最終更新日 2021年3月3日水曜日 11:13:18
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【日中もし戦わば】日本と中国のA2/ADネットワークの違いはここにある

以上が日本版A2/ADネットワークの概要ですが、中国とは地政学的条件が異なるので、

全く同じ戦略を取るわけではありません。

例えば、中国のA2/AD戦略は西太平洋がA2 (接近阻止)、東シナ海及び南シナ海が

AD(領域拒否)ですが、日本の南西諸島の防衛は国土防衛であり、

西太平洋は日米の生命線である海上交通路があります。

そしてアメリカ軍が進出するエリアでもあるので、

完全な支配ゾーン(領域支配)でなければなりません。

そのため列島線沿いで敵を阻止するだけでなく、西太平洋海域は対艦ミサイルや

日米の対戦哨戒機・潜水艦等により日米の支配ゾーンとしなければなりません。

また列島線の東シナ海側も、国土を守るためにはA2 (接近阻止)ではなく、

AD (領域拒否)なければなりません。

日本はそれを可能とする手段を保有しており、

日中中間線付近までは拒否ゾーンとすることが可能です。

 水中には明確な支配線がありませんが、日米の水中作戦の動向によって

前後に動くことになります。

日本版A2/ADネットワークではA2の要素が少ないので、

実態としてはむしろAD/AD0 (領域拒否/領域支配)といえます。

日本は西太平洋と言う「領域」をしっかり支配することで、

西太平洋に向かう中国のアクセスを拒否できます。

さらに、C4ISRネットワークを構築してアメリカとクロス・ドメインの関係を

構築することで、防衛体制はさらに盤石なものになるはずです。

日本版A2/ADネットワークのイメージは(34)の通りです。

日本版A2/ADネットワークでは、例えば尖閣諸島で有事が発生した際にも、

対艦・対空・対潜水艦の「火力の壁」を南西諸島に構築することが必要です。

その前提がなければ、日米の海空作戦は有利に展開できません。

仮に尖閣諸島が中国に占領されたとすれば、南シナ海のウッディー島

(パラセル諸島で最大の島、中国名で永輿島)のように防空・対艦ミサイルが配置され、

南西諸島の半分が射程内に入ります。

そのため、たとえ小さな島であっても全力で対処するのが、

日本と言う国を守るために必要なことなのです。

「牛刀を持って鶏頭を断つ」と言う考え方が、軍事力の運用にあたっては前提となります。 

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【日中もし戦わば】「日本版A2/AIネットワーク」を構築せよ

では、「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」において、日本は何をなすべきなのか?

