦隊も帰港できる港湾建設を

支援しているからです。

 上の(15)の地図を見てください。

 この地図にあるミャンマーのシットウエ、バングラデシュのチッタゴン、

スリランカのハンバントゥダ、パキスタンのグアダルがそうした港湾です。

 これらの港湾を結ぶ線は、インドを囲んだ首飾りのように見えることから、

「真珠の首飾り」と呼ばれています。

このように取り囲まれたインドは面白いはずがありません。

 インドは、アフリカ東部やアシアン諸国と連携を深める戦略に出て、

これは真珠の首飾りに対して、「ダイヤのネックレス作戦」と呼ばれています。

 インド洋はアメリカ海軍の作戦地域でもあります。

インドまでは、日本の横須賀港を母港とする「第7艦隊」の担任海域であり、

アラビア海、ペルシア湾、紅海などは

バーレンのマナーマを母港とする「第五艦隊」の担任海域です。

 さらに、インド洋の真ん中の上のディエゴガルシア島には、アメリカの軍事基地があります。

それを承知で、中国海軍はインド洋まで進出しようとしているわけです。

 シルクロードは、中露の協調提携関係があるため、現在のところ障害はありません。

 2015年5月に、プーチン大統領は中国の「一帯一路」との連携を打ち出しています。

 さらに、2019年6月、プーチン大統領はインドなどを取り込み、

「大ユーラシア経済パートナーシップ」と言う構想を発表しています。

 こうした中露の動きは、明らかに既存の日米欧主導の秩序に対する挑戦です。

 2049年、アメリカを超えるスーパーパワーになる中国の野望が、

確実に進んでいることだけは確かです。

 このような中国の野望は、日本にとっては「悪夢」です。

 最悪の場合、日本は事実上の中国冊封体制下に置かれ、

中国の属国になりかねないからです。 

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【日中もし戦わば】アジアの盟主として環太平洋間を支配する中国の構想

2010年5月、習近平国家主席はCI CA (アジア信頼醸成措置会議)において、

アジアの安全はアジア人民が守るべき」と言う「新アジア観」を提唱しました。

 これは言ってみれば、アジアから排除することを意味しており、

中国がアジアの盟主であると宣言したようなものです。

そうしたアピールを現実化するために、中国はFTA AP (アジア太平洋自由貿易圏)構想の

実現に向けて動くようになりました。

 これは、現在、アジア太平洋圏に存在する各種の国連各地の国際連携の

最終ゴールとなるものですが、中国とアメリカがFTAを結ぶ必要があることから、

実現は極めて難しいと考えています。

それでも、実現に向けて動くのは、「強中国夢」と言う国家目標のためです。

 今あるアジアを含む環太平洋圏の最も大きな国際連携はエイペック

(アジア太平洋経済協力会議)です。 

ここには、わが国はもとより、アメリカ、ロシア、中国、アシアン、中南米諸国など

21の経済主体(エコノミー) (13)が、その参加国。

APECは経済協定ですから、域内の貿易投資の自由化を目指していますが、

規模が大きすぎてあまり進展していません。

 また、香港や台湾も参加しているので中国にとっては居心地が悪く、

最近は、単に首脳が集まるだけの会議となっています。

 そんな中でできたのはTPP (環太平洋パートナーシップ協定)でした。

しかしなんと、トランプ大統領によってアメリが真っ先に離脱してしまい、

宙に浮いてしまいました。

ただこのことは、参加しなかった中国にとっては朗報です。

 なぜなら中国は自身が主導できるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に

参加しているからです。

 RCEPには、中韓とインド、オーストラリア、ニュージーランドに加え10カ国が参加しています。

 つまり、アジアの環太平洋圏にある国々は皆参加しているわけで、

アメリカをアジア圏から排除していくことが可能になります。

要するに中国は、国際社会の枠組みを中国主導で作り替えようとしているのです。

 歴史学者のポール・ケネディーは「大国の興亡」(草思社、1993)で、

「台頭した大国はすべて、古くから根を下ろしている大国の既得権に沿うように

作られた国際通秩序の再編を望むもの」と述べています。

まさにこれをやろうとしているのです。

以上は、中国から見て東方を意識した戦略ですが、西方を意識した戦略は

もっと露骨かつ強力です。 

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【日中もし戦わば】「接近阻止・領域拒否」戦略とは何か?

