もちろんどんな企業であれ、黒字で受注したいのは当たり前だが、
雇用の調整ができなければ赤字でも受注することがある。
なぜなら、受注しなければ売り上げはゼロだからだ。
それよりも売り上げがちょっとでもあったほうがいい。
売り上げがなければもっと赤字が拡大するからだ。
受注産業である程度雇用を抱えていれば、赤字受注はしばしば起こる。
だからどうなのと言う問題だ。
こんなのは単価に依存する。
100の価格で受注して20の利益を得られるとすれば、コストは80にある。
そのほとんどが人件費だ。
多くは必ず払わないといけないものがあるから、調整できなければ単価は60でも80でも
受注するだろう。
これは飛行機で空席を埋めるためにディスカウントするのと同じ原理だ。
さすがの韓国企業も年中赤字で受注しているわけではないだろう。
例えば、韓国では造船業が世界一だ。
造船と言うのは受注作業で、仮に受注がなくても雇用を維持しなくてはいけない。
すると赤字でも取りに行く。
これは公共投資に近い。
赤字でも取るのは、0よりはマシと言う感じで受注することがあるだろう。
造船業は国際マーケットでいろんな国が参入しているから、正直あまり利益は出ない。
だから人件費の安い国が有利だ。
韓国はこの分野からそろそろ撤退するのではないかと思う。
たいした技術が必要ではなく、他国と差をつけにくいからだ。
造船業は人件費に依存する。
これを労働集約型産業と言って、人件費が高くなるほど不利になる。
日本も戦後、1960年代までは造船業ですごく稼いでいた。
かつては先進産業だったが、人件費が上がっていく中で維持が難しくなっていった。
その前は英国でもすごかったが、どんどん辞めていった。
日本には、瀬戸内海に造船業者がひしめいていた。
1980年代後半、日本はもう造船業がダメだと言うことでドックを閉鎖していた。
ドックは当時の運輸省の所管だが、各地の造船所に行ってどんどん閉鎖する仕事に携わったことがある。
下手に閉鎖してしまうと、船の価格が上がることも懸念されていた。
造船関係の団体からもそのことについて釘を刺されていたが、筆者は「世界に造船所はたくさんある。
ここがなくなってもどこかで作られるから大丈夫」とすごく単純に考えていた。
全く気にしないでドックを閉鎖していった。
当時、その会社には数百人いたと思うが、全員が解雇された。
その時の手切れ金で、それぞれがいろんな会社を作っていた。
造船の技術者は溶接等が上手だから、中にはレジャー用の車を改造する会社を
5人位で立ち上げたりしていた。
他にも海の産業だから、ドックをプールにして養殖業に転じる人もいた。
「造船ニッポン」などとうたわれ、凄腕の技術者もたくさんいたが、
会社が潰れてしまう位だから、造船業は本当に大変だったと思う。
韓国もいつかそうなるかもしれない。
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