求められているのは、日本版A2/AD(接近阻止・領域拒否)ネットワークの構築です。

 中国はアメリカ軍の接近を阻止し、自国の領域においてアメリカ軍が

自由に行動することを防ぐために「A2/AD」戦略を用いていますが、

それを逆に日本が中国に対して行おうと言うのです。

 中国が軍事行動を起こした際、アメリカの海軍・海兵隊が第二列島線まで退き

長距離作戦に移行する、日本は中国の侵攻を、ほぼ独力で阻止せざるをえない事態に陥ります。

 つまり、第一列島線上で繰り広げられる攻防は、陸海空自衛隊や国民が総力を挙げた

国土防衛であることを認識しておかなければなりません。

 日本版A2/ADネットワークの構成は、次の4つに大別できます。

 ちなみに核抑止力の維持、宇宙・サイバー戦における優位性の確保、経済封鎖等は、

アメリカに頼らなければならない分野です。

 ①阻止作戦(拒否し防御する)国土防衛線で大事なのは、南西諸島の主要な島々を

寸土も中国に奪われてはいけないと言うことです。

島嶼に入り配備した対艦ミサイルや防空ミサイル、地上発射型対潜ミサイルと

海空自衛隊の対艦ミサイルとを連接させ、島嶼の防衛と列島線の封鎖網を構築します。

 こうして中国の島嶼への侵攻を阻止するとともに、中国海空軍の西太平洋への進出を阻止します。

 合わせて、北太平洋からの中国艦隊の迂回行動を阻止するため、

対馬や津軽海峡、宗谷海峡にも、対艦・対空・対潜の壁を構築する必要があります。

 防勢作戦は海空作戦が不利な状況で展開されると考えられるので、

島嶼の拠点を地下化して抗堪力を増すだけでなく、一定の食料、弾薬・燃料などを

事前集積するとともに、人員・装備は追加の補給部品など途絶えることなく

輸送するための高速・大量の海上輸送力を保持することが必要です。

②抗堪力・継戦力の発揮・維持(生き残り、戦い続ける)喫緊の課題は、

中国のミサイルによる飽和攻撃にどう対処するかです。

アメリカ軍は、既存のMD (弾道ミサイル防衛)システムでは中国やアメリカの

弾道ミサイル攻撃に対処するのが難しいと認識しています。

そのため、既存のMDを維持しつつレーザー兵器はマイクロウェーブ(電磁波)兵器、

レールガンなどを開発し5年から10年の間に装備化して部隊に配備しようとしています。

 エアシーバトル構想で「敵のミサイルを味方に命中させない」と言及しているのは、

新たなMDに移行することを示しています。

 この具体的な例として、シリアに展開したロシア軍の防御システムが挙げられます。

 軍事作戦において、敵のミサイル攻撃等を電子的に妨害し、その能力を発揮させないために、

2 ~3両の特殊車両お配置して半径約300キロメートルの

「電子戦ドーム(電子戦シールド)」を構築している模様です。

この「電子戦ドーム」が作る防御網の中で行動している限りは、

安全が保たれると言うわけです。

 対ミサイル防御シールドのイメージは(32)示します。

一方、日本にも優れた電子戦の技術・能力があることから、

早急に同種の開発を進め装備化することが肝要です。

 これに、既に開発されているイージス・アショアは(イージス艦のMDシステムの

地上配置型)などと前記のマイクロウェーブ弾(強力な電磁波による敵の電子機器を

破壊又は誤作動を引き起こす)やレールガン、レーザー兵器などの最新装備を

組み合わせれば、強力な日本独自のMD網を構築することができ、

電子戦・サイバー戦でも優位に立つことが可能になります。

 日本には、これらの装備を実現できる、世界に誇る強力な高出力電源の

技術があることが大きな強みとなっています。

 一方で、日本はこのような技術力や国の宝として保護する国家施策が必要となります。

同盟国アメリカと言えども、日本にバーゲニング・パワーとしての高度な防衛装備

・技術がなければ、一方的に米国の防衛装備・技術を移転してくれるわけでは無いのです。

 日米共同開発を進めるためには、自らの技術を磨かなければなりません。

 将来期待される電子戦などの日本防護のイメージは(33)の通りです。

 先にも述べましたが、アメリカ軍が日本に残留して戦闘を継続するには、

日本の民間飛行場に必要な上弾薬や燃料などを事前集積し、

いざというときに軍用としてつかえるかどうかにかかっています。

 日本は自国防衛の責任を自覚し、早急に民間飛行場を日米が共同で

使用できるようにしなければなりません。

また海空自衛隊の航空基地や港湾の防空や対ゲリラ・コマンド攻撃対処

(以下、対ゲリコマ対処)は極めて不十分です。

急いで防御体制を充実させる必要があります。

日本が独自に開発した短距離・中距離対空ミサイルは中国の巡航ミサイルを

撃破する能力があるので、これらを陸海空自衛隊で多数装備することが望まれます。

陸上自衛隊の部隊は、有事の際、ほぼ半分の兵力が南西諸島に展開されるでしょう。

すると日本本土の対ゲリコマ戦力が不足し、都市部でのテロの被害に遭う

可能性が高まります。

日本のゲリコマやテロの対処体制は法整備も含め不十分であり、

それを補完するためには陸上自衛隊の大幅増員は避けて通れないところです。

国民を核攻撃から護ためには大規模なシェルターの建設が必要となるでしょう。

これらのシェルターの建設をマイナスイメージで捉えてはいけません。

防災にも有効です。

さらに、日本の経済浮揚や新たな国土開発として、

その発展の土俵を地下にも広げると言うパイオニア精神が必要でしょう。

地下に新たに緑豊かな商業施設や娯楽宿泊施設などを作り、普段から活用する工夫が必要です。

積極的な国土強靭化計画として大きなプロジェクトを組む事は、

新たな発表をわが国にもたらすことになるでしょう。

③アメリカ軍の防勢作戦間の攻勢への参加(限定された攻撃力の発揮)

中国の戦力発揮を支えるC4ISRを無効化するためには、陸海空自衛隊が統一された

構想の下に電子線・サイバー戦能力を強化し、地上配備型の装備を骨幹として

国土全域を「電子戦バリアー」で覆うことが必要です。

そして、陸海空自衛隊の統合運用の下、盲目化作戦

における日米の連携も進化させなければなりません。

また水中の支配は、潜水艦に加え水中の無人機、潜水艦探査システム、対潜哨戒機及び

これらをつなぐネットワーク等の総合的な運用によって、

初めて圧倒的な力を持っており、オーストラリやインド、ベトナム等と

連携することで、東シナ海・南シナ海や西太平洋において

絶対的な水中優勢を確保することができます。

④C4ISRネットワークの構築(クロス・ドメインの組織化、一体化)C4ISRネットワークの

一元的な構築は、体中作戦を実行する上で大前提となる要素です。

通信のパイプの太さや強さを見極め、予備手段を含めて残存性が高いシステムを

構築する必要があります。

特に島嶼が連なる南西諸島では、地上・空中・海底のネットワークを構築して

アメリカ軍と一体化しなければなりません。

そして情報や通信のバックアップとして、アメリカ軍と同じように

小型即応型衛星や無人機などを装備化する必要があります。

また地上用として、航空自衛隊が保有する移動式の多重無線通信装置で、

残存性の高いシステムを構築しなければなりません。 

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【日中もし戦わば】台湾やフィリピンとの関係を強化して連携を深めること