ここで再び、(12)の地図を見てください。

 ここに示された中国の防衛戦略「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)は、

実は中国ではなく、アメリカが名付けたものです。

 2009年、国防相が議会に提出した年次報告書「中国の軍事力・ 2009」において

提唱された名称です。

以後、この言葉は世界中で広く使われてきましたが、

2016年10月20米海軍作戦本部は「定義が曖昧なため実際の作戦で

問題が生じる恐れがある」として、この言い方を使わないように呼びかけました。

しかし、ここでは、いくら曖昧といっても中国の防衛構想がよくわかるので、

以下、この言葉に沿って説明します。

まず、「領域拒否) (AD)です。

 これは、第一列島線内には、いかなる国の軍隊も入れさせないと言うことです。

 もちろん米軍が主な標的です。

さらに具体的に言うと第一列島線内に米軍が部隊を送り込んでくる事態を防ぐため、

努めて遠方で米軍の部隊を撃破してしまうと言うものです。

 例えば、台湾有事が起これば、沖縄の嘉手納基地に配備された米軍の戦闘機が出動します。

 これを防止するには、主として地上基地を基盤とする兵力を対象とした

攻撃を行うことになりますそのため、ここで使われるのは対地・対艦用弾道ミサイル、

攻撃、水上戦闘機、潜水艦、機雷などです。

 続いて「接近阻止」(A2)です。

 これは、第二列島線以内の海域において、米軍が自由に作戦を、展開することを

阻止すると言うものです。

 したがって、攻撃対象は主として海軍力を基盤とする勢力となります。

 具体的に言えば、遠方から接近する米海軍の空母打撃群を撃破することを

意図したものです。

 そのため、索敵のために偵察衛星やOTHレーダーが配備されています。

 こうして発見したときは、「空母キラー」と呼ばれるDF-20・ DF-26などの

対艦弾道ミサイルを始め、「HK-6」爆撃機などの対艦ミサイル、

「63M」潜水艦などの水中発射対艦ミサイルなどで攻撃します。

 すでに中国も空母を持ったのでこれを出動させることになるでしょう。

 この「A2/AD」戦略は、中国から見ればアメリカに対する防衛戦略と言いますが、

周辺国、すなわち、日本、台湾、フィリピンなどから見たらどうでしょうか?

はっきり言ってこれらの国を無視したと言うより、攻撃すると言っているのに

等しいものです。

 特に、台湾にとっては、実行されれば国土が戦場となってしまいます。

 すでに中国は、世界はアメリカと2分割する「米中太平洋分割管理構想」を掲げています。

 今のところその実態はありませんが、中国は本気です。

 太平洋分割管理構想は、2007年5月、ティモシー・キーティング米太平洋軍司令官が

初めて訪中した際、中国海軍高官から持ちかけられたと言います。

 「最初は冗談かと思っていたが、本気だったので驚いた」と、その後、

キーティング司令官が議会で証言しています。

 そして、2013年6月、米中首脳会談で習近平主席がオバマ大統領に正式に提案しています。

 太平洋分割管理構想が意味するところは、太平洋のど真ん中にある日付変更線あたりに

線を引き、そこから西を中国の勢力圏、東をアメリカの勢力圏とするものにすると

言うことです。

となると、ハワイの西に中国の「第3列島線」が引かれると言うことになります。 

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【日中もし戦わば】日本やアメリカにとっても重要な第一列島線

中国にとって、第一列島線は、視覚的に重要な海域です。

 中国の海は、北の図們江から東南の沿海部は日本や韓国、北朝鮮によって

取り囲まれており、南の沿海部とその海域には台湾、フィリピン、マレーシア、

シンガポール、インドネシア、ベトナムなどがあり、

すべてを周辺隣国の列島に包囲されています。

 これは、大きなハードルが横たわっているのと同じで、

この不利を克服しなければ太平洋やインド洋への海洋進出を果たせないのです。

そこで、まずは自分の“庭“とか第一列島線内の海域支配を狙っているのです。

ただし、第一列島線は日本やアメリカにとっても重要なラインです。

明治初期に外務省顧問となったアメリカのリゼンドル退役少将は、

1874年の台湾出兵に際して、「北樺太より南は台湾に至る1連の列島を領有して、

支那大陸半月形に包囲し、さらに朝鮮と満洲の足場を持つにあらざれば、

帝国(日本)の安全を保障し、東亜の時局を制御することができぬ」建言しています。

 この地政学的な安全保障観は、その後の日本の外交・国防政策の基本となり、

現在でも生き続けていると言って良いでしょう。

仮に中国が台湾を制したり、南西諸島に足場を固めたりすることがあれば、

日本は極めて深刻な事態に見舞われることになります。

 そのため日本にとっても第一列島線は死活的に重要なラインなのです。

 また日米安全保障条約の「生みの親」とされるジョン・フォスター・ダレス国務長官は、

第一列島線の重要性について次のように次のように言及しています。

 「アリューシャン列島につながる「鎖」-日本、韓国、琉球(沖縄)、台湾・膨湖諸島、

フィリピン、東南アジアの1部の地域、及びオーストラリア、ニュージーランドは、

中国大陸を囲むようにしてつながっており、この「鎖」こそ、

太平洋地域の安全保障上不可欠なのである」つまり、

アメリカもまた第一列島線を軸にして、東アジアの安全保障体制を構築してきたのです。

 しかしながら、中国から見て、この「障壁」は、逆に「防壁」としての機能も

併せ持つことにも注目しなければなりません。

 この観点から中国の防衛政策は、前述したように、第一列島線を「最終抵抗ライン」

第二列島線を「遠海防御ライン」とすることで成り立っています。

第一列島線の内側では、「近海行動防御作戦」が実行され、

第二列島線までの海域では前方防御海域とする「遠海防御作戦」が行われることになっています。

では、中国は、この二つの海域で、具体的には何をしようとしているのでしょうか?

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