「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」においては、

日本は近隣諸国との連携を深めることが求められています。

 特に目と鼻の先にある台湾とは、強力な関係を築く必要があります。

 第二次世界大戦後、日本は台湾(中華民国)を承認して国交を結びましたが、

1970年の日中国交正常化で国交断絶し、その後は非公式な間柄でつながっています。

 しかし、日本が南西諸島防衛を固めるためには、「運命共同体」の関係には

台湾との協力連携は不可欠であり、必ず関係を改善・強化しなければならない国です。

 同じ第一列島線に位置するフィリピンも、連携を深めるべき国です。

 2016年に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は反米親中路線を一時歩みましたが、

アメリカとの関係改善の方向性が見られるようになってきました。

 日本に対しては「日本は兄弟よりも親しい特別な友人」と述べるほど好意的です。

 フィリピンにとって日本は重要な貿易・投資相手国でもあり、

今後も良好な関係が続くと思われます。

 台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡は、「阻止の壁(内壁)」の中でも特に重要な地域です。

太平洋と南シナ海を結ぶ交通の要衝で、太平洋戦争ではアメリカ海軍の潜水艦が

日本の輸送船をいくつも沈め、「輸送船の墓場」とも呼ばれていました。

 この海峡から中国の潜水艦が出入りすると、日米にとっても厄介ですから、

なんとしてもその動きを阻止しなければなりません。

 CSBAの「エアシーバトル構想」には、中国本土への攻撃も含まれています。

攻撃するかどうかアメリカ大統領が判断しますが、事態がエスカレートすれば

核戦争を招く恐れもありますから、今日の国際情勢の下では、

米国が中国の領土深く侵攻して占領支配する可能性は限りなく低いと思われます。

 しかし、米国に脅威を与える敵の基地や施設等を直接攻撃し、

また、敵の戦力発揮を支える4ISR能力を低下させ、

惑わせる非物理的攻撃は目に見えない形で行われるでしょう。

 こうした戦略に日本が積極的に参加する事は、日本を守り、アメリカを助けることになります。

 そしてもう一つ、問題となるのはなるのがロシアの存在です。

 アメリカの戦略構想と融合させながら、できれば中国とロシアの関係を分断し、

こちら側に引き込む深謀遠慮が必要でしょう。 

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【日中もし戦わば】「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」の提唱

対中戦略を考えたとき、日本はアジア太平洋・インド地域の国々と

協力し合うことが必要不可欠になっています。

 そして同盟国・友好国の力を結集した抑止力で、中国の軍事的冒険の意図を

断念させないければなりません。

あくまでも武力紛争に訴える事は目的ではなく、武力紛争に発展しかねない

中国の軍事的野心と行動を断念させることに目的があります。

この際、アメリカと中国の枠組みだけで考えていると大きな誤算を犯します。

 アメリカと中国が直接戦うことに対しては、両者とも大きな抑制がかかりますが、

中国の2020年代の軍事戦略は、アメリカと日本などの国々を分断しながら、

最終的には軍事力を持って日本や第一列島線の国々に対する局地的な戦いに勝利することなのです。

 したがって、そのような行動を取らせないために、日本や第一列島線の国々は

自らの努力で「拒否力」を向上させ、さらに米国と一体となった力を見せることにより、

強大な軍事力をちらつかせて周辺国を圧迫し、自国に有利な支配的環境を

作ろうとしている中国に対抗する戦略が必要となるのです。

 そうした中国の環境作りを阻止するためにあるのが、以下に提唱する

「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」なのです。

 戦後の日本は日米安保の恩恵を受け、防衛の大半はアメリカの軍事力に依存してきました。

 しかし、これからは少なくとも通常戦略に関しては、

「自分の国は自分で自助自立の体制に移行していかなければなりません。

 それが、これから述べる戦略の大前提です。

 「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」の柱となるのが、

(31)にある第一列島線に位置する国々の領域防衛を連接した「阻止の壁(内壁)」と、

その外周に設定した海上交通路の要所を遮断する「海上封鎖網(外壁)」です。

 この「二重の壁」からなる戦略体制を構築することで、

中国の軍事的な海洋進出の野望を阻止します。

 中国は「アジア太平洋・インド地域防衛戦略」の「二重の壁」の内壁について、

「U字型防衛線で我が国を封鎖しようとしている」と反発するのは間違いありません。

「二重の壁」の戦略を遂行する上で重要なのは、アジア太平洋・インド地域の国々が

実際に結束した力を見せつけることです。

 そうしないと中国の覇権的拡張の意図を抑止することができません。

そしてこの戦略は、安倍晋三首相が掲げる「セキュリティー・ダイアモンド構想」と

軌を1にするものです。

 この構想は、2012年12月に第二次安倍政権が発足した直後、英字論文として発表されました。

 日本とハワイ(アメリカ)、オーストラリア、インドを結ぶダイアモンド (ひし形)の

枠組みで、わく内の日米豪印が連携して守ると言う防衛戦略です。

枠の中には東シナ海や南シナ海が含まれており、明らかに中国を意識したものです。

 外壁の海上封鎖を構築するに際して鍵を握っているのが、アメリカとオーストラリア、

そしてインドです。

 東側はアメリカ主導で日本も加わり海上封鎖のラインを構築しますが、

西側のアンダマンやニコバルなどの封鎖ライン構築はインドが担います。

 今後アメリカとインドの橋渡しは日本の重要な役割となるでしょう。

 そして南方の封鎖には、オーストラリアも加わります。

 南シナ海を米軍の潜水艦が封鎖すれば、絶大な効果を発揮するはずです。 

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【日中もし戦わば】CS BAが考える対中国戦略とは?

CSBAのアンドリュー・クレピネビッチ所長(所長は2016年3月まで)は、

「アメリカ及び同盟国・友好国の最終目標は、中国に「武力による目的達成ができない」

と認識させる拒否的抑止を達成することである」と述べており、

そのために第一列島線に沿って列島線防衛ラインを構築することの重要性を説いています。

対中戦略と言えば海軍や空軍が登場しがちですが、クレピネビッチ所長は地上戦力の

コストパフォーマンスの良さも指摘しています。

 アメリカ陸軍は陸上自衛隊のようなSSM(地上から発射される地対地・地対艦ミサイル)、

SAM(地対空ミサイル)などを装備し、さらに地上配備型の弾道ミサイルを保有する部隊に

改編し、日本からアシアン諸国に連なる第一列島線沿いに配備すれば、

中国の海軍も簡単に西太平洋には出られなくなります。

 ただし、アメリカ陸軍がこうした考え方を受け入れるかどうかは未知数です。

 アメリカの脅威対象国は相変わらずロシアで、陸軍はロシアとの戦いに備えてきたからです。

 しかし、対中戦略に本気で取り組むのであれば、作戦構想や装備体系を

大きく変えなければならないでしょう。

 アメリカ海軍についてはクルピネビッチ所長も「空母は中国のミサイル攻撃が続く間は

第二列島線以遠に再配置し、長距離攻撃で第一列島線の防衛に関与する」と述べており、

この通りの作戦が展開されれば、日本列島の防備が薄くなる可能性があります。

 そのため、自衛隊も対中戦略を念頭に入れた上で、戦力構成を見直す必要が

あるのかもしれません。

特にアメリカでも言われてる事ですが、「水中の支配」が極めて重要で、

最新の潜水艦、機雷などを拡充させていくことが肝要です。

 この際、北朝鮮の弾道ミサイルを発射できる潜水艦にも対応するために、

日本は原子力潜水艦の保有についても真剣に検討することが必要です。

 一方、在日米空軍の主力は日本に残って戦闘を継続します。

しかし、中国のミサイル攻撃による損害を避けるために、民間飛行場を含めた

国内の飛行場に広く分散 ・展開できることが必須条件です。

そして、空軍が使用する燃料や弾薬もあらかじめ分散配置しておかなければならないのですが、

日本はそうした対策を講じてもいないし、関心すら示していません。

 米軍の傘に守られ続けたせいで、「自国に攻めてきた敵は、自国が対処する」と言う

基本理念さえも忘れてしまっているのです。 

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【日中もし戦わば】日本には安全な場所はない

われわれは尖閣諸島だけに関心が向きがちなので、中国の軍事的脅威も

「せいぜい沖縄から九州ぐらいまででしょう」と考える人が少なくありません。

 ところが中国軍の配備から見れば日本に安全な場所はありません。

 北海道や青森県の三沢も中国のミサイルの射程に入っているので、

侵略地域を勝手に尖閣諸島、八重山諸島、沖縄本島等に限定するのは誤りです。

 中国のミサイルと言えば弾道ミサイルを思い浮かべがちですが、巡航ミサイルも増強されています。

 日本では通常の弾道ミサイルへの対応は最低限度となっていますが、

巡航ミサイルは抵抗度を飛行するのでレーダーに探知されない可能性があります。

 巡航ミサイルの中でも特に厄介なのは、弾体の中に多数の子爆弾を搭載した

クラスター爆弾です。

 これを使用すると不発弾が残るので、2007年のオスロ会議で同爆弾の禁止が

提唱されました(オスロ宣言)。

 ところが中国はオスロ会議に参加しておらず、クラスター爆弾を保有していると

みられています(日本は2015年に廃棄完了を発表)。

 滑走路にクラスター爆弾が投下されると穴だらけになってしばらく使えなくなります。

 中国軍は東アジアにあるアメリカの主要施設を攻撃できる弾道ミサイルと

巡航ミサイルを既に開発しており、さらには第一列島線沿いの標的を攻撃する

ステルス戦闘機の開発にも取り組んでいます。

 そういう意味では、我々にとって極めて厳しい状況にあるといえます。

 さらに中国は現在「極超音速滑空ミサイル」を開発しています

(イメージは(29)に示すとおり)。

この次世代兵器の飛行速度はマッハ10、核弾頭搭載も可能とされ、

特異な動きをして防衛対処が困難だと言われています。

 もちろん、極超音速滑空ミサイルはアメリカやロシアも開発していますが、

中国も同等の技術を有していると思われます。

 中国の短期・高烈度決戦の局地戦では、第一列島線の国が攻撃対象となります。

 そのため、日本にも直接的な脅威があり、同じような脅威を受ける第一列島線上に

ある台湾やフィリピン、さらにベトナムなどとらつながらなければならないのです。

 一方で、中国は軍事力を使わない「三戦」の戦略で、日米の分断を図っています。

 その代表例と言えるのは尖閣諸島問題であり、沖縄の基地問題です。

さらにサイバー戦などを展開し、在日米軍基地等を直接攻撃しないで

日本を圧迫しているのです。

 そのうち、核で恫喝するようになるかもしれません。

 そしてアメリカ軍との間に心理的・物理的な溝が広がると、

中国は日米共同作戦の隙をつき、海上民兵に先導された多数の歩兵や特殊部隊等を使って

島嶼部を攻撃する可能性があります。

中国は、漁船約200隻を使えば1個師団(6000 ~10,000人規模)規模の

地上部隊を輸送することができるのです。

 これまで、実際に数百隻の大船団が日本近海に現れたこともあります。

 2014年には、約200隻の漁船が小笠原諸島の父島・母島周辺で、

不法な赤珊瑚漁を行っています。

 小笠原は第二列島線のライン上にある、中国側の日米に対する示威行動とみられています。

 尖閣諸島付近に多くの漁船が押し寄せたのも、一度や二度ではありません。

 こうした行動は、将来、上陸作戦を敢行するときのリハーサルとも考えられています。

 また2010年から施行された国防動員法によって、在外の中国人旅行者や留学生も

一斉に蜂起するでしょう。

 国防の義務を履行しないものや拒否するものは罰せられるので、

日本にいるたくさんの中国人も決起します。

 そして、彼らの手引きで特殊部隊が入り込み、日本国内に大打撃を与えます。

 日中間で有事が発生すれば、少なくとも自衛隊の半分は南西諸島に向かいます。

 そうなれば、国内の守りは手薄になるわけですから、

この問題はシビアにとらえないといけません。

2014年のロシアによるクリミア併合では、階級章をつけてない軍人や民兵が暗躍しました。

 アメリカは彼らを「リトル・グリーン・メン」と呼び、その行動を

「忍び込む侵攻」と位置づけて注目しています。

 これを中国に当てはめると、海上民兵を活用した攻撃が該当します。

 クリミアと同じような脅威が日本にも迫っていると言うわけです。

 南西諸島には数個師団相当の兵隊が上陸してきますから、あっという間に占領されてしまいます。

 ですから、日中間での地上戦はそんなに緩くありません。

 しかも南西諸島の周囲はほとんどがサンゴ礁に囲まれており、

現有の水陸両用車で乗り越えるのは困難です。

 そのため、敵は必ず海岸から上陸するわけではなく、港や飛行場を使って

侵入することも念頭に入れておく必要があります。

 こうした中国の攻撃に運用されるのが、初動対処や局地戦対処を前提とする「快速反応部隊」です。

 総兵力約28万人で、空挺軍や軽機械化師団、特殊作戦部隊、海軍陸戦隊で構成されています。

 日本はこうした脅威の存在をしっかりと認識し、備えを固めておかなければならないのです。

 中国快速反応部隊の概要は(30)示します。 

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【日中もし戦わば】対中戦略における日本とアメリカの認識のズレ

中国軍が短期・高烈度決戦の局地戦において勝利を目指している事は、

日米共通の認識です。

この曲線と言うのは、第一列島線の国々に対する直接攻撃ですから、

日本に被害が及ぶ可能性は限りなく高くなります。

ただし、アメリカは対中戦では長期戦に持ち込み、

疲弊させて勝利を掴み取ることを目標としています。

 「中国の海・空軍が出てくるのを食い止めて、短期線で決着をつける」と言う

日本が理想とする戦略は、軍事的合理性を追求するアメリカとの認識のズレとなって

表面化しています。

 そのため、日本は同盟国であるアメリカが応援に駆けつけるまで、

中国軍の攻撃に耐え、戦い続けなければなりません。

 防勢と攻勢のイメージを(28)に示します。

 アメリカは圧倒的な核戦力を持っています。

 しかし、中国も核兵器を持っているので、全面戦争になればお互いに都市を

核攻撃し合い、破滅的な結果をもたらす可能性も考えられます。

一方中国が通常戦略を持って米本土を攻撃する事は現実的ではなく、

したがって、核抑止が有効に働けばアメリカ本土の安全は十分に確保されます。

 こうした作戦・戦略をとることができるのは、中国との間に

時間的・空間的な余裕があるからです。

 逆に日本はそれがないので、対中戦略におけるアメリカとのギャップが生じてしまうのです。

 一方で、2016年6月に北朝鮮の核・ミサイル問題を受けて

アメリカのジョー・バイデン副大統領が習近平国家主席と会談を行いましたが、

副大統領は「米中が連携しなければ、日本も核を保有するだろう。

 日本は実質的に一夜8で核装備できる能力を持っている」と述べています。

日本が必要以上の強力な軍事力を持つ事は、アメリカも警戒しています。

 また、通常戦力においても、中国本土への攻撃を可能とする「攻撃力」を

日本が保有することを認めない考え方も米国の中には根強くあります。

 この際、座して死を待つ危険性がある専守防衛の考え方を見直す必要があるでしょう。

 日本は、日米共同の作戦を前提としつつも、独立国家として、限定的であっても、

敵基地攻撃力の保有を真剣に検討すべき時期にきているのではないでしょうか。

 しかも、現在はアメリカによる各報復による抑止効果が薄れています。

なぜなら、アメリカは旧ソ連との中距離核戦力(IMF)全廃条約は1987年に結んでいるからです。

 この条約で射程が500kmから5500kmまでの弾道ミサイルが全廃され、

巡航ミサイルの多くが廃棄されました。

一方、中国は中距離・短距離の核戦力を保有しているため、日本を含めた地域への

米国の拡大抑止が効いていないのではないかと懸念されます。

そうなると、日本は中国の「核の恫喝」をまともに受ける形になります。

 ただし、アメリカはINF全廃条約を結んでいますが、中には「東アジア戦略においては

特例を設け、日本に核兵器がおけるようにすればいい」と唱える識者もいます。

 そうすれば、アメリカはいつでも核報復のリスクを中国に対して植え付けることができます。

 しかし問題は、日本がそれを見るかどうかです。

 日本には「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」と言う非核三原則なるので、

政治的にこの問題を解決できなければ、アメリカは核兵器を持ち込むことができません。

 対中戦略について考えたとき、我が国には大きな課題があることを

認識しておかなければなりません。 

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【日中もし戦わば】CSBAが提示した「エアシーバトル構想」

CSBA(戦略・予算評価センター)が唱えたエアシーバトル構想の基本概念は

①拒否し防御する。

②長引かせ疲弊させる

③懲罰を課す

の3つから成り立っています。

中国や北朝鮮から飛んでくるミサイルに対し、MD (ミサイル防衛)で

完全に防御する事は期待できません。

そのため「同盟国的な防御陣地を作ってくれるか」、「ミサイル攻撃に

どこまで耐えてくれるか」、「中国本土への攻撃をどうするか」が大きな問題となります。

この中の前者2つは、アメリカ軍ではなく同盟国、つまり日本がすべき役割です。

アメリカの対中戦略では、日本が自立して戦うことが前提となっており、

日米ガイドライン(2015年4月改定)でも「日本は、日本の国民及び領域の防衛を

引き続き主体的に実施」すると明記されています。

②に関して作戦が長引く中で防御(国を守る)する」も、日本が果たすべき役割の1つです。

米国は中国の経済力を低下させるために、経済封鎖などを実施します。

そして③の「懲罰を課す」は、盲目化作戦や中国本土への攻撃等を指します。

これはアメリカの役割で、攻撃するかどうかは大統領の決断に委ねれられます。

エアシーバトル構想において同盟国・友好国がやらなければならないのは、

自国の領域防衛を全うするために第一線戦力を強化するとともに、

敵の攻撃を跳ね返す抗堪力や長期戦に耐えるうりよう継戦力を増強することです。

そして、米国と連接できるA2/ADネットワークの構築が重要になってきます。

一方、長距離作戦や経済封鎖などの周辺作戦はアメリカの役割ですが、

これらの活動をネットワークでつなぎ、関係国間で強固な共同防衛体制を

構築することが求められているのです。

CS BAとが提示する米国と同盟国の役割分担は(27)の通りですが、

トランプ大統領施政方針演説で述べた「NATO、中東、太平洋地域のいずれでも、

我々のパートナーに戦略及び軍事作戦で直接的で意味のある役割を果たし、

コストを公正に分担することを期待する」とした「役割」とはまさにこのことでしょう。

 中国国防部は、エアシーバトル構想を「アメリカは、無人機やサイバー戦、電子戦、

ミサイルといった新兵器開発に注力し、冷戦的色彩を帯びた新たな軍事同盟体制を作ろう

としている。

こうした行為は、平和や協力が重んじられ昨今の時代の流れに逆行している」と

強く批判します。

中国はエアシーバトル構想を警戒し、このような牽制をしてきたのです。

前述のように、2013年5月には国防省内に「エアシーバトル室」と言う検討室が置かれ、

エアシーバトルは具体化されていきます。

阻害されたアクセスを取り戻す限定的な作戦構想として、中国本土への縦深攻撃も、

「死の連鎖」を断ち切ることを狙いとした限定的、抑制的なものに変わりました。

CS BAが提唱したエアシーバトル構想は、「中国と戦い、これを打倒する」と言う作戦目的でした。

ところが公式発表されてエアシーバトル構想は、

「国際公共財における行動の自由を維持するために対抗する」と言う目的に変化していました。 

その結果、アクセスを維持するための限定的な作戦だったのです。

 A2/AD能力を無力化する盲目化作戦も公式のエアシーバトル構想では抑制的です。

 そして2015年1月、アメリカの国防省はエアシーバトル構想を

「JAM-GC(国際公共財におけるアクセスと機動のための統合構想)」に改めました。

所管は「エアシーバトル室」から統合参謀本部の第7室に移され、

引き続き作戦構造のブラッシュアップが行われています。 

エアシーバトル構想は、中国のA2/AD戦略を無力化するために推進されているものですが、

A2/ADを可能にしているのは衛星通信やレーダー等のC4ISRシステムです。

そのため、エアシーバトル構想を引き継いだJAM-GCでも、敵のC4ISRの能力や

精密ミサイル攻撃を「ソフト的」に破壊・妨害するのが中心的な考えとなっています。

ソフト的と言うのは、電子戦・サイバー戦のことで、宇宙やサイバー、電磁空間といった

分野で優位に立つことが、この構想を実現させるための大前提となっていますがそして、

アメリカが得意とする5つの分野(無人機作戦、長距離航空作戦、ステルス航空作戦、

海中作戦・複合化作戦・エンジニアリングと統合)だけでなく、

優位性が高い領域の優勢を他の他の分野に活用し、

陸・海・空・海兵隊の戦力をより一体的に統合運用することが必要とされています。

さらに、同盟国との密接な協力によって、シナジー効果が拡大されています。

こうして各行政組織、統合参謀本部及び各軍種の上位組織だけでなく、戦闘コマンド、

パートナー国を含めたウォーゲームで革新的な民謡構想が生まれる可能性があります。 

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【日中もし戦わば】中国のA2/AD戦略に対抗する「第三次相殺」戦略

こうした中国の戦略に対抗するため、今アメリカが掲げているのは「第三次相殺戦略」です。

 この「第三次相殺戦略」が、具体化されてくれば、アメリカは再び軍事的優位を得て、

ロシアや中国に差をつけることができます。

 大国には同等の戦力だと緊張関係が増大しリスクが高まりますが、

アメリカが1本抜きんでれば、大国関係は安定化するとみられています。

 1016年9月21日、アメリカ空軍協会の航空宇宙&サイバー総会に出席した

ロバート・ワーク国防副長官は、「第三次相殺戦略」に取り組む3つの理由を

次のように述べています。

①アメリカ軍は戦力の大半はアメリカ国内に置いているが、

これは将来大規模紛争が起こりそうな地域に終結させるのは難しい。

 そのため、緒戦の段階で敵が時間や空間、戦力の数で優位に立つ可能性が高い。

 ②敵もアメリカ軍と同等あるいはそれに近いレベルの誘導兵器を保有し始めている。

 ③敵は、アメリカ軍が「第二次相殺戦略」で提唱したネットワークや

宇宙アセットをもとに装備や武器を揃えていることを熟知しており、

これに対抗するためのサイバー戦や、電子戦、宇宙兵器を準備している。

 アメリカ側も軍事的優位性が低下しつつあることを自覚しており、

新たな優位性を得るために「第三次総裁戦略」の構築を進めているのです。

空軍が、戦域ネットワークの機能・功二んせい抗堪性を向上させるために

AIや自立システムの導入を検討しています。

また海軍は、電磁スペクトラムで軍事的優位性を得る電磁機動戦を提唱しています。

 空軍が戦域ネットワークを構築すれば、海軍や陸軍もそれにならって次会えます。

 ハリス太平洋艦隊司令官は「陸・海・空にこだわるべきではないと」と述べ、

陸・海・空の領域をまたぐ「クロス・ドメイン」の重要性を唱えています。

 また、自分たちの情報通信を敵に知られるのを防ぐため、仮想空間を作って

相手がその中に入れないようにしなければなりません。

こうしたせめいぎあいが電子空間・サイバー空間で繰り広げられており、

そこで勝利を収めなければならないのです。

 まさにこれが電子線・サイバー戦の一種なわけですが、こうした前哨戦で勝たないと

本線も勝てないので、電子・サイバーの分野にも力を入れています。

一方、アメリカは、「第三次相殺戦力」を進めていく上で、問題点や不安を抱えています。

 例えば、中国側にアメリカの前方展開基地や部隊を攻撃したいと言う強い思いがあります。

 また日本を始めとする同盟国が、アメリカの安全保障のコミットメントの信頼性に対して

疑問を持ち始めていることも認識しています。

さらに敵に近い港や空港が攻撃に対して脆弱であったり、

水上艦艇や空母は発見されやすいなどのリスクもあります。

 同盟国や友好国が、このようなアメリカの問題点や不安を共有せず、

共に解決する努力を惜しむようであれば共同防衛が成り立たないのです。 

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【日中もし戦わば】近隣諸国を圧迫する中国の輿論戦・心理戦・法律戦の「三戦」戦略

日本は今、アメリカと中国の狭間で揺れ動いています。

 特に頭を悩ませているのが、中国の「非合理の合理性」と言うやり方です。

 「非合理の合理性」とは、故意に、相手に「何をするかわからない」と

思わせることによって、恐れさせ、躊躇させることを言いますが、

北朝鮮にも同じような傾向があります。

こうした価値観や対外政策の違いは、アメリカが中国を警戒する理由の

1つにもなっています。

 仮に通常戦力で中国本土を攻撃すればでも、向こうの理屈で核ミサイルが

飛んでくるかもしれない。

 そして核戦争へとエスカレートすればアメリカ本土にも甚大な被害が生じる可能性がある。

そうした考えもあり、アメリカは対中戦略においてそれほど積極的な動きを

見せなかったのです。

 一方、中国は平時から戦争に至る以前の勝利を追求しており、

中でも有名なのが輿論線・心理戦・法律戦からなる「三戦」と言われるものです。

世論先では有利な情報を積極的に発信し、逆に不利な情報は抑えます。

 いわゆる情報管理で、例えば尖閣諸島における問題では、中国が魚釣島沖を航行する

巡視船の写真と記事を英文記事で全世界に発信し、

あたかも中国は尖閣諸島の持ち主であるかのように主張しています。

心理戦は威圧することで相手を躊躇させ、相手の行動力を低下させる戦略です。

 南シナ海問題では、フィリピンの実行支配下だったスカーボロ礁に進出し

軍事力をちらつかせてフィリピンの海軍を撤退させました。

 その後、南シナ海仲裁裁判の結果、フィリピンのものと裁定されました。

 が、中国は依然として居座ったままです。

 そして法律戦は、国際法や国内法によって中国に対する国際世論の反発に対処する戦略です。

 2010年に施行した海島保護法は、その代表例といえます。

 この法律には、中国の島嶼部や周辺海域の生態系を保護し、自然資源を開発・利用して

中国の海洋権益を守ることが定められています中国はこの法律を利用して、

南シナ海の南沙諸島に港湾や滑走路を整備するなどの「開発・利用」を行ったわけです。

海島保護法の範囲は尖閣諸島にも及んでいると考えられているので、

同じやり方で中国が尖閣諸島を武力で奪取する可能性が大いにあり得るのです。

 中国はすでに「三戦」に加えて歴史戦や地図戦を日本や周辺諸国に仕掛けていますが、

さらにサイバー戦や電子戦で“攻撃“し、有事の前に決着を付けてしまう可能性すらあります。

それから戦争と言えば、ノルマンディー上陸作戦のような大規模かつ組織的な戦いを

思い浮かべがちですが、もはやそういった作戦は時代遅れです。

 ミサイルによる遠距離飽和攻撃、海上民兵による短期・高烈度決戦など、

中国の近代化された人海戦術に対処していかなければなりません。

 遠くからの精密誘導ミサイルを艦艇や航空機に集中的に指向する遠距離飽和攻撃

(イメージは(26)に示します)は、旧ソ連の時代から存在した戦略です。

 そして長期戦や長距離作戦により時間的・空間的な“隙間“ができますが、

そこに精鋭な地上軍を乗せた海上民兵による舟艇や揚陸艦で攻撃が行われる可能性が

高いと考えられます。

その辺も、われわれは念頭に入れておく必要があるのです。 